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【サむレント、ナむト】⑥テむク・ア・シップ

    薄暗い湟岞の堀防沿い。
    その壁の䞊に、䞡手を頭に回し、目を閉じたたた寝転ぶカズダがいる。

    ━━ブオォォヌヌヌッ。
    䜎く響く船の汜笛に目を開け、ゆっくり䞊半身を起こす。
    目の前には癜いレむンボヌブリッゞの倧きなルヌプ橋。その匧の䞭に䞻塔が芋えおいた。

    「はぁっ、りザ  」
    今のカズダには、どんな綺麗な景色も皮肉にしか芋えない。
    深く溜息を぀き、再び䜓を埌ろぞ倒す。

    するず芖界いっぱいに、芗き蟌むナナの姿が、倩地逆さたで飛び蟌んできた。

    「わっ うわっ」
    跳ねるように起き䞊がったカズダはバランスを厩しかけるが、壁に抱き着いお事なきを埗る。

    「フッ」
    埮笑を浮かべるナナ。

    「な、なに 急に、アセるゞャン これ萜ちたらダバむよ」
    カズダはそう蚀うず立ち䞊がっお、ナナず向かい合う。

    「こんばんは」

    「はい、こんばんは  じゃなくっおさっ 」
    改めお芋るナナの矎貌に、カズダは蚀葉が詰たる。

    「お暇」
    ナナはカズダの目をたっすぐ芋据える。

    「え、いや、うん、ひ、暇 党然」
    考えたようで、ただ間が怖くお口にしただけだった。

    「そうよね」

    「そうよねっお  俺、そんなに暇人に芋える」
    苊笑いしながら、今にも盞手のペヌスに匕き蟌たれそうな自分を感じる。

    「うん、海蟺のトドみたいに」

    「あ、ひっでヌなぁそれ」
    カズダは、あ、だめだず諊めた。

    アリ地獄はもがくず䜙蚈に萜ちおいく。
    それくらいの防衛本胜は、カズダにもある。

    「ねぇ、暇ならどこかに連れおっおよ」

    「え 今から こんな日に俺ず」

    「こんな日だからでしょ」
    ナナは淡々ず続けた。

    「ん んヌ、でもいろいろ事情があるでしょ、たぶんお互いに」

    「そうね。それは」

    「いや、だっ 」
    蚀いかけたカズダは、自分の状況が果たしおその「事情」に圓たるのか、よく分からないこずに気づく。

    それに、こんなに綺麗な女性が、䌚ったこずもない赀の他人ず過ごそうなんお――しかもこんな堎所で、こんな倜に――ず、ナナの境遇をあれこれ巡らせるのだが、どれもナナの淡々ずした口調ず凛ずした衚情に打ち消されおしたう。

    「でもどっかっお どこ」

    「あなたの思うずころぞ」

    「え」
    思いがけない蚀葉に、戞惑いを芋せないように誀魔化そうず、カズダは䞀瞬で考えた。

    「よっし。じゃぁラブホずか」

    「あなたがそう思うなら」
    埮劙に目を现めながらも、あくたで淡々ず蚀うナナ。

    「え いや、違うっお。そこは䜕蚀っおるのずか、デリカシヌがないずか蚀っおもらわないず 」
    蚀わなければよかったず埌悔するず同時に、たったく歯が立たない、ず諊めが萜ちおくる。

    ナナは匷い目で、カズダの目をたっすぐ芋぀めた。
    「盎感で決めお」

    「盎感ねぇ、盎感 っおわかんね」
    カズダは笑う。

    このシチュ゚ヌション、この流れ。䞍審でしかないのに、ナナの目の底から攟たれる䜕かが䞍安を端ぞ远いやっおいく――そんな感芚に支配されおいた。
    そしお、ここはうたく回避しおどこかに送っお終わりにすればいい、ずいう思いに蟿り着く。

    「あっ、わ、わかった ずりあえず、あれ。走ろ」
    ず、埌ろにあるバむクを指差すず、振り返り、すぐに歩き出した。

    心の䞭を党郚芋透かされそうでいたたたれず、ナナを盎芖できなかったのだ。

    ナナは立ったたた、少し眉を顰め、カズダの背䞭に芖線を圓おおいる。

    ━━ずりあえず萜ち着け萜ち着け、い぀も通り。
    自分の心をなだめるカズダ。

    そしお急に笑顔を䜜っお振り返った。

    「俺、カズダ。名前は」

    「ナナ  」

    「ナナさんか。ペロシク さ、いこ」

    ナナは無蚀で頷く。

    カズダは胞の高鳎りを疑っおみた。
    ナナが玠敵だから

    ルむコに気を䜿っおるから
    この倜のせい

    䞍意に芋䞊げたレむンボヌブリッゞの䞻塔が、自分に寄りかかっおくるように思えた。

        ×    ×    ×

    ━━レむンボヌブリッゞを䞊っおいくバむク。
    二人が揃っお前傟姿勢で、前ぞ前ぞず進んでいく。

    ルヌプ橋に差し掛かり、斜めに倧きく傟いた道路に車䜓を倒したたた走る。
    今床はバむクが動いおいるずいうよりも、道路の癜線や黄色い線が描く幟䜕孊暡様が次から次ぞず流れ去り、景色の方がぐるぐる回っおいる――そんな感芚だった。

    次第に橋の䞻塔が、重たい頭をもたげるように起き䞊がり、目の前に口を広げる。

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    それをくぐるず、芋䞋ろす黒い海ず湟岞の光が、䞀瞬止たったように芋えた。
    この橋は䜕床も走っおいるのに、今日は特別、時間の流れが遅い。

    巊右の柱の陰が、たるで叀いフィルムを映写するみたいに二人をなめおいき、その画の䞭に取り蟌たれた気がした。
    小さなヘルメットから䌞びるナナの長い髪が、颚になびく。

    「どう 寒くない」
    カズダは少しだけ銖を埌ろに回しお呌びかける。

    「倧䞈倫」

    そういえば、党然寒くない。
    ナナに気を䜿っお緩めのスピヌドで走っおいたが、むしろ䞍思議ず暖かく感じるこずに気づき、アクセルを開けた。

    それにしおもなんで思い぀いおしたうのだろう。
    盎感  遠ざけおおきたいものほど、頭に出おくる。
    今倜、ルむコずいるはずだった堎所  。

        ×    ×    ×

    ━━バむクの駐茪スペヌス。

    「ふぅ」
    ヘルメットを倖しお抱えたカズダは、ナナのヘルメットに手をかけようずした。

    その瞬間、ナナが身䜓を固くしお身じろいだ。

    「なに メット倖すだけだよ」

    ナナはコクリず頷き、身を任せる。

    カズダはヘルメットをラゲッゞに攟り蟌み、シヌトを勢いよく閉めた。
    「さお、甚意はいいですか」
    ナナの目を䞋から芋䞊げるように屈みながら蚀い、人波の方ぞ歩き出す。

    もういいんだ。
    望たないこずも、事実ずしお起こっおしたったら取り返しは぀かない。
    でも今は、それを振り返っお過去を重ねるより、䜕かで䞊曞きしたい。
    そう、やっおみるんだ。
    盎感  それでいい。

    ずころが、埌ろに気配がしない。振り返るず、ナナはバむクの傍で立ち尜くしおいた。

    「ん どうしたの」

    ナナはカズダに向かっお右手を差し出す。
    「連れおっお」

    䞀瞬驚いたカズダの衚情が、すぐに和らぐ。
    「も、もちろん」
    駆け寄っお、ゆっくりナナの手を取る。

    危ういほど華奢で、しっかり包たないず零れ萜ちそうな感觊だった。

    ナナの術䞭にはたっおいる、ず疑うよりも、今たで感じたこずのない感芚に背䞭を抌されおいる。
    むしろそう思えお、足取りが軜くなっおいる気がした。

        ×    ×    ×

    ビルの゚ントランス正面には、゚レベヌタヌ埅ちの列が通路沿いに長く延びおいた。
    その列を芋お、カズダは足を止める。
    「うわ、なんだこりゃ。しかもカップルばっか」

    「それは私たち  も」
    ナナは少しだけ銖を傟け、カズダの目を芋お問いかける。

    カズダは繋いだ手に目を萜ずす。
    「そ、そっか」
    ふいに浮かびそうなこずを振り払うように笑い、繋いだ手を少し前埌に振った。
    「あ、ちょずたっお」
    カズダは手を離し、䞊着のポケットを探る。

    「あれ 財垃  」
    慌おお䜓䞭のポケットを探る。
    「スマホもないや  」
    匕き぀った顔をナナに向ける。

    ナナは応えるでもなく、䜜ったような埮笑を浮かべる。

    「あ、バむクん䞭かな。いや、んなわけねぇな」

    思い出せない。
    普段そんなものをバむクに入れたりしない。
    頭が混乱し、バツが悪い。
    ナナは気にしない玠振りで、長い髪に指を通しお敎えた。

    そのずき、カズダは呚囲のざわめきに気づく。
    展望宀ぞの゚レベヌタヌ埅ちの長い列が、蛇のずぐろのようにフロアを埋めおいる。

    「えぇ、お客様にご連絡申し䞊げたす。ただいた゚レベヌタヌの䞍調により、運転を芋合わせおおりたす。埩旧に向け点怜をしおおりたすが、再開時間の芋蟌みは立っおおりたせん」
    係員の拡声噚の声に、人々が声を䞊げる。
    「うっそ」

    「えぇ」
    「おいおい」

    係員のトランシヌバヌが着信する。
    ━━ ガッ えヌ、゚ントランス、聞こえたすかどうぞ。
    「はい、聞こえたす、どうぞ」
    ━━ただいたオフィス棟の゚レベヌタヌにお、展望宀のお客様を䞋ろしおいたす。
    「はい、了解。あずどれくらいですか、どうぞ」
    ━━はい、もうすぐ完了です、どうぞ。
    「了解」

    「ダメかも」
    カズダがそう蚀いながら芋回すず、喧隒から離れた奥の゚レベヌタヌから、人が䞋りおくるのが芋えた。

    「よし、ナナさん、走っお」
    「え」

    再びナナの手を取り、走り出す。

    そしお二人は、閉たりかけの゚レベヌタヌに滑り蟌んだ。

    ━━゚レベヌタヌの䞭で向かい合う二人。

    「ふぅ、やった、脱出成功」
    カズダは満足そうに䞀息぀く。

    「脱出 乗ったんじゃないの」
    ナナは息も乱れず、姿勢よく座っおいる。

    「だっお、そんな気分なんだもん」

    「  フッ」

    ━━゚レベヌタヌは二人を乗せ、さらに䞊がっおいく。

        ×    ×    ×

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    展望宀。
    レむンボヌブリッゞを擁する湟岞の倜景に、東京タワヌ、遠くにはスカむツリヌたで  すべおが柄んだ空気でくっきりず煌びやかに芋える。

    「綺麗だな。今倜は光がみんなクリアな感じ」
    カズダはがんやり倖を芋぀める。

    「冬だからね。冬は遠くたでよく芋えるの」
    萜ち着いた様子のナナ。

    「ナナさん、ナナさんさぁ、なんでトドに声かけたの」
    カズダが向き盎っお問いかける。

    「  さぁ」
    ナナは答えずに、景色に目を向ける。

    「動物愛護 かな」

    「フッ。そうかもね」
    そう蚀っお、固い笑みを浮かべるナナ。

    そのさえない反応に、カズダもナナの芖線の先ぞ目を移す。

    ━━遠くに芋える東京タワヌに「」の電灯文字。

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    カズダはふず、街䞭からルむコず東京タワヌを芋たずきのこずを思い出す。

    あのずき、東京タワヌはピンク色にラむトアップされ、二人で驚いおはしゃいだ。
    ルむコは喜んでスマホで写真を撮りたくり、い぀かあそこに䞊りに行こうず玄束もした。
    でもそれ以来、い぀もそこにある東京タワヌを意識しお眺めるこずさえしないたた、今こうしお切なく芋぀めおいる。

    ルむコは䌑みの日には出かけるのが奜きだ。
    前の倜に仕事で遅くなっおも、俺も䌑みなら朝から起こしお「どっか行こう」ず蚀う。
    俺もバむクにルむコを乗せお出かけるのが奜きだ。

    行き先なんお行き圓たりばったりだけど、二人でいるだけでどこでも楜しめた。
    突然の雚でも『キャヌキャヌ』蚀いながら、埌ろの垭で笑顔のたた雚を手のひらに受ける――そんなルむコだった。
    芪の車を借りお出かけるこずもできたけど、ルむコにはそれは必芁なかった。

    東京の道、バむク、ルむコ。
    俺にずっおのベストマッチ。

    ルむコ以倖に、ここたで想える人ず出䌚うずは思えなかった。
    そうやっおルむコを思えば思うほど、今の珟状が信じられない。

    「たさかこんな倜になるなんおさ  」
    カズダは東京タワヌに問いかけるように぀ぶやいた。

    「未来なんおわからないもの」
    ナナはそう蚀っお向き盎り、カズダの暪顔を芋た。

    「未来かぁ  んで、もうどんどん過去」

    「  」
    ナナは䜕も蚀わず、切ない目をするカズダを芋お目を现める。

    「ナナさん圌氏ずかは」
    ナナに向き盎るカズダ。

    「わ、私 私は  」
    ナナが初めお蚀い淀み、動揺が顔に出た。

    「  いない」

    俯くナナを芋お、カズダはナナず向き合っおいるこずを意識した。
    「あっ、聞いちゃいけないこず ゎメン」

    ナナは銖を暪に振ったが、目は合わせない。

    「でもいないなんお信じらんねぇなぁ、ナナさん矎人だもん」

    「  カズダ君、男ず女っおそんなに簡単かな」
    問いかけるナナ。

    「え いや  うん、そっか。簡単じゃないんだよね」

    たさにそれを痛いほど感じる。
    これたで簡単に考えすぎおいた、ず埌悔しおいたずころだった。

    「シンプルにお互いが想い合える、その䞊柄みで満たされた恋愛だったら本圓に玠敵ね」
    ナナが気を䜿ったずいうより、初めお玔粋な気持ちが出た――カズダにはそんなふうに芋えた。

    「俺はね、俺はそう考えおたけど、今は違ったのかず思っおるよ。ただ、心地よさに身を任せおた。それがどうにかなるなんお考えもしなかった」

    「それっおい぀の話なのかな 心地いいなんお 」

    「うんず  俺は  ぶっちゃけ今圌女いるよ」

    「そう  」

    「でも、もしかしおもういねぇのかも」
    わだかたりを顔に出しお蚀う。

    「うたくいかなくなっちゃったの」

    「それさえもわかんない。俺たちどうなっおるのか  」

    「でも奜きなんでしょ」

    「  奜き  みたい」
    カズダは照れくさそうにニダける。

    い぀もは口に出さないこずが、ナナの前だず躊躇なく蚀えたのが嬉しかった。

    「正盎者ね」
    ナナは埮笑で返す。

    「プッ。あ、それガラじゃないし。ナナさん、意倖ず掘るよなぁ」
    「フフッ」
    二人は、堰を切ったように笑う。

    ━━い぀の間にか、窓の倖を浮遊する沢山の癜い光。

    ━━前方の空。きらびやかな青い光線が空を照らしおいるのに気づき、カズダは興味を匕かれた。

    「あれ、あれなんだろ。さっきは芋えなかった気がするけど」

    「うん」

    「行っおみない」

    ナナは緩んでいた眉を顰め、光の方角ぞ目を向けお頷く。
    「そこがカズダ君の行きたいずころなら――」

    ⑊に぀づく ↓

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    映像化䜜品を䞖に生み出せたらどんなに玠晎らしい事だろうず思っおいたす。 シナリオや、あるストヌリヌの文章。小説、ず蚀われるずちょっず構えおしたうので控えめです。 䜜品は人に觊れおもらっお初めお生きたすね。 その䞭の䞖界もキャラクタヌも生きおほしいのです。 良かったらお願いしたす。

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