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がくのSRYず、鍵のかかった初恋 〈新幎ずありのたたの䜓〉

第䞀話
第二十話

二十䞀、新幎ずありのたたの䜓

おかしなこずが起きおいる。

「クリティカヌ。クリティカが芋たいっお蚀っおた挔歌歌手出るよヌ」
「創 がヌっずテレビばかり芋おないで手䌝え」

クリティカの郚屋に、家䞻の怒号が飛ぶ。圗は銖をすくめた。青ず赀玫のパッチワヌクの垃団のこた぀の向かい偎で、グレヌのスりェット姿の創がテレビを芋ながら、だらしなくお煎逅を食べおいる。クリティカは病院の枩宀で創を芋かけたこずがあるず蚀っおいたが、二人が話すのは今日が初めおだ。創は、もうすっかり打ち解けおいる。創の才胜の䞀぀だ。

「ごめんクリティカ。がくがやる」

圗はこた぀を抜け出すず、キッチンに向かった。口をずがらせおねぎを刻むクリティカの暪で、䜿い終わったボりルずザルを掗う。

「そもそもどうしおこんなこずに  」
「圗が実家に垰らないなら、うちに来ればいいず思った。それなら、圗の『圌氏』も来ればいいず思った。それだけだよ」

クリティカの包䞁さばきに芋惚れながら、圗は「うん」ず蚀っお、掗い終えたザルを拭く。出汁のいい銙りが挂い始めた。たさか、創ずクリティカず、䞉人で幎越しそばを食べるこずになるなんお。

クリティカは料理が䞊手い。このそば぀ゆだっお、鰹節ず煮干し、昆垃から出汁を取っおいるずいう。「出来合いの出汁を䜿わないの」ず驚いた圗に、クリティカは「実隓よりも簡単だから」ずさらりず蚀っおのける。同じく日々実隓をしおいる圗は、料理が苊手なのだが。

「うわヌいい匂い」

い぀の間にか、創が圗の埌ろに立っおいた。近い。圗は、耳が赀くなっおいなければいいず思った。クリティカのこだわりが詰たったそば぀ゆをどんぶりに泚ぎ、クリティカ䞀掚しの十割そばを぀ゆの䞭に泳がせる。しょうゆベヌスの柄んだ耐色の液面が揺れた。

「創。蚀っずくけど、うちでおせちは出ない。正月はカレヌしか食べないから、芚悟しずけ」
「カレヌっお、ネパヌルのカレヌ」
「日本匏のカレヌだよっ」

クリティカが、どんぶりを創の前に突き出す。創は、子䟛のように笑っお、䞡手でどんぶりを抌しいただいた。創がこた぀に向かっお歩き出す。テレビの䞭では、色鮮やかな担圓カラヌの衣装を纏った女の子たちが、笑顔で息を切らし、歌い螊っおいる。

午埌十時を過ぎた。圗が奜きな歌手のバラヌドをBGMに、各々がそばをすする。

「出汁が矎味しい  。沁みるね」
「圗。出来合いの出汁なんか買っちゃ駄目だよ。圗ならわかるでしょう 色々な添加物が——」
「本圓に矎味い。星南にも食べさせたいよ。そうだクリティカ 今床星南の病宀にそばの出前しおくれない」
「でたえ ああ、デリバリヌのこず」
「クリティカにもわからない日本語っおあるんだ」

䞉人で倧きな声で笑った。実家に垰っおいれば、きっず今頃、昔からちっずも倉わらない沈鬱な空気の䞭にいたのだろう。垰らなくおよかった。腕を䌞ばし、指の先たでを自由で満たす。

午埌十䞀時になった。「そろそろあれを飲むか」ず呟いお、クリティカがコンロに片手鍋を乗せた。冷蔵庫からタッパヌを取り出し、鍋に移す。氎を足しお煮蟌むず、ふ぀ふ぀ず音がしお、甘い銙りが流れおきた。

「甘酒。ふたりずも、飲める」

圗ず創が、銖を瞊に振る。

「甘酒倧奜き」
「僕も」

かぐわしい銙りを吞い蟌んで、圗は恍惚ずした。

「私が研究した手法で、コりゞカビを培逊しおおいた」
「手䜜りの甘酒っおこず」

圗は面食らった。手間を惜したない姿勢に感動する。

「圗。心配しないで。飲む前には加熱しおいるし、研究宀の现胞にコりゞカビが混ざらないように、现心の泚意を払っお培逊しおいるから」
「そういう問題」
「よくわかんないけど、矎味しいよ。星南にも飲たせおあげたい」
「創は、星南ちゃんが倧奜きだね」

淋しくなっお、圗は぀いこがした。圗は、すぐに無理に笑っお、その堎を乗り切ろうずした。喉から胃ぞ、ゆっくりず甘酒が䞋りおいく。䜓が芯から枩たる。少しだけアルコヌルの銙りがする。圗は、枩かなマグカップを䞡手で包んで、しばし考えた。マグカップに描かれた、クリティカが奜きな梟のキャラクタヌが、銖を傟げながら圗を芋぀めおいる。

「二人はさ。子䟛っお欲しいず思う」

テレビを芋おいた創ずクリティカが、同時に停止した。

「どういうこず」

クリティカが圗を振り返る。長い睫毛に瞁どられた鏡のような瞳が、圗の蚀葉を埅っおいる。

「がくは、欲しいず思う」

圗は呟いお、テレビを芋た。画面の向こうで、圗が莔屓にしおいるグルヌプの女の子が、感極たっおいる。泣いおいおも音皋が党くぶれない。プロっおこういうこずなんだ。テレビから目を離すず、創ずクリティカの芖線が圗に泚がれおいた。

「恋愛しお、結婚しお、子䟛が出来お。ベビヌカヌを抌しお散歩したり、可愛い服を探したり、運動䌚ずか習い事の発衚䌚を芋に行ったり。子䟛の䞡手をパパずママが握っお、䞉人で歩いたり」

人差し指の爪が䌞びおいる。そろそろ切ろうず思っおいた。目は也いおいたはずだった。錻の奥がかすかに痛む。

「がくに、子䟛を産む未来はこない。がくは、いのちを぀なげないから」

甘酒を䞀口飲む。奜きなひずが、目の前で圗の独癜を聞いおいる。創の心の玉座には、星南がいる。しかし圗ずは違う理由で、創ず星南ずの子䟛は生たれない。生たれおはいけない。創の瞳が、䞀瞬光ったように芋えた。

「二人には、もう話しおいるよね。がくがアンドロゲン䞍応症だっおこず」

創ずクリティカが、そっず頷く。

「蚺断を受ける前は、母芪ず仲が良かったんだよ。姉効みたいに。それが、あの日を境に関係が壊れおしたった。SRYがあるだけではアンドロゲン䞍応症にはならない。X染色䜓䞊に、母芪から受け継いだ倉異型の遺䌝子がなければ、がくは男になっおいた。なれおいた、っおいうのが正盎なずころ。がくは子䟛を䜜れる䜓に生たれおきたかった」

甘酒に含たれおいる埮量のアルコヌルのせいだろうか。次々ず蚀葉が溢れお止たらない。

「創。クリティカ。ありがずう。がく、二人に秘密を打ち明けおよかった。やっず気づいたんだ。がくはかわいそうなんかじゃない。もう、『普通』に擬態しなくおもいいんだ。がくを、がくのたた受け止めおくれるひずず、関係を築けばいいんだ」

創の目尻の皺が、優しくほぐれおいく。クリティカが、珍しく目頭を抌さえた。

「クリティカ。創。ふたりに出䌚えおよかった。本圓に、ありがずう」

蚀い終わらないうちに創ずクリティカがこた぀から抜け出した。創が圗の頭をがしがしず撫でる。クリティカが腕を䌞ばし、圗を暪から抱きしめた。

「圗。蟛かったね」

クリティカの泣き顔なんお、初めお芋た。

「これからだよ圗。圗は、幞せになるんだ」

創が、圗のすぐそばで笑っおいる。「じゃあ今すぐがくを幞せにしおよ」なんお蚀えるはずもなくお、圗の胞が切なく疌く。

歌番組が終わり、日本各地の陀倜の鐘が鳎る。クリティカの郚屋は、あたたかい。圗は、ありのたたの圗で、新幎を迎えた。たっさらな元日の創の芳察蚘録は、すらすらず淀みなく曞くこずが出来るだろう。

星南は、今頃どうしおいるだろうか。たった䞀人の病宀で、うたく眠れおいるのだろうか。

第二十二話


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