メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

サド䟯爵倫人の掚し掻・日垞篇䞉島由玀倫「サド䟯爵倫人」蔵曞玹介 #002-02

    倫人はたるで、創䜜掻動を行うタむプのオタクのようです。“公匏からの䟛絊”に飢えがちだった玄幎間の暡様に぀いお抂芳したす。

    ◇

    ※より安心しお曞評をお楜しみいただくために、事前にこちらの「考察にあたっお」をご䞀読ください。䜜品の時代背景や描写に関する圓noteのスタンスをたずめおいたす。

    ※本蚘事で玹介する䜜品には、人間の暗い欲望や、䞀郚サディスティックな関係性を描いた文孊的衚珟が含たれたす。

    [この蚘事からの続きです]

    サド䟯爵倫人の“砎倩荒な”プロフィヌル


    䞉島由玀倫の「サド䟯爵倫人」1965幎は、柁柀韍圊による評䌝「サド䟯爵の生涯」1964幎を兞拠ずし぀぀、フィクションずしお構成された戯曲挔劇の台本ずいう圢匏の文孊䜜品です。

    フランス革呜の前埌の時期にあたる、1772幎から1790幎にかけおの玄18幎間、サド䟯爵が䞻に獄䞭で生掻しおいた期間が描かれおいたす。

    性的な䞍品行や、それに䌎う異垞な犯眪ずみなされる行為によっお、糟匟され眪に問われたサド䟯爵。
    その「貞淑」な劻ずしお自らを埋しながらも、圌を愛しおしたった あるいは、ずおも深く執着しおしたった、サド䟯爵倫人が䞻人公です。

    舞台はパリ。圌女の母・モントルむナ倫人の邞宅のサロンです。そこぞ集たった女性たちの䌚話劇の合間から、サド䟯爵の存圚が間接的に䌝えられるずいう構図ずなっおいたす。
    この䜜品は、党䜓が「第䞀幕」から「第䞉幕」たでの぀のパヌトに分かれおいたす。
    そのうちの第䞀幕・第二幕にあたる、サド䟯爵倫人の玄幎間に起きたこずを芁玄するず、それは非垞に砎倩荒なプロフィヌルずなっおしたいたす。
    圌女は蚀葉の端々に知的なナヌモアを宿らせる、非垞に根が真面目で、聡明な人物に思えたす。詳しくは、蚘事を改めおご玹介したいず思うのですが、母の期埅通りに成長し、教逊深く「貞淑」に振舞いたす。たた、母からは「倧人しくお匕蟌思案」p.55だずも思われおいたした。

    ※匕甚に぀きたしおは、こちらのペヌゞの「匕甚の凡䟋」をご参照䞋さい。

    しかし、倫・サド䟯爵のこずずなるず、その真面目で聡明な圌女が、真面目で聡明なたたに手元が狂い、ブレヌキが利かなくなるようです。「䞖間では」、圌が「眪を働いた」p.40ず蚀われ、糟匟されおいるこずを頭では理解しおいたす。けれども、倫の眪を恥じたり、恐れたり、己の身の危険を案じたりするずいうよりは、倫以倖の森矅䞇象が䜕も芋えおいないかのように、信じた道を突き進みたす。 いえ、正確に蚀えばそれは違いたす。圌女の目に、倫以倖の存圚が芋えおいないのでもなく、手元が狂ったのでもなく、むしろ明晰な頭脳を研ぎ柄たせ、確信をもっお、欲望ずいう名のアクセルを螏んでいるずいうべきなのでしょう。

    圌女はもずもず、母であるモントルむナ倫人の蚀葉に埓順な嚘でした。サド䟯爵ずの結婚も、母の蚀うがたたに決たった結婚です。しかし、サド䟯爵の目に䜙る行動の数々を耐えがたく思った母が離婚や別居を勧めるず、圌女は、どんな圢であれ別れる぀もりはないずいう意思を明確に䞻匵したす。モントルむナ倫人は、䜕床も投獄される婿・サド䟯爵の尻拭いに奔走しおいたした。最初は、その「怖ろしい玠顔」p.23を嚘サド䟯爵倫人に知らせないようにするために。そしお、嚘の知るずころずなっおからは、倫を庇いたい嚘からの必死の懇願に応じるずいう圢で。しかしモントルむナ倫人は、第䞀幕の終わりの堎面で぀いにサド䟯爵を芋限りたす。圌はその盎埌からずっず獄䞭にいるずいうこずが、第二幕第䞀幕の幎埌の䞭で明かされたす。

    母からの揎助がもはや期埅できないサド䟯爵倫人は、その幎の間、ただ黙っおじっずしおいたわけではありたせんでした。
    圌女は突劂、母が驚くような意倖な才胜を発揮したす。倫の脱獄を自ら蚈画し、倫を手匕きし、芋事に成功させおしたいたす。しかも、それはどうやら史実でもあり、幎をたたいでの逃亡生掻を繰り広げたこずが語られるのも第二幕です。

     このように玹介するず、サド䟯爵によっお、掟手で非日垞的な日々がもたらされおいるように芋えるず思いたす。

    しかし、サド䟯爵倫人が䜜䞭で過ごしおいた時間は、その倧郚分ずしおは、むしろ地味で味気ない日垞によっお圧倒的に占められおいたした。

    玄幎間も続いた、“地道” で“異様な”忍耐の日々


    䜜䞭で流れる玄幎間ずいう幎月の倧郚分を、倫・サド䟯爵は獄䞭で過ごしおいたす。しかも圌は、それより前の、新婚の頃から䞍圚なこずが倚かったこずが語られおいたす。
    第䞀幕によれば、サド䟯爵の初めおの投獄は「結婚匏のわずか五ヶ月あず」p.21であったずいいたす。その時に、モントルむナ倫人は、婿がただの「攟蕩者」ではない残虐性を持っおいるずいう「事の真盞を知った」のであり、第䞀幕冒頭に至るたでの「それからの九幎間」、その行いが「次々ず重」ねられおきたのだず蚀いたす「」内の匕甚は党おp.21。たた、サド䟯爵倫人が真盞を知ったのは冒頭の時点で「四幎前」p.23であったずいいたす。矩理の息子ずはいえ、䞖間䜓や嚘の心が傷぀くこずを気にしおずはいえ、モントルむナ倫人の努力は䞊倖れおいたす。床々倧枚をはたき、コネクションをフルに掻甚し、サド䟯爵の行動の埌始末を玄幎間も続け、そのうちの玄幎間もの間、嚘の目から隠し続けたした。けれども、忍耐力ずいう点にかけおは、サド䟯爵倫人のそれは、はるかに”異様”ずも蚀うべき匷床を芋せ぀けたす。倫の嗜癖ず犯行を知らない結婚盎埌の時点から、第䞉幕最終章の終わりに至るたでの期間を数えるず、玄幎間。倫の隠された䞀面を知っおから数えるず玄幎間。䜜䞭を流れる時間だけで蚀えば玄幎間、圌女はずっず、倫が䞍圚がちであるずいう状況に耐えおきたこずになりたす。

    第二幕でのセリフの䞭で、サド䟯爵倫人は「来る倜も来る倜も良人に家を明けられ」p.77、「今ごろどこかの枩かい小郚屋で、良人が瞛った女の裞の背に燃えさかる薪を近づけおいるずころを、ありありず目に浮べる」p. 78ずいう日々のこずを語っおいたす。

    䜜䞭に描かれたサド䟯爵倫人の幎間のうち、最埌の方の玄幎間は、地味な持久戊の様盞を呈したす。圌女は、もう倫の脱獄を蚈画するこずもなければ、母ず喧嘩しお距離を開けるこずもしなくなりたす。そしお、倫ずの面䌚のため、定期的に監獄を蚪れおいたずいいたす。

    サド䟯爵倫人が、長きにわたる苊難を耐え忍んでいたからすごいず蚀いたいのではありたせん。特筆すべき郚分があるのです。それは、圌女が倫の䞍圚に耐え぀぀も、倫ぞの情熱を燃やし続け、しかも、䞍圚の時間をも楜しんでいたずいう郚分です。圌女は、倫が留守で気が楜だずいうこずを語っおいるのではありたせん。倫を想い、倫の䞍圚によっお苊しんでいたした。けれども、倫の䞍圚の時間を楜しんでもいたのです。

    モントルむナ倫人の蚀葉によれば、幎間も監獄に通い詰めおいた時のサド䟯爵倫人は、䞀床倫に䌚えるず、次に䌚える機䌚を楜しみに埅ち、飜きる様子もなかったずいいたす。そしお、次に持っおいく差し入れのこずを考えおいる様子は、たるで遊びに出かける支床でもするかのようだったずいいたす。

    十二幎のあいだあんなにしげしげず、ゞャムやいろんな食べ物の籠を提げお、 よくも倊きずに䌚いに通い ふしぎなこずには、この十二幎間、぀いぞお前は退屈そうに芋えたためしがなかった。䞀぀の面䌚からかえるず、次の面䌚をたのしみにし、この次は䜕を持っお行こうかず、遊山の支床のようにそわそわしおいた。

    䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版
    新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月第䞉幕 p.90

    ※旧版では、「十二幎」の郚分が「十䞉幎」ずなっおいたす。ここは幎でないず蚈算が合いたせん。

    母の疑問ず解説者の疑問


    䞻人公の心理に぀いお、第䞀幕の時点から、母・モントルむナ倫人はしばしば疑問を抱いおきたした。
    どれだけ苊劎を味わわされおもサド䟯爵ず別れたがらない嚘の生き方が、母の目には「䞀人よがりの幻に、党おを賭け」おいるかのような、䞍可解なものずしお映っおいたす。サド䟯爵に劻ぞの愛情があるかどうか、非垞に怪しいものだず疑っおいたす。

    どうしおも別れられないのは、愛情からだずでも蚀いたいのかい。そこが私にはどうしおも腑に萜ちない。愛情ず云ったずころで、向う様のは至っお怪しげな、こちらだけの䞀人よがりの幻に、すべおを賭けようずお蚀いなのかい

    䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版
    新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月第二幕 pp.74-75

    倫の愛情に぀いおの、サド䟯爵倫人の考えは、同じ第二幕のこれより前の堎面で述べられおいたす。圌女は、倫・サド䟯爵のこずを「誰も愛したこずがない」p.53人物であるず、冷培に断蚀したす。効サド䟯爵倫人の実効のアンヌから、「でも本圓のずころは、お姉様だけは愛されおいるず信じおいらっしゃるんでしょう」ず問われるず、「空想は自由だわ」ず答え、倫から「空想の力を教わりたした」ず答えおいたす。アンヌから、「じゃあ、幞犏は」ず畳みかけられるず、「それは私の発明」であり、倫がそれ幞犏を「決しお教えおくれなかった」のであるず蚀いたす「」内の匕甚は党おp.53。

    サド䟯爵倫人は、もはや、自分に察する倫の愛情を疑うずいう段階にはありたせん。けれども、”では自分も倫を無芖しお過ごそう”などず割り切っおいるわけでもありたせん。「お姉様だけは愛されおいるず信じおいらっしゃるんでしょう」ずいう蚀葉を、圌女は決しお吊定はしたせん。倫を、心の拠り所ずしおいるのです。けれども、決しお無邪気に愛情を期埅しおいるわけでもありたせん。圌女は「空想は自由だわ」ず答えおいるのです。぀たり、圌女の心を実質的に支えおいるのは、生身の倫の愛情ではなく、倫から教わったのだずいう、己の空想力なのです。

    そしお、倫が䞍圚がちな城の䞭で日々を乗り切るために、自身の心の持ち方を工倫し、孀独な時間を埋めおいく努力をコツコツず続けおいたこずが、次のように語られおいたす。

    幞犏ずいうのは、䜕ず云ったらいいでしょう、肩の凝る女の手仕事で、刺繡をやるようなものなのよ。ひずりがっち、退屈、䞍安、淋しさ、物凄い倜、怖ろしい朝焌け、そういうものを䞀目䞀目、手間暇をかけお織り蟌んで、平凡な薔薇の花の、小さな䞀枚の壁掛を䜜っおほっずする。地獄の苊しみでさえ、女の手ず女の忍耐のおかげで、䞀凛の薔薇の花に倉えるこずができるのよ。

    䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版
    新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月第二幕 pp.53-54

    倫人は決しお、サド䟯爵に無関心なわけでもなければ、どんな匷颚にも靡かない鉄の心を持っおいるわけでもありたせん。淋しさや退屈や䞍安があった䞊で、長期間を耐えおきたのです。

    圌女の心理に぀いお、文庫本解説では、このように蚀及されおいたす。

    圌女なりに、倫人ずしおの「貞淑」の圚り様を暡玢しおいる。圌女は、根本的には、倫の欲望を共有できない。぀たり、自然な愛から、倫ずの関係を維持したいず願っおいるのではなく、䞀皮の圓為ずしお、その「絆」を目的化しおいる。ずころが、倫が投獄され、その開攟の嘆願がこずごずく退けられるに至っお、圌女は、「アルフォンス[匕甚者泚サド䟯爵]の心は私の心だず、あれほど匷く感じたこずはありたせんでした。」ずいう心境に至るのである。なぜか この戯曲からだけでは些か理解し難いが、 

    平野啓䞀郎「解説」䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』
    新版新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月p. 242

    「圓為」ずしおの「絆」の「目的化」 ぀たり、サド䟯爵倫人は倫ずの間に「絆」がないけれど、「絆」が「あるべきだ」ず考えお、「絆」を䜜り出そうず努力しおいるのだ、ずいう解釈です。
    距離を眮いお突き攟した芋方をしおしたえば、確かにそういう蚀い方もできるのかもしれたせん。

    ですが、読んでいお、思っおしたったのです。サド䟯爵倫人の心境が、この戯曲からだけでも、充分すぎるくらいに䌝わっおくるずいうこずを。――圌女の心境。それは「自然な愛」だずか「絆」だずかいう牧歌的なものでもなければ、「圓為」だずか「目的化」だずかいう、矩理や矩務のように堅苊しく圢匏的な瀟亀蟞什の行動でもなければ、なんだかむしろ 

    それっお掚し掻ではないでしょうか

     -二぀の問い-


     それっお、自分自身を内偎から燃やし尜くしおしたうほどの、理䞍尜で、執拗で、絶察的な、掚しぞの巚倧感情なのではないでしょうか。

    先ほど匕甚した郚分を、改めおそういう目で芋おみるず、倫人の性質は創䜜掻動を行うタむプのオタクに近いのではないかず感じおしたいたす。䜜䞭に描かれおいる幎間は、サド䟯爵倫人の掚し掻の暡様なのではないかず、思っおしたったのです。

     少し前のめりで語っおしたいたした。䞁寧に解説させおいただきたすね。

    次回以降の蚘事でも詳しく掘り䞋げおいきたすが、倫人にずっおサド䟯爵ずの関係性は、劻ずしお尊重されおいる郚分がありながらも、物理的にも粟神的にも距離のある、䞀方通行の関係性ずいう割合が倧きいです。サド䟯爵は、倫人に、決しお「幞犏」ずいう感情を教えおくれなかったずいうこずでした。先述の通り、その䞊で圌女は、幞犏は私の発明だず蚀い切りたしたp.53。これっお、すごい衚珟ではないでしょうか

     そしお、その距離感こそ、たさに、掚しずファンずいう関係性に近いのではないでしょうか。倫人は、倫サド䟯爵から「空想の力を教わり」、幞犏は自分で「発明」し、䞀人で黙々ず手間暇のかかる刺繍比喩に取り組んでいたす。 それっお、掚し掻ではないでしょうか

     もう少し䞁寧に蚀い換えおみたすね。

    そもそも”掚し”ずは、その现かな定矩には諞説ありたすが、圓noteではごく䞀般的に、次のような意味で捉えるこずずしたす。

    • 掚しずは、ファンずしおの距離から熱量をもっお応揎する察象である。自分にずっおの、心の支えずなるような特別な思い入れのある、特定の芞胜人や、スポヌツ遞手、挫画やアニメに登堎するキャラクタヌ架空の人物など。

     先に謝らせおいただきたす。䞻語が倧きくなりすみたせん。私の知る限りでの話なのですが、想像力豊かなファン、あるいは創䜜意欲旺盛なオタクにずっお、掚しずは、たるで無限に湧き出る矎の源泉 ぀たり、容姿や性別を問わずミュヌズのような存圚です。

    そしお、掚しに心を惹き぀けられ いえ、心を奪われ、空想を掻き立おられおやたず、掚しのこずを応揎したり想ったり劄想したり絵に描いたりするずあるいは、それに加え、同志が線み出した貎重なファンアヌトや玠晎らしい”掚しの解釈”を芋せおもらう幞運に䞎かったりするず、 ぀たり、掚し掻掚しを尊ぶための掻動をするず、匷烈な幞犏を感じられるずいうこずを、自分自身の経隓や、友人たちず”掚し語り”をした経隓䞊、これでもかず存じおおりたす。

    掚しは掚しであり、個人的なパヌトナヌではなく、たしおや、掚しを“独占”できるわけでもありたせん。基本的に、自分がその存圚のファンであるずいう䞀方的な関係性なのですが、それでも、掚しの玠晎らしさを想うこずによっお、人生が匷烈に茝くこずがあるのだずいう事実を、個人的な経隓ずしお知っおいたす。掚しを想うこずによっお埗られる幞犏の倧きさは人それぞれかずは思いたすが、時にそれは、倫婊や恋人ずいう関係に劣るどころか、それずは異なる別の䟡倀、あるいはそれを䞊回る䟡倀を持぀こずさえありえるず断蚀できたす。その個人的な知芋に照らし合わせおサド䟯爵倫人の蚀動を芋おいくず、思っおしたうのです。内向的でありながらも限りなく情熱的な圌女の想い。 それっお掚し掻なのではないでしょうか、ず。

    先述の通り、「でも本圓のずころは、お姉様だけは愛されおいるず信じおいらっしゃるんでしょう」ずいう効からの䞀撃を、「空想は自由だわ」ずサド䟯爵倫人は受け流したす。

    それっお、単なる蚀葉の綟なのでしょうか。それずも、”倫からの愛を密かに独占しおいる自分”ずいう空想を愉しんでいるのでしょうか 。もしそうだずしたら、それは䞀䜓どのような内容なのだろう ず、気になるずころですよね   ありたす。䜜䞭に、それらしき描写はありたす。あるのです。そしお、焊らすようで本圓に申し蚳ないのですが、それに぀いおは、次回以降の蚘事の䞭で詳しく掘り䞋げる予定です。

    なお、ファンアヌト二次創䜜䜜品の䞖界には、自分ず掚しずの恋愛を想像し、小説に仕立おた䜜品を意味する、䌝統的な専門甚語が存圚しおおり、人はそれを「倢小説」ず呌びたす。

    それは少し雑な説明でした。 より正確に蚀うず、読み手が倚かれ少なかれ自己を投圱し、感情移入するためのオリゞナルキャラクタヌず、ファンアヌトにおけるフィクションずしおの掚しずの恋愛、あるいは、䜕らかの特別な関係性の描写がなされおいる二次創䜜小説、ずいうこずになるず思いたす。

     ここは匷匕に、サド䟯爵倫人の掚しだず仮定しおみたす。倫人は倢小説を執筆しおいるわけではありたせんが、空想ずいう掚し掻空想は立掟な掚し掻だず思いたすを繰り広げるこずで、日垞の砂を噛むような時間をも乗り越えおいたす。そしお、先ほど匕甚したように、ネガティブな感情に襲われたずき、刺繍をしお、幞犏に倉えおいるずいうこずも語っおいたす。より正確に蚀うず、「刺繡をやるようなもの」ず蚀っおいるので、刺繍は比喩です。

    倫人は、倫の生き方をコントロヌルしようずするのではなく、自分の生き方を工倫するこずで日々を乗り切っおいたす。乗り切っおいるものはたくさんあり、挙げおいくず、長きにわたる「ひずりがっち」も、「退屈」も、「䞍安」も、「淋しさ」も、「物凄い倜」ず「怖ろしい朝焌け」  倜ず朝焌けを䞡方芋おいるのだずしたら、それは、眠れないほどの苊しみずいうこずでしょうか。 そのような時間さえも、䜕ずか䞀人きりで乗り切っおいたす。  乗り切れおいるのでしょうか。倫人は「地獄の苊しみ」ずいう蚀葉もちら぀かせおいたすが 。
    眠れない時があるほどに、本圓はやっぱり苊しい日々ではあるのです。掚しぞの感情によっお心が最うのだずしおも、それはそれずしお、その日垞は地道な忍耐の努力によっお維持されおいるのです。決しお、脳内がお花畑ずいうこずではありたせん。

    そしお、そのような日々のこずを、本人は、根気匷く刺繍をするような「女の手仕事」ずいう比喩で語っおいたす。ですが、もはや性別は関係ない気がしたす。この䜜品は、女性ばかりが登堎する物語ずしお構成されおいたすが、圌女の母や効やその他の人物の誰ずも比肩できない独自の到達点ずしお、サド䟯爵倫人の生き方は異圩を攟っおいたす。たさに、珟代の“掚し掻”文化をはるか昔に先取りするかのように、先鋭的に。

    䜜䞭で語られおいる幎間、脇目もふらずに䞀人の掚しを䞀途に掚し続けおいる情熱は、サド䟯爵倫人本人が自称する「貞淑の怪物」p.40そのものです。貞淑の怪物 。それに぀いおも、今埌の蚘事で深堀りしおいく予定です。その蚀葉は、なんだか、あたりにも䞀途で、そしお察倖的には出力が控えめでありながらも、内面には静かな狂気を宿し、けれども決しおストヌカヌ行為には走らず、走るずすれば創䜜掻動に走る、圧力鍋のようなオタクに䞎えられるべき特殊な矎称であるかのような、業の深い、そしお玔床の高い蚀葉だずは思いたせんか 

    匷いお蚀えば、敬虔な「聖女」、シミアヌヌ男爵倫人ずいう人物が培頭培尟、神ぞの信仰心を倧切にしおいたした。䞀途さずいう点に関しお蚀えば、シミアヌヌ男爵倫人も䜜䞭最匷クラスです。圌女に぀いおは、今埌の考察の䞭に登堎しおいただく予定です。

    さお。サド䟯爵倫人の掚し掻ずいう芳点から、次の぀の問いを立おお、今埌の蚘事の䞭で考察しおいきたいず思いたす。

    1. サド䟯爵倫人は、掚し倫・サド䟯爵のどういうずころに魅力を感じおいたのでしょうか。

    2. 「第䞉幕」では、どうしお掚しぞの情熱が急速に冷めおしたったのでしょうか。

    この぀目の問いに぀いお、圓noteでの今埌の方針を、次のように予告しおおきたいず思いたす。
    最埌の最埌になっお サド䟯爵倫人の、掚しぞの情熱が急速に冷めおいくのです。

    実は、圓初の構想においお、第䞉幕に関しおは、次のように予告する぀もりでした。「掚しぞの情熱が冷めるずいうテヌマは、今の私には客芳的に考察できる気がしたせん。そのため、第䞉幕に぀いおの考察は、もしかしたら今埌も氞遠に曞けない可胜性がありたす。そしお、たずえ掚しぞの情熱が冷めるのだずしおも、掚しに魅了され、掚しに感性を逊われた時間の尊さが倱われるわけではないずいう点に着目し、第䞀幕・第二幕に぀いおのみ考察したす」ず。

      。正盎に蚀いたすね 。想像するだけでも血の気が匕くようなテヌマに思えおならなかったのです。それは、今も倉わりたせん。

    しかし、考察を進めおいくうちに、䜜品の芋え方が倉わっおきたのです。

    確かに、第䞉幕になるず、サド䟯爵倫人の熱量のこもった幎間の様子は䞀倉したす。時は1790幎4月。フランス革呜の混乱の䞭で、぀い䞀か月前、サド䟯爵の釈攟が決たり、圌が間もなく戻っおくるずいう状況が瀺されおいたす。しかし倫人は、念願であったはずの倫の釈攟を喜ぶのではなく、むしろそれを機に掚し掻をやめおしたいたす。倫を捚おお、䞖を捚おお、修道院に入るこずを決意したす。そしお、垰還した倫ずの面䌚を拒絶するセリフによっお、物語は幕を閉じたす。

    お垰ししおおくれ。そうしお、こう申䞊げお。「䟯爵倫人はもう決しおお目にかかるこずはありたすたい」ず。

    䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版
    新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月第䞉幕 p.122

    この、拒絶ずいう結末に぀いおも掘り䞋げおいく予定です。絶望的にも芋えるこの堎面は、決しお単なる幻滅でもなければ、色耪せた珟実ぞの敗北でもないこずが芋えおきたのです。それらを通過した䞊で、最埌の最埌にサド䟯爵倫人が埗たものは䜕であったか。圌女が自芚しおいないであろう郚分をも含めお、文脈から読み解いおいく道筋を、䞀歩ず぀順を远っおご案内いたしたす。

    次回以降の蚘事では、たずは「サド䟯爵倫人は、掚し倫・サド䟯爵のどういうずころに魅力を感じおいたのでしょうか」ずいう問いから考察しおいきたす。
    その際、次のような芳点ず絡めながら深掘りしたいず思いたす。

    • サド䟯爵倫人が、倫サド䟯爵から教わったずいう「空想の力」に぀いお。

     掚しから「空想の力を教わりたした」ずは、どういう状況なのか。詳现が気になりたせんか それでは次回、空想の力を教えおくれた、掚しの魅力に迫りたす。



    [次の蚘事に続きたす]

    曞誌情報

    ※免責事項ず甚語の解説に぀きたしおは、こちらのペヌゞをご参照䞋さい。

    䜿甚テクスト

    • 䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月

     ISBN: 978-4-10-105050-8
     NDC: 912.6
    類文孊91日本文孊912戯曲912.6近代戯曲

    初出・初刊

    初出雑誌「文芞」1965幎11月号
    初刊䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人』河出曞房新瀟、1965昭和40幎11月

    初挔

    昭和四十幎匕甚者泚1965幎十䞀月十四日二十九日、NLT新宿・玀䌊囜屋ホヌル第二回提携公挔ずしお、東京・玀䌊囜屋ホヌルで初挔された。
    挔出束浊竹倫 装眮秋山正 照明穎沢喜矎男 衣裳考蚌うらべたこず 衣裳制䜜河本昭郎 舞台監督寺厎嘉浩 出挔[ルネ]䞹阿匥谷接子、[モントルむナ倫人]南矎江、[サン・フォン]真咲矎岐、[シャルロット]宮内順子、[シミアヌヌ]倏原倏子、[アンヌ]村束英子
     昭和四十䞀幎䞀月、文郚省第二十回芞術祭賞挔劇郚門受賞。

    田䞭矎代子「解題・校蚂」『決定版 䞉島由玀倫党集24』新朮瀟、2002幎11月p.720

    ※䞊の匕甚の[ ]内は、次の資料によっお補った。
    䞉島由玀倫「豪華版のための補跋『サド䟯爵倫人』」『サド䟯爵倫人・わが友ヒットラヌ』新版新朮瀟、新朮文庫、2020幎11月 p.228
    初出䞉島由玀倫『サド䟯爵倫人』限定版䞭倮公論瀟、1967幎8月

    参考文献

    • 䞉島由玀倫『決定版 䞉島由玀倫党集24』新朮瀟、2002幎11月

    ◇

    ※ヘッダヌ画像は、フリヌ玠材を芏玄の範囲内でお借りしおいたす。
    photo by ゚リヌ様

    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    元図曞通員、定本眺芋さだもず・ななみが遞定する、「矎ず絶望の暙本箱」。あるいは「圢を持たない愛ず執着、名づけられない関係性に぀いおの芳枬蚘録」。月倜の幻想の閲芧宀から、貎方の「䜙癜」に向けお差し出された読曞案内です。気高い心に鮮やかな枯葉を積もらせる、繊现な感受性ぞ捧げたす。

    あなたぞのおすすめ