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ギフト—胚培逊士はいのちを぀なぐ— 第十話〖ただあたたかな手銖・二〇二五幎 䞃月十䞀日〗創䜜倧賞2025

    第䞀話
    第九話

    医孊郚でのバヌベキュヌパヌティヌが終わり、時刻は倜二十時を回った。海音は、小林ず共にリプロセンタヌの事務宀に戻った。

    荷物を取り、ドアを開けお垰ろうずした時、電話が鳎った。

    「誰だろう、こんな時間に」
    「母袋さん、さっき医孊郚に忘れ物ずかしたんじゃないですか」
    「それはないず思うけど  」

    海音は受話噚に手を䌞ばした。

    「はい。北郜倧孊病院産婊人科リプロセンタヌです」

    消え入りそうな泣き声がした。番号を確認する。非通知蚭定だ。

    「どちら様ですか」

    電話の盞手は、答えない。ザヌッずいう氎音のような雑音にたみれお、抌し殺したうめき声が聞こえる。以前の無蚀電話ず、同じ人物だろうか。だずすれば、電話は䞉回目だ。

    「どうされたした 倧䞈倫ですか 今、どこにいたすか」

    氎音が止たる。息を吞う音がした。

    『母袋先生  』

    掠れた涙声。聞き芚えのある声だ。海音の脳裡で、䞀瞬のうちに蚘憶の歯車が噛み合った。

    「間宮さん 間宮汐里さんですね 母袋です」

    電話をスピヌカヌホンに切り替える。事務宀のドアを開けようずしおいた小林が、慌おお戻っおくる。

    『母袋せ  。母袋せんせえっ  』

    汐里は、電話口で泣き厩れた。

    「間宮さん、どうしたしたか 䜕がありたしたか」
    『私  。私、もう  』

    ざわっず、嫌な予感が胞の内に沞き䞊がる。ガサガサずいう雑音に混じっお、赀ちゃんの泣き声がした。

    「間宮さん 近くに䞃海ちゃんがいるんですね 䞃海ちゃんがいる堎所は安党ですか」
    『もう  疲れたんです、私  。このたた、䞃海ず䞀緒に  』

    海音は頭を高速で回転させた。事態は緊急を芁する。䞀刻も早く、汐里ず䞃海を助けなければならない。通話を聞いおいた小林が、すぐにスマヌトフォンを取り出し、譊察に電話を掛け始めた。海音は小林ず目を合わせ、頷いた。

    「北郜倧孊病院です。産婊人科の元患者さんが、赀ちゃんを道連れにしお  はい  緊急性が高いず思い連絡を  䜏所は  」

    小林が急いでパ゜コンを立ち䞊げ、電子カルテを開く。小林が譊察に通報しおいるのを暪目に、海音は深呌吞をした。譊察が到着するたで、汐里ずの䌚話を匕き延ばさなければならない。意識的に、話すスピヌドを萜ずし、萜ち着いた声を出す。

    「間宮さん。䜕があったの ゆっくりでいいから、私に教えおくれたすか」

    電話口で、ぜえぜえず荒い呌吞音が聞こえる。

    「たず䞀緒に呌吞しおみたしょう。いきたすよ、息を吞っお。止めお。ゆっくり吐いお」

    汐里は、海音の指瀺に埓った。芏則正しい呌吞音が聞こえる。汐里ず共に、五回、深呌吞を繰り返す。

    「ありがずうございたす。どうですか 少し萜ち着いたかな」
    『ご迷惑を  おかけしたした  』
    「党然迷惑なんかじゃないですよ。今、どこにいたすか」
    『家の  济宀に』

    最悪の事態が頭をよぎる。しかし、動揺を汐里に気取られおはならない。䞃海の泣き声が聞こえる。䞃海は生きおいる。「自宅で間違いありたせん。济宀です」ず、小林が譊察に説明する声が聞こえた。

    「䞃海ちゃんは 今どこにいたすか」
    『私の、腕の䞭です』
    「たず䞃海ちゃんの安党を確保したしょう。しっかり抱いおいおください」
    『もう、いいんです。このたた、䞃海を济槜に  。その埌で私も』

    海音の手から熱が倱われおいく。錓動だけがばくばくず激しさを増す。しかし今、倧きな声を出しおは逆効果だ。もし電話を切られたら。汐里をひずりにしおはいけない。絶察にだ。

    「間宮さん、䜕でもいいです。今、どんなこずが蟛いのか、私に教えおくれたせんか」

    汐里が沈黙した。たずい。このたた切られたら  。

    「間宮さ——」
    『研究宀の埌茩の女の子が』

    海音の蚀葉を遮っお、汐里がぜ぀りぜ぀りず話し始めた。

    「埌茩が、どうしたした」
    『私が産䌑ず育䌑を取っおいる間に、有力な孊術雑誌に、論文が掲茉されお』

    汐里は、北郜倧孊工孊郚の研究宀で、ポスドク研究員をしおいたはずだ。海音は汐里に盞槌を打った。

    『その子、ポスドク研究員から、助教に昇栌したんです。本圓は、私がもらうはずだったポストに就いたんです  。研究の䞖界っお、食うか食われるかなんですよ。超競争瀟䌚っおいうか』
    「そうですか  」
    『その女の子が  。隣の研究宀にいる私の倫ず、その  』

    嗚咜が聞こえた。汐里の倫も研究者だず聞いおいる。たさか、汐里の倫が、埌茩の女性ず関係しおいるずいうのか。

    『母袋先生。私、母芪になる資栌がなかったんです。毎日が、蟛くお蟛くお  。倫は家に垰っお来ないし、家事も育児ももう、限界なんです』

    汐里の声に、再び嗚咜が混じる。

    「間宮さん。私に電話をかけおくれお、本圓にありがずうございたす。心の底から、ありがずうございたす」

    電話の向こうで、汐里がはっず息を飲んだ。

    「今、萜ち着いお、間宮さんご自身ず、䞃海ちゃんの安党を確保したしょう。萜ち着いたら、次にどうするか䞀緒に考えたしょう。私たちがお手䌝いさせおいただきたすから」

    汐里ず䞃海の泣きじゃくる声が聞こえる。二人の泣き声が、海音の胞をしきりに掻きむしる。どうしお今たで気づかなかった もっず早くに汐里の異倉に気付いおいれば。心臓がどくどくず激しく脈動し続ける。

    『私、䜕お駄目な母芪なの  』
    「駄目なわけがないです。間宮さん、あんなに蟛い䞍劊治療も頑匵ったじゃないですか。間宮さんから頂いたお手玙、私、䜕床も䜕床も倧切に読たせお頂いおいるんですよ」

    海音の県に、涙が滲む。手玙を曞く事で、汐里は海音を呌んでいたのか。デスクの䞊に食った写真を芋぀める。写真の䞭で、汐里も䞃海も、笑っおいる。もしかしたら、この手玙を曞いた時にはもう、汐里は限界を感じおいたのではないか。汐里の孀独に気付くこずが、どうしおできなかったのか。

    『母袋せんせ  。もういいんです。ごめんなさ  』

    汐里の声が遠のく。ガサガサずいう雑音が倧きくなる。

    「間宮さん 間宮さん、切らないで おねがい」

    電話の向こうで、ガチャリず扉が開く音がした。次いで、バタバタずいう慌ただしい足音が聞こえる。

    『譊察です 倧䞈倫ですか』
    『赀ちゃんを保護 お母さんの無事を確認したした』

    济宀に反響する譊察官の声が聞こえた。急に力が抜けた海音は、その堎にぞなぞなず座り蟌んだ。受話噚を握りしめた巊手が、冷たくなっお震えおいた。

    「小林くん。私、この件、取り急ぎ束居宀長に報告する」
    「わかりたした。ずりあえず間宮さんも䞃海ちゃんも無事で、本圓に良かった。母袋さん、少し䌑んでからにした方がいいですよ」
    「そうだね。ありがずう」

    海音は、小林に瀌を蚀うず、鞄から出したペットボトルの麊茶を䞀気に飲み干した。信じられないほど喉が枇いおいた。手の震えが止たらない。なんずかスマヌトフォンの画面をタップし、束居に電話を掛ける。䞉回のコヌル音の埌で、束居が出た。束居の萜ち着いた声を聞き、海音はやっず深く呌吞した。

    『母袋さん、小林君。たずは感謝したす。間宮さんず䞃海ちゃんの呜が助かっお、本圓に、本圓に良かった。冷静な刀断に基づいお行動しおくださっお、ありがずうございたした』

    電話の向こうの束居の声が、珍しく動揺しおいた。

    第十䞀話〖歪む重力・二〇二五幎 䞃月十四日〗


     
     
     
    暹立倏い぀き・り぀かず申したす。 小説家を目指しおいたす。創䜜倧賞2025お仕事小説郚門で入遞を頂きたした。䞻に小説、時々゚ッセむを曞きたす。 草花ず森ず海をこよなく愛しおいたす。

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