9月16日を、ずっと空けている人。
9月16日。
うちの会社では、この日だけは何年先までいっても社長の予定が空いている。
高卒採用の面接解禁日だからだ。
「ぼく来年も再来年も、ずーっとこの日は予定入れないようにしてるんだから!」
そう言う社長を見ていたら、なんだかものすごく大切な人を毎年待っているみたいで、ちょっと可愛かった。

今年もその9月16日がやってきて、高校生の面接をした。
高卒採用は、正直めちゃくちゃ気を使う。
面接で聞いてはいけないことがとにかく多い。本人に責任のないことや、適性・能力とは関係のないことで採否を左右しないためなのだけれど、意識すればするほど、もはや何気ない雑談すらちょっと怖い。
でも、面接をしていていつも思う。
相手が高校生でも、大学生でも、中途採用でも、私が知りたい根本的なところはそんなに変わらない。
この人は、どんな人なんだろう。
何を考えて、何を大事にして、どんなときに頑張れる人なんだろう。
そして私は、高卒で入社する子たちが一番「化ける」と思っている。
18歳で入社したばかりの頃は、本当にまだ子どもだ。
アルバイトをしたことがない子もいる。
昨日まで学校にいて、周りにいたのはせいぜい一つ、二つ年上の先輩たち。それが突然、何十歳も年上の人たちがいる会社に入る。
同期の大卒社員ですら4歳上。
何を話せばいいのか。どこまで自分から行っていいのか。どう振る舞えばいいのか。
たぶん、分からないことだらけだと思う。
最初は緊張して、表情も硬い。
こちらから声をかけなければ、なかなか輪の中に入れなかったりする。
それが、一年くらい経つと全然違う。
笑顔が増えている。
部署の人たちと普通に話している。
何十歳も年上の先輩と自然にやり取りしている。
「この子こんなに喋る子だったっけ」と思うくらい変わっていることもある。
さらに二年、三年と経つと、今度は仕事でも少しずつ一人でできることが増えていく。
そして四年が経つ。
22歳。
新しく大卒の社員が入ってくる年齢になる。
ここが、私は毎回おもしろい。
同い年なのに、全然違って見える。
高校を卒業してから四年間、会社の中でいろいろな年代の人と関わり、仕事を任され、失敗したり、注意されたり、自分で考えたりしてきた22歳。
大学を卒業して、これから初めて社会人になる22歳。
どちらが良いとか、どちらが優れているという話ではない。
ただ、同じ22歳でも、過ごしてきた四年間によってこんなに違うんだ、と驚く。

30歳と34歳なら、見た目だけではほとんど分からない。
40歳と44歳だって、たぶん分からない。
でも、18歳と22歳は全然違う。
たった四年なのに。
この四年間は、人の人生の中でもかなり特殊な時間なのかもしれない。

だから高卒採用の面接をしていると、ときどき不思議な気持ちになる。
今、目の前で緊張しながら一生懸命質問に答えているこの子も、もしここで働くことになったら、一年後にはどんな顔をしているんだろう。
三年後には、誰と笑っているんだろう。
四年後、新しく入ってきた22歳の社員を見ながら、今度は自分が先輩として何かを教えているのかもしれない。
面接の日に見えているその人は、その人のほんの最初の姿でしかない。
採用って、今いる人を選ぶ仕事のように見えるけれど、実際には、まだ見えていないその人の数年後に出会う仕事なのかもしれない。
そう考えると、毎年9月16日の予定をずっと空けている社長が、なんだかますます「誰かを待っている人」に見えてくる。
来年も、再来年も、その先も。
まだ名前も知らない18歳の誰かのために、9月16日は空いている。
