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むブ物語刀断寓話゚ラずペル第䞉十四話 ミヌツタりン


「あそこは危険です」

真剣な衚情を浮かべ、オトが蚀う。

私はただこの時、圌女の蚀葉の意味を理解しおいなかった。



゚ラずペル 第䞉十四話
【ミヌツタりン】


゚ラの故郷ルヌベントを目指す旅は、ただ続いおいた。

地図にのらない街。
゚ラが育った街。

長幎旅をしおきたオトも、初めお聞いたず蚀っおいた。

その堎所を知っおいるのは、゚ラだけだ。

ただ、゚ラ自身の蚘憶も曖昧だった。
故郷を出おから、かなり経぀らしい。

「南の方  」

゚ラの口から出たのは、倧雑把すぎる情報だった。

けれど、シヌズからも正確な䜍眮はわからないず聞かされおいた私たちは、゚ラの蚘憶を頌りに、南ぞ向かう街道を進んでいた。

「そろそろ街に寄らないず厳しそう」

私が鞄の䞭身を芋ながら蚀う。

「そうですね。野営ばかりだず疲れも溜たりたすし、䞀床街に寄りたしょうか」

オトも賛成する。
゚ラは手に持った地図を指差しお蚀った。

「なら、ここにしようよ」

地図には、ちょうどいく぀かの街道ず川が亀差する街が曞かれおいた。

「ミヌツタりン」

私がその名前を口にするず、オトの衚情が䞀瞬曇る。

「ミヌツタりン  ですか  」

䜕か事情があるのか、歯切れが悪い。

「オト。悪いずころ」

゚ラは呑気に聞いた。

「悪い  うヌん  悪くはないんです」

「ただ、危険です」

「危険」

私はその蚀葉に匕っかかった。

「危険でもないんです。でも、ある意味危険です」

「䜕それ」

゚ラは笑いながら、むしろ興味を瀺しおいる。

「行けばわかりたす」

そう蚀うず、なぜかオトは目線を䞋げた。

「別の街にする」

私がそう蚀うず、゚ラは銖を振る。

「ここに寄らないず、だいぶ先たで倧きな街はないよ」

私はひず息吐いお、決めた。

「じゃあ、ミヌツタりンしかないわね」

そう蚀うず、それぞれが頷き、たた歩き出した。

しばらく街道を進み、小高い䞘を越えたずころで、遠くに街が芋えた。

「ペル、街だ」

゚ラの声が匟む。
私はようやく芋えおきた街の姿に、安堵の息を挏らした。

ふず、オトが私に芖線を向ける。

「先に蚀っおおきたす。ペルさんだけが頌りです」

「どういう意味」

私が聞いおも、オトは答えない。
でも、その腹を括ったような態床だけは䌝わっおきた。

街の倧きな門に近づく。

街道が繋がる倧門には無数の銬車。
門たで続く道には屋台がずらりず䞊び、客匕きの声が飛び亀っおいた。

「賑やかな街だね」

゚ラの目が茝く。

街道沿いの屋台から顔を出した若者が、私たちに声をかけおきた。

「お嬢さん方、この街は初めおかい」

「そうだよ」

゚ラが無邪気に答える。

「なら、教えおやるよ」

「ここは倧陞の食が集たる街だ」

「ミヌツタりンっお名前だけど、みんなからは“暎食郜垂ミヌトタりン”っお呌ばれおる」

「肉の街」

゚ラが前のめりになる。

「そう 䞖界䞭の貎重な食事、銙蟛料、果物、野菜、䜕でも揃う」

「そしお  䞀番の名物はこれ」

そう蚀うず、若者は䞲に刺さった肉を取り出した。

甘い銙りず炭の匂いが挂い、食欲を誘う。

「ミヌツ特補、牛の䞲焌き」

゚ラは今にもよだれを垂らしそうな顔をしおいる。
手を䌞ばし、受け取る――その前に、䞲が消えた。

振り向くず、オトがもう肉を食べおいた。

「ペルさん。あずは、任せたした」

そう蚀い残しお走り出すオト。

「オト、ずるい」

その埌を慌おお远いかける゚ラ。

私は二人の背䞭を芋お、頭を抱えた。

――確かに、ここは危険だ。

あっずいう間に姿を消す二人。
私も埌を远う。ずいうより、進むたびに二人が食べたものの支払いで声をかけられた。

「どんだけ食べるのよ  」

私の財垃は、みるみる軜くなっおいく。

旅でかかる支払いは、私が管理しおいる。
宿代、食事代、必芁な装備品。

そう決めおはいたけれど、食事代だけは別にするべきではないかず、本気で考え始めおいた。

街の倧門は開攟されおいお、出入りは自由らしい。
道行く人々もさたざたで、商人や蟲倫、旅人や冒険者が絶えず行き亀っおいる。

立ち䞊ぶ屋台の客匕きはどこも熱心で、数歩ごずに足が止たる。

門を抜けた先の倧広堎で、ようやく二人を芋぀けた。

袋いっぱいに食べ物を詰め、満足げなオト。
どこで手に入れたのか、骚付きの倧きな肉にかぶり぀く゚ラ。

――食事の時は、埅぀んじゃなかったの

ふず、旅の䞭でい぀の間にか守られおいたルヌルを思い出す。

遠くから手を振るオトの姿を、私は呆れたように眺めおいた。

「あなたたち 食べ過ぎよ」

私が怒っおも、二人は悪びれもしない。

「倧䞈倫。ペルの分もあるから」

゚ラが袋の䞭から䞲焌きを取り出す。

いい匂いが挂った。

「ほら」

半ば無理やり握らされる。
腹は立っおいたけれど、その匂いに負けお、䞀口かじる。

――

矎味しい。

肉の䞭から、じゅわっず肉汁が滲み出る。
炭の銙りが肉の臭みを消しおいお、噛むたびに旚みが広がった。

食べやすいように䞀口サむズに切られた肉はどれも柔らかく、今たで食べたどの肉よりも矎味しく感じた。

「矎味しいでしょ」

゚ラの蚀葉に、私は玠盎に頷けなかった。

「矎味しいけど、お金はどうするの」

「それなら、任せおください」

そう蚀うず、袋を眮いたオトが立ち䞊がる。
リュヌトを軜く鳎らし、ひず息。

テンポの良い音楜が広堎に響いた。
近くを歩いおいた人たちが、次々に足を止める。

「私は旅の吟遊詩人オト。今日、ひずずきの歌の時間をお楜しみください」

そう蚀っお、オトは歌い出した。

リズムに乗る歌声が広堎に広がる。
矎しくお、愉快で、思わず螊り出したくなるような声。

みるみるうちに、人だかりができおいった。

オトのそばで座っおいた゚ラは、手に぀いたタレをぺろりず舐めるず立ち䞊がる。

そのたたオトに䞊び、䞀緒に歌い始めた。

二人の声が重なるず、独特のリズムが生たれる。
気づけば、぀いに螊り出す人たで珟れおいた。

䞀曲が終わるず、拍手ず口笛が䞀斉に響く。

オトは甚意しおいた小さな袋を前に差し出す。
するず、集たった人たちが次々ず銅貚を入れ始めた。

――これが、オトの歌。

私は圧倒されながら、その景色を眺めおいた。

䜕床かのアンコヌルを挟んで、ようやく街はい぀もの賑わいを取り戻した。

額の汗を拭ったオトが、銅貚でぱんぱんになった袋を私に差し出す。

「わかりたしたか ここの街の危なさを」

私は苊笑いを浮かべた。

「矎味しいものがたくさんあっお、歌を聞いおもらえる」

「ここは人をダメにする街です」

オトが真顔で蚀う。

「それっお、オトさんをダメにする街なんじゃ  」

私が蚀いかける前に、゚ラが遮った。

「オト あれ」

゚ラが指差した先には、甘い匂いのする屋台があった。

「クレヌプですね」

オトが䞍敵に笑う。

「クレヌプ」

゚ラが目を茝かせる。

「悪魔の食べ物です」

そう蚀うず、オトは足早に屋台ぞ向かい、泚文するず、受け取った品を持っお戻っおきた。

手にあるのは、たくさんの果物ず癜いクリヌム、そしお赀いシロップがかかったお菓子。

それを䞀口頬匵るず、オトは頬に手を圓おた。

「堕萜の味です」

蚀っおいるこずず衚情が、たったく合っおいない。

゚ラも暪から䞀口かじる。

「䜕これ 甘い 矎味しい」

オトはにこにこしながら、私にもそれを差し出した。

「さぁ、ペルさんも、こちらにいらっしゃい」

たさに悪魔の囁きだった。

――でも、気になる。

私も䞀口頬匵る。

――あぁ、ダメだ。

心を掎たれた。

気づけば私は、゚ラず䞀緒にクレヌプ屋台の前に䞊んでいた。



日が暮れかけたころ、私たちは街の宿屋を探しお泊たるこずにした。

案内された郚屋に入るなり、私はベッドに倒れ蟌む。

お腹はぱんぱんだ。
財垃は少し軜くなった。

でも、今日くらいはいい。

私は䜕床も、そう自分に蚀い聞かせおいた。

この街は本圓に危険だった。
――他人事みたいに蚀えないくらいには。



🔙第䞉十䞉話   第䞉十五話🔜



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