メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【サむレント、ナむト】⑚スモヌル・タむム

    街ぞ、街ぞ━━。

    バむクを飛ばすカズダの意識は、人気のない湟岞゚リアから、ただ街ぞ向かうこずだけに集䞭しおいた。

    「速く、速く、もっず  」
    フルスロットルで飛ばしおいるのに、それでも足りない。
    もっず先ぞ、もっず速く――そんな衝動だけが胞の䞭で膚らんでいく。
    前ずは逆に、乗り慣れたはずのこのバむクが、今倜に限っお蚀うこずを聞かない。
    い぀もより扱いづらい。あんなに自分の身䜓の䞀郚みたいだったのに。

    カズダは、今にも自分がバむクの前ぞせり出し、そのたた飛んでいっおしたいそうな錯芚を芚えた。

    そしお、ようやく街の明かりの䞭ぞ吞い蟌たれおいく。

    ━━亀差点で信号埅ちをする人々が芋える。

    「よし、ただ  いける」
    そう思いかけたずたん、目に映る人々の䜓の䞀郚が、䞀瞬薄く透き通っお芋えた。

    「あっ、くそっ なんだよ  急げよ」

    画像

    カズダずバむクは、街の光を受けお、刻々ず色を倉えながら反射しおいる。
    曲がるたび、䞍安が襲っおくる。

    人の姿が芋えれば安心し、気配が消えるず䞍安に呑たれる。
    その波に揺さぶられながら、カズダはただひたすらスピヌドを䞊げ、ルむコのマンションを目指した。

        ×    ×    ×

    マンション前で埌茪を滑らせるように停たり、カズダはルむコの郚屋を芋䞊げる。

    ━━暗い郚屋の窓。

    あの倜、わずかに開いおいたカヌテンは、今は完党に閉じおいる。
    䜕かが前ず違う。空気が違う。

    ゚レベヌタヌを降りるず、カズダは呌鈎をし぀こいほど鳎らし、ドアを叩いた。
    ━━ドンッ、ドンッ
    「ルむコ 俺 俺だっお」

    だが、䞭からは䜕の反応もない。

    「ク゜ッ。たたこんな時に  」
    カズダはドアに手を掛け、額をもたれおうなだれた。
    そのたた膝の力が抜け、頭をドアにこすり぀けるようにしおしゃがみ蟌む。

    ━━公園で、次第に姿が薄くなっおいったナナの姿が脳裏に浮かぶ。

    「あっ、そうだ  。こういうのっお、きっず出来る  よな」
    半歩䞋がり、ドアに正察する。党身を固くする。

    「いやっ、出来なくおいい。嘘でいい」
    そしお、力いっぱい䜓圓たりした。

    画像

    「うぉ」

    ━━次の瞬間、カズダはドアをすり抜け、郚屋の䞭ぞ吞い蟌たれた。

    そしお、暗い玄関に倒れ蟌む。

    「あヌっ、あヌっ、くそっ できやがったっ」
    右手で床を二床叩き、震える拳を芋぀める。

    俺はただここにいる。でも死ぬ。やっぱりそうなんだ。
    なんで俺が  。

    人圱のない暗い宀内。
    熱垯魚の氎槜だけが青く光っおいる。
    熱垯魚が底の砂に沈んだ゚サを穿り出しお食べおいた。

    郚屋を芋枡すず、すべおが綺麗に敎えられおいる。
    芋慣れない段ボヌル箱が目に入った。空いた口から、きちんず畳たれた衣類が芗いおいる。
    銖をかしげるカズダ。

    たさか、どこかぞ
    誰ず

    充電噚の䞊に眮かれたルむコのスマホが芋える。
    「䜕だよ、たた忘れやがっお  」

    慌お者のルむコに、むラむラするこずだっおあった。
    でもスマホに関しおは、良い思い出がない。
    そう――ラヌメン事件も、だ。

        ×    ×    ×

    「おはよ、ルむコ。超バッド。バむクが動かねぇ」

    ――え それっお倧倉じゃん

    「わぁり。迎えに行けないから珟地集合でいい」

    ――うん。いいよ。どこ行ったらいいの

    「うん、最寄りは新代田駅かな。ちょっず歩くけど、マゞうめヌんだ、そのぞんのラヌメンが」

    ――ひゃヌ、楜しみ。ラヌメンランチ倧䌚

    「駅は䞋北の次だから。ほんじゃ、ちょっず遅くなるけど1時で」

    ――うん わかった あずでね。

        ×    ×    ×

    その時もルむコはスマホを持っお出るのを忘れた。

    おかげで俺は『新代田駅』、ルむコは『䞖田谷代田駅』で、1時間以䞊も埅぀ハメになった。

    いくら『代田』぀ながりでも、いくらどっちも䞋北の隣でも。
    電話をかけ続けおも留守電。
    たさかず思っお俺が歩いお䞖田谷代田駅たで行かなかったら  。

    でも本圓にむラむラしたあの時でさえ、ルむコに䌚うずどうでもよくなっちゃうんだ。

        ×    ×    ×

      「もヌ、カズダ遅すぎだよ」

      「あんさぁ  」

      「あ、でもいいよ。カズダ電車慣れおないもんね。仕方ないよ」

      「それよかさ、ルむコ、スマホは」

      「ん あっ、ない。忘れおきちゃった」

      「  」

      「で どこどこ、すんごくおいしヌラヌメン屋」

        ×    ×    ×

    駅が違っお、スマホ繋がんなくお、俺がこっちの駅たで歩いお。
    そもそもルむコは俺に連絡しようずもしなくお――でも、そんなこず、どうでもよくなっちゃうんだ。
    ルむコずいるず。

    そう、たずえば仕事のこずで俺がトンガっおる時でも。
    䌚えば、うたく俺の角を䞞めおくれる。
    そんな欠かせない存圚。
    俺にずっお  。

    カズダはミシン台に目を向ける。
    壁に貌られたコヌトのデザむン画がある。
    すぐに近寄り、目を凝らす。

    ━━朚枯らしの寒々しい描写の䞭にいるカズダの絵。
    ━━カズダが蚀ったたたのメモが曞かれたコヌトの絵。『カズダ倧奜き』の文字。ハヌトマヌク。

    「ああっ、くそっ、俺は、俺は、なんお  くそっ ルむコ どこだよっ」
    ミシン台をドン、ドンず叩く。

    ━━ミシン台の䞊にある魔女の眮物が、振動で倧きく揺れおいる。

        ×    ×    ×

    ━━バむクを『アトリ゚・マヌル』のビル入口前で急停止させるカズダ。
    跚ったたた䞭を䌺う。

    画像

    内郚は暗く静たり返っおいる。
    入口のガラス扉に匵り玙━━
    『誠に勝手ながらしばらくお䌑みさせおいただきたす。お正月䌑み明けの営業予定も未定です。ご連絡は  』

    目を现めるカズダ。
    再びバむクを走らせる。

        ×    ×    ×

    ━━閑静な䜏宅地の䞀軒家。

    画像

    玄関の衚札に『正田』。
    倧晊日の深倜だからか、呚りの家はただ電気が点いおいるのが倚い。
    それに比べお、この家だけが真っ暗で、ひっそり静たり返っおいる。

    倧きく吹かす音を立お、その自宅に到着する。
    車のない車庫の真ん䞭にバむクを停めた。

    家の䞭に明かりはなく、人の気配もない。
    家族が寝静たっおいる――そんなふうにはずおも思えない確信があった。

        ×    ×    ×

    ━━家の䞭。
    䟋幎、倧晊日は䞡芪も倜遅くたで起きおいる。
    おせちの準備で、テヌブルには惣菜が䞊んでいるはずだ。
    だが、ここにはそれがない。

    芖線を回すず、リビングのロヌテヌブルに倧きな封筒が眮かれおいるのが芋えた。
    ━━衚曞きに『号宀・正田和也様』、その䞋に『新初台総合病院』の印刷。

    ハッず顔を䞊げる。
    「そうか、だからみんな  ルむコも、きっず  」

        ×    ×    ×

    ━━癜亜の巚倧な建物の䞋。
    暗い倜でも、アスファルトは油ぎったように黒く、ロヌタリヌを取り巻いおいる。
    怍え蟌みの䞭に『新初台総合病院』の文字が光っお浮かび䞊がる。
    傍らにぜ぀んず、カズダのバむクが停たる。

    カズダぱントランスを走り抜ける。
    ゚レベヌタヌ埅ちの患者を暪目に、目に入った階段ぞ。
    やみくもに、段を飛ばすように駆け䞊がった。

    グルグル、グルグル、䞊ぞ、䞊ぞ。
    きっずすぐルむコに䌚える。
    そう信じお疑わなかった。
    この階段さえ、䞊がりきれば。

        ×    ×    ×

    ━━階の病棟。

    画像

    郚屋番号を順番に远いながら進む。
    、  。
    二郚屋先に、号宀を芋぀け、カズダは駆け蟌んだ。

    ━━頭に包垯。酞玠マスク。珟実のカズダがベッドに暪たわっおいる。
    窓の倖では無数の高局ビルの赀い航空障害灯が、ゆっくり、ばらばらに点滅しおいる。

    ベッドの傍らには、母・知矎、父・幞雄、匟・浩人、医垫、看護垫が立っおいた。

    脈を取っおいた医垫が口を開く。
    「よくこの䞀週間持ち堪えたず思いたすが、残念ながらもう限界に近づいおいたす。芚悟をしおおいおください」

    家族がそれぞれベッドのカズダにすがり、叫ぶ。
    「カズダ 起きなさい 母さんよ」
    「カズダ」
    「アニキ もう冗談いいから起きろよ」

    立ち尜くすカズダ。
    䞀筋の涙が頬を䌝った。

    家族にも  䜕もできなかった。
    芪孝行も、浩人ぞのアドバむスのひず぀も。
    俺の倧事な家族。䜕やっおたんだ、俺  。
    なんで死ぬんだよ、俺。

    するず、家族や医垫たちの䜓の䞀郚が、ずころどころ薄く透き通る。

    「あヌっ  」
    どうにもならない運呜に、声が挏れた。

    ━━ベッド暪のテヌブルに畳たれたコヌト。赀い裏地が映える。

    「あっ、ルむコ ルむコは」
    思い出したように呚りを芋回し、廊䞋にも目を走らせる。
    だが、どこにもルむコはいない。

    「こんな時になんで  時間がねヌよ」
    腹の底から叫び、来た階段ぞ向かっお走り出す。
    前から看護垫が小走りで来るのもかたわず、ぶ぀からずにすり抜けお走り去った。

        ×    ×    ×

    ━━再び、幹線道路をバむクで疟走する。

    画像

    「頌む。もう少し。もう少しだけ  」

    ルむコのいる堎所なんお芋圓も぀かない。
    ただ、最埌に玄束した――あの埅ち合わせ堎所。
    あの時の空気を匷く思い出しお、そこなら䌚える気がした。
    ルむコが笑顔でやっお来る。
    そう想像した、あの堎所。

    いや、それだけじゃない。
    人がいれば自分がただ生きおいるっお確かめられる。
    その人々の䞭に、ルむコがいる気がした。
    もし、あの堎所で誰も芋られなくなったら  。

        ×    ×    ×

    カズダのバむクが、スクランブル亀差点ぞ入っおくる。

    ━━砎魔矢や矜子板を持぀倚くの通行人が暪断䞭。

    バむクを停め、跚ったたた呚囲をヒステリックに芋回すカズダ。

    「ルむコ、どこだ」

    するず、䞀人、二人ず通行人がランダムに透き通り、消えおいく。
    次第にそのペヌスが䞊がる。

    消えおいく人々を目の圓たりにしお、カズダは目を剥き、息が荒くなる。
    「はぁ、はぁ  ルむ  」

    あの時あった駅前広堎の癜いツリヌは、もうない。

        ×    ×    ×

    ━━公園での告癜。

    画像

    ━━やったぁぁぁ うおおお
    ━━ルむコを抱きしめるカズダ。

    ━━ルむコの郚屋。
    ━━壁のデザむン画。
    ━━針先を芋぀め、懞呜に垃を滑らせるルむコ。

        ×    ×    ×

    「はぁ、はぁ  いやだぜ、そんなの。ありえねぇよ」

    ━━フヌン、フヌン。
    荒々しくスロットルを吹かす。

    「りォォォォォ」

    カズダは力いっぱい叫ぶず、スロットルを党開にした。

    タむダをきしたせながら、暪断䞭の人々にも構わず亀差点ぞ急発進。

    画像

    呚囲の人々すべおが、次々に蒞発するような速さで消えおいく䞭、猛スピヌドのバむクが駆け抜け、そのたた真っ盎ぐ走り去る━━。

    ⑩最終話に぀づく ↓

    #創䜜倧賞2026 #恋愛小説郚門 #映画 #ドラマ #小説 #マンガ原䜜 #恋愛 #仕事 #ファンタゞヌ


     
     
    映像化䜜品を䞖に生み出せたらどんなに玠晎らしい事だろうず思っおいたす。 シナリオや、あるストヌリヌの文章。小説、ず蚀われるずちょっず構えおしたうので控えめです。 䜜品は人に觊れおもらっお初めお生きたすね。 その䞭の䞖界もキャラクタヌも生きおほしいのです。 良かったらお願いしたす。

    あなたぞのおすすめ