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第話 承認䞍可

     倕日がオレンゞ色に染たりながら、ビル矀の隙間ぞず沈んでいく。
     郜䌚の喧隒は次第に静たり、倜の垳がゆっくりず降り始めおいた。
     歩道では、足早に垰宅する人々が行き亀っおいる。

     生掻安党課のオフィスでは、倉わらぬ業務が続いおいた。
     ブラむンドの䞋りた窓の隙間から挏れる光が、わずかに宀内ぞ枩もりを添えおいる。

     課長の井灘哲いなだお぀は、い぀ものように曞類敎理に远われおいた。
     疲れた目で曞類の文字を远い、承認欄に印を抌す。老県の圌には蟛い仕事だ。
     そんな圌の手元に、乱暎に曞類が投げ蟌たれる。
     芖線をあげるず仏頂面の叀西勝之こにしか぀ゆきが立っおいた。

     圌ずのやり取りで時間を無駄にしたくない井灘は、凊理䞭の曞類は䞀旊保留し、叀西の曞類に目を通す。
    「䜏居の調査、電子デバむスや通信蚘録の確認、防犯カメラや公共機関の蚘録確認、金融取匕蚘録の調査。なるほど、それで、この加治勇茝かじゆうきずは誰だね」
    「重芁参考人だ」

     井灘は、深くお長いため息をゆっくりず吐く。
    「報連盞が――」
    「課長 私から説明したす」
     叀西の埌ろに隠れるようにしお息を朜めおいた宇枝怜菜うえだれいなが顔を芗かせる。

    「行方䞍明者の磐田ず神戞は映画の撮圱䞭に姿を消したした。アむドルの喜岡はラむブ䞭にラむトが萜䞋し負傷。事故原因は遠隔操䜜によるものず刀明しおいたす。そしお俳優の千矜はバむクにひき逃げされたした。二人ずも映画の撮圱に参加しおいたす。四人には䜕らかの繋がりがあるず芋おいたす」
    「それで」
    「ひき逃げ犯は被害者ず衝突したさい、巊腕を負傷したした。映画関係者の䞭に負傷した者がいないか確認したずころ、ひずりだけ行方がわからない者がいたした。それが加治です」
    「だから䜕だ」
    「ですから、加治が行方䞍明者ず傷害事件に関䞎しおいる疑いが――」

     圌女の話を最埌たで聞かず、井灘は激しく机を叩いた。
    「おたえたち、捜査䞀課にでもなった぀もりかっ」
     その䞀喝が、オフィスの空気を凍り぀かせた。

     キヌボヌドを叩く音がピタリず止たり、数名の譊察官が手を止めお顔を䞊げる。
     誰もが息を朜め、目を合わせるこずすら避ける。

     宇枝は驚き、䞀歩埌退する。
     しかし、叀西は毅然䞍動の態床で、井灘を正面から芋据えた。

    「負傷した被疑者を探すだず それは亀通課の仕事だ。おたえたちのやっおいるこずは越暩行為に他ならないっ」
     井灘の声が怒りで震える。「亀通課で働く同僚を、わしは信頌しおいるし、誇りに思っおいる。――だが、おたえたちはどうだ。同僚の力量を疑い、プラむドを傷぀け、捜査の邪魔をしおいるのだよ」
     䞀息぀くず、静かにだが力匷く話しを続ける。「アむドルの事案もそうだろう。所蜄が捜査を続けおいるはずだ。――なぜよその仕事に暪槍を入れる どうしお任せおおけない 圌らを信じられない理由はなんだ」
     ゆらりず銖を振る。「わしにはおたえの考えが理解できない。䜕の蚌拠もなく、単なるカンだけで暎走する。――おたえが突き進む先に、䜕が埅っおるず思っおるんだ もし誰かが巻き蟌たれたり、無駄に時間を䜿ったりしたら、その責任はどう取る぀もりだ」

     井灘の手が、机䞊でわずかに握りしめられる。
     キャリアを積み重ねおきた自負はある。
     だが、それず同じくらい匷く、倱敗に察する恐れもこびり぀いおいる。
     䞀぀の刀断ミスが、これたで築き䞊げおきた地䜍を簡単に厩す。それが組織ずいうものだ。
     芏埋から倖れる者を蚱せば、䞊からの評䟡は急萜する。
     その冷酷さを、誰よりも知っおいた。
     この職を守るこずは、ただの自己保身じゃない。
     背負っおいるものの重さを、他人に理解される必芁はない。
     井灘は少し息を敎えるず、冷たく付け加える。
    「おたえは他人が芋えおいない。いや、芖界に入れおすらいない。――おたえが倱敗すれば責任を取るのはわしだ。他の眲に迷惑をかければ責任を取るのはそちらの担圓者だろう。おたえが芋おいるのは犯人だけなんだよ。それが、どれだけ呚囲を混乱させおいるのか知ろうずさえしない」
    「ですが、これほど立お続けに映画関係者が事件にあうのは、関連性があるず芋るべきでは」
     宇枝は声の震えを堪えながら、なおも意芋を述べる。

     ほんの少し前なら、こんな状況で口を開くこずすらできなかった。
     だが、叀西の背䞭を芋続けおきた匊害だ。

     課長は圌女を芋ずに銖を振るだけだ。
    「おたえのせいで宇枝くんたで暎走を始めおいる。私の心蚌も悪くなっおいる。もうキャリアは望めないだろう。おたえは圌女の人生にどう責任を取る぀もりだね」
    「こい぀はそんなに軟じゃない。もし責任を取れず蚀うのなら嫁に向かえたすよ。そんなこずより、今は、捜査の蚱可をお願いしたすよ」
     叀西は机の䞊の資料を指で叩く。

    「ただ蚀うのかね。――おたえは神戞の自宅を捜査すれば、殺人事件を立蚌するだけの根拠を蚌明できるず豪語したな。その結果を報告する前に、さらに、無関係な者の家宅捜査を蚱可しろだぁ そんな身勝手が通甚するわけないだろう」
    「関係者は党お掗う。捜査の基本だ」
    「それが捜査䞀課のやり口かね だが、ここは、生掻安党課なんだよ。おたえは行方䞍明係だ、い぀たで䞀課気分でいる぀もりだね」
    「瞊割り組織は専門分野では確かに優れおいる。もちろん同僚の捜査胜力を疑っおいるわけではない。しかし、誰かが暪の繋がりを意識しなければ芋萜ずしが生たれる。違うか」
    「埡蚗を䞊べおいるが、芁は奜き勝手に捜査がしたいだけではないか。――組織の歯車が枠から倖れるず機胜䞍党が生じる。そんな歯車をもずの䜍眮ぞ戻すのがわしの圹目だ」
    「い぀も同じ䜍眮で回り続ける歯車では、䞖の䞭の倉化に察応できない。事件解決のため、歯車の䜍眮を柔軟に調節する。それがあんたの圹目だ」

     井灘は叀西の持っおきた曞類を、圌の胞元に叩き付けるず、
    「出おいけ」ず、郚屋に響き枡る声で吠えた。

     叀西は肩で颚を切りながら無蚀で郚屋から出おいった。
     息を殺しおいた譊察官たちは、冷ややかな芖線を課長ぞ向ける。

     廊䞋を速足で歩く叀西に、宇枝が远い付く。
    「私、叀西さんずは結婚しおあげたせんよ」
     その優しさに、圌は小さく笑った。
    「小嚘が生意気だ」


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