蝉が鳴く夏は、なぜか昔を思い出す。
「ミーン、ミーン……」
朝から聞こえてくる、蝉の声。
夏になると毎年聞いているはずなのに、
なぜでしょうね。
蝉の声を聞いていると、
ふっと昔に戻りたくなる瞬間があります。
子どもの頃の夏。
あの頃は、
夏が暑いことなんて、たいして気にしていませんでした。
むしろ、
「今日は何して遊ぼう」
それだけで一日が始まっていた気がします。
玄関を開ければ、
むわっと押し寄せてくる夏の空気。
道路の向こう側が、
熱でゆらゆら揺れている。
遠くから聞こえる蝉の大合唱。
木陰に入ったときだけ感じる、
少しひんやりした風。
そして、
「いた!」
木の幹に蝉を見つけた瞬間。
虫取り網をそっと近づける。
あと少し。
もう少し。
ところが、
ジジジジジッ‼️
「あっ‼️」
逃げられたꉂ🤣𐤔
そんなことだけで、
本気で悔しがっていました。
今考えれば、
なんて平和な悔しさだったんでしょう。
でも、きっと。
あんな時間こそ、
幸せだったのかもしれません。
夏休みは、なぜあんなに長かったんだろう
子どもの頃の夏休みって、
不思議なくらい長くありませんでしたか?
まだ7月。
まだ8月がある。
そんな感覚だったのに、
大人になってからの夏は、
気づけば過ぎていきます。
仕事をして、
家のことをして、
予定を確認して。
「暑いなぁ……」
なんて言っているうちに、
いつの間にか夕方。
気づけば蝉の声も少なくなって、
「あれ? もう夏終わるの?」
なんて思ったりします。
同じ一日。
同じ24時間なのに。
子どもの頃と大人になった今では、
時間の流れ方が違うように感じます。
蝉の声の向こう側にあるもの
夏の午後。
冷房の効いた部屋で、
何となく外を眺めていると、
蝉が鳴いている。
ミーン、ミーン。
ジージージー。
それを聞いているうちに、
突然、昔の景色が浮かんでくることがあります。
田舎のおばあちゃんの家。
夏休みの学校。
公園。
虫取り網。
自転車。
アイス。
冷たい麦茶。
夕立の匂い。
夕方になると聞こえてきた、
ひぐらしの声。
そして、
「そろそろ帰っておいでー」
遠くから聞こえる誰かの声。
記憶って不思議ですよね。
普段はすっかり忘れているのに、
音ひとつで、
何十年も前の景色が突然よみがえる。
蝉の声は、
そんな記憶の扉を開ける鍵なのかもしれません。
あの頃は、何も持っていなかった
子どもの頃は、
今ほど便利なものを持っていませんでした。
スマホもない。
SNSもない。
動画もない。
それでも、
一本の虫取り網があれば、
半日くらい遊べました。
蝉を一匹捕まえただけで、
「見て‼️見て‼️」
大騒ぎ。
友達と競争したり、
逃げられて笑ったり、
突然の夕立に降られて、
びしょ濡れになりながら走って帰ったり。
何もなかったようで、
実は、
たくさんあったんですよね。
時間があった。
好奇心があった。
寄り道があった。
そして、
「今日」という一日を、
丸ごと楽しむ心があった。
大人になると、夏を急いでしまう
大人になると、
どうしても先のことを考えます。
明日の予定。
来週の仕事。
来月の支払い。
これからの生活。
気づけば、
まだ来てもいない未来のことで、
今日の心をいっぱいにしてしまう。
そんなとき。
少しだけ、
蝉の声を聞いてみるのもいいのかもしれません。
蝉はきっと、
明日の予定なんて考えながら
鳴いているわけじゃない。
ただ、
今日の夏を、
精いっぱい鳴いている。
だからでしょうか。
あの声をぼんやり聞いていると、
「まあ、今日は今日でいいか」
そんな気持ちになることがあります。
夏は、何も言わずに帰ってくる
不思議なものです。
歳を重ねても、
夏になると、
あの頃と同じ蝉が鳴いている。
もちろん、
本当は違う蝉です。
街並みも変わった。
自分も変わった。
会えなくなった人もいる。
なくなった場所だってある。
それでも、
目を閉じて蝉の声を聞けば、
ほんの一瞬だけ、
昔と今がつながる。
ランドセルを置いて、
虫取り網を持って飛び出した自分。
汗だくになって遊んでいた友達。
冷たい麦茶を用意してくれた家族。
夕方のオレンジ色の空。
全部、
なくなったわけじゃないんですよね。
ちゃんと自分の中に残っている。
今年の夏も、少しだけ立ち止まって
毎日忙しく過ごしていると、
夏はただ、
「暑い季節」
になってしまいます。
でも今年は、
ほんの数分だけでもいい。
窓の外の蝉の声を聞いてみませんか。
何もしなくていい。
昔を無理に思い出さなくてもいい。
ただ、
「今年も鳴いてるなぁ」
それだけでいいんです。
もしかしたら、
心の奥にしまっていた夏が、
ひょっこり顔を出すかもしれません。
楽しかった夏。
ちょっと寂しかった夏。
誰かと笑った夏。
もう戻れない夏。
そして、
今ここにある夏。
蝉の声は、
いつか静かになります。
毎年、
気づかないうちに一匹減り、
また一匹減り、
ある朝ふと、
「あれ……静かだな」
そう思う日がやってきます。
その瞬間、
夏が少し遠くなったことに気づくんです。
だからこそ。
うるさいくらい鳴いている今を、
少しだけ大切にしてみたい。
いつか今年の夏だって、
「あの頃はよかったなぁ」
と懐かしく思い出す日が来るのですから。
ミーン、ミーン……。
今日も外では、
蝉が鳴いています。
昔と変わらないような声で。
もし少し疲れているなら、
今日はその声に耳を預けてみてください。
急がなくても大丈夫。
夏は今、
ちゃんとここにあります。
そしてあなたの中にも、
忘れていたあの日の夏が、
きっとまだ残っています。
今年の蝉の声が、
そんな優しい記憶を
ひとつ連れてきてくれますように。🌿
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