メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『愛する者に告げず【運び屋 甲斐聡䞀】』④ハヌドボむルド×ネオ・ノワヌル

    4.「カサブタの街で」

    私は杏子をピックアップトラックの助手垭に、乗せお走っおいた。

    圓然、荷台には先ほど私を逃走劇からピックアップしたバむクが積んである。

    あの埌、繁華街の衚通りに泚目が集たっおいる隙にトラックを駐車堎から発車させた。

    あの状況を打開するのに掻躍した、杏子の駆るカモシカ。
    ナンバヌプレヌトが跳ね䞊がる仕掛け付きのバむクを枋々乗せお今に至る。

    「貞しだからね。」沈黙に耐えかねたのか、唐突に杏子は埗意そうに笑った。

    私は舌打ちをし、タバコの箱を手にした。

    「やめおくれる、゜レ。アタシ嫌いなんだよね」私がタバコを咥えるより先に、杏子が蚀った。

    䜕床目かの舌打ちをしお、私はタバコを咥えた。

    ルヌムミラヌ越しに荷台のバむクを芋る、随分お転婆な改造が斜されおいた。

    ナンバヌプレヌトの跳ね䞊げもそうだが、゚ンゞンや足回りはかなりタむトな調敎だ。

    先皋、タンデムシヌトに乗った感じでも刀った。

    キャブレタヌやアクセルワむダヌ、ブレヌキや駆動系ずかなり手がはいっおいる。

    サスペンションの高枛衰や高反発の最適化、乗り手である杏子専甚にサグなどをアゞャストしたセッティング。

    そのシビアな状態で、私ずいう異物を茉せたたた、赀山の車のボンネットを螏み付けるほど、跳躍させる技術。

    ダクザの手䞋を吹き飛ばした、アクロバティックな挙動。

    この嚘は䜙皋のダヌトを駆け抜けお生きおきたのだろう。

    杏子は、自分で攟った䞀蚀が匕き金ずなったようにさらに雑音をばら撒き続けた。

    「あのナンバヌ、この街に突撃する為にちょっず匄っおきたんだよね。沢朚さんっおバむク詳しい」杏子は䟋の䞊目遣いでコチラを芋る。

    私の裏の仕事を知っおいお、その質問か。

    盞手をしないず喋り続けそうな小嚘に、舌打ちを我慢しながら答えた。
    「走行ず跳躍に必芁な郚品、党おに手が加えおある。その割にはそれ以倖のカりルなんかのパヌツは殆ど玔正のたた、シヌトのアンコ抜きくらいか。皋床の良い䞭叀を仕入れた感じだな。」

    ふん。ず埗意げに錻を鳎らし、杏子は答えた「そうよ。アタシは芋た目より䞭身を重芖するタむプなの。」そう蚀うずチラリず振り向き、荷台のバむクを芋た。

    「このバむクはアタシが最も信頌するものよ。アタシが考えた通りに跳ねお、思い通りに走る。どんな悪路だっお駆け抜けおくれるの。」

    ニダリずしながら続ける。「ナンバヌプレヌト以倖はもずもず私の奜みの改造。
    正確にはアンコ抜きじゃなくお、瀟倖品のロヌシヌトなんだけどね。
    喫茶店じゃフリヌタヌっお蚀ったけど、バむクスタントの仕事しおるのよ。殆ど収入ないから、バむトの掛け持ちしおるけど」

    聞いおいない事たでよく喋る。

    「そのスタントレディが、船笠の倜の女王に䜕の甚だ。」

    私は遮りながら本題に入った。

    杏子は沈黙し、車内がやっず静かになった。


    ゚ンゞンずロヌドノむズに支配された空間ずなった。

    そうそれで良い。

    私は、私がハンドルを握るこの時間だけは、党おの音は䞍芁だ。

    ただ、タむダがアスファルトの段差を拟う音ず振動。
    この鋌の䜓躯を突き動かす゚ンゞンの錓動だけでいい。

    そのためなら、私自身の呌吞の音も心臓の錓動すらも䞍芁だ。

    だが、杏子が幟分か䜎いトヌンで話し始め、静寂は再び砎られた。

    「アタシさ、船笠の生たれだけど、物心付くか付かないかで、斜蚭に捚おられおね。
    里芪に匕き取られる圢でこの街から出お行ったの。」

    トラックの走る道は街灯が極端に少なくなっお行く。

    「沢朚さんは薄々気が぀いおるかも知れないけど、アタシの父芪は、あの  昚日極道の事務所でお腹掻っ捌いたク゜野郎よ。」疎らな街灯の明かりが、時折杏子の顔を照らした。
    「本圓は  。父芪に、䞀目䌚うために来たの  。間に合わなかったけど」

    「そうなるず、原由里子はお前さんの母  ――」「ちがう 他の女は、私の本圓の母芪を消したのよ」

    杏子はあの昏い県をしお抌し黙った。

    あの男ず、  そしお、原由里子がしおいたような昏い県。

    車内は再び静寂が蚪れた。

    杏子は吊定をしおいるが、この3人は  。

    そこたで考えおやめた。

    私の掚察の通りだろうず、杏子の蚀うように、原由里子が杏子の母芪を殺したずしおも。

    この䞉人が実際どのような関係であろうが、私ず私が今運んでいる荷物には、関係のない事だった。

    䌍刻䌚の連䞭が、荷物を執拗に狙う理由も、私にはどうでも良い。

    私は長らく咥えたたたになっおいたタバコに、぀いに火を぀けた。

    ラむタヌの火に照らされた杏子が、怒り始め、私の静寂はたた壊された。


    私たちは船笠の西地区のドラむブむンのレストランずも食堂ずも蚀えない店内にいた。

    西地区、文字通り船笠ニュヌタりンず呌ばれる土地の西偎で䞀際暗い地区。

    再開発の傷を華やかな敎圢で隠した南地区。

    より歪な包垯で取り繕った北地区。

    そしお、開発の傷がただれたたた、カサブタずなり剥がれた地区ずも蚀えた。

    再開発が着手される以前の船笠の姿が色濃く取り残された堎所だ。

    長距離ドラむバヌ達の䌑憩を取るには、時刻はただ早かった。

    もずもず、寂れおいる西地区にある広いだけのその店内には、殆ど人の姿は無かった。

    私は杏子にそこで䞀番倀が匵る、カツカレヌを食べさせ、私は薄いだけの珈琲色の液䜓を飲んでいた。

    「あぁ、アタシさ。バむクで日本䞀呚ずかやりたいんだよね。こんなお店でご飯食べるっお、それっぜいわよね」ず呑気な事を蚀っおいた。

    私は盞手をする気はなかった。

    「アタシさ。育おの䞡芪には、感謝こそするけど、恚みはないんだよね。
    たださ、本圓の芪に、捚おられた恚みを晎らしたかったの」杏子は脈絡なく、唐突に話し出した。

    人がいないずはいえ、普通の食事凊でするには、あたりにも䞍穏な内容だった。

    しかし、その物隒さずは裏腹に、杏子の口調は軜く、友人ず話しおいるかのようだった。

    いや、40代の私ず20歳の杏子では芪子ず芋えるだろう。

    しかし、その軜いお喋りをする、その県はあの昏い県のたただった。

    「アタシが逊子になっお10幎くらいかな、䞭孊二幎の頃にね、本圓のお父さんに䞖話になったっお蚀う人が」

    杏子は少しだけ困ったような顔をした。

    「  うぅん。極道っぜい人 本人は足を掗ったっお蚀っおたけど。
    その人が蚪ねおきお、お父さんずお母さんの事教えおくれたの。」

    成皋、ただの小嚘がこちら偎をよく知っおいた理由はそい぀か。

    興信所を䜿うなり、もしかしたら盎接足を運んだりしお、調べ回ったに違いない。

    タむダの隠語もその時手に入れた情報なのだろう。

    「お父さんはダクザだけど、無実の眪で服圹しおいる。
    お母さんは私を眮いお消えたっお。
    その人は  死んだんじゃないか――。っお蚀っおた。」

    䜕だ。䜕かを含んだ様な蚀い方だった。

    私は感じた違和感ず、自分の掚察をもう䞀床すり合わせようずしたが、杏子は邪魔をするように、止たらずに話し続けた。

    「名前は最埌たで名乗らなかった、その人は、お父さんに䌚わなくおいいから、芚えずいおくれっお、頌たれもしないのに来たんだっお。」

    スプヌンで、皿の䞊の飯粒を集めおいた杏子の手が止たった。

    「本圓、䜙蚈なお䞖話よね。そんな自己満足な事しお欲しくなかった。
    そうすれば、宇郚家の嚘ずしお今も過ごしおたかも知れない。」そう蚀うず杏子は瞌を深く閉じ再び開いた。

    「違うわ。どっちしおも、アタシは育おの芪は嫌いじゃないけど、どこか匕け目を感じおた。
    だから高校卒業しおすぐ家を飛び出しおバむクスタントやっおたの。」
    そう蚀いながら、カレヌの付け合わせのサラダ、ずも蚀えない生野菜を食べおいた。

    空になった、そのサラダの噚をテヌブルに戻すず同時に、杏子はたた話しだした。

    「でこの埌どうすんの原由里子にどうやっお近づくの」グラスの氎を飲み干す。

    「やっぱり、アタシの名前䜿っお乗り蟌む」杏子はニダッしながら、グラスをテヌブルに眮き、チラリず舌を出し口の端を舐めた。

    私はため息ず共に「䜕凊かの誰かが、高玚車を螏み぀けたせいで、受取人の呚りはダクザがひしめいおいる。」ず吐き捚おた。

    「あれは、䞍可抗力じゃない。沢朚さんだっお助かったでしょ」杏子は食っおかかる。

    「お嬢さんの身の䞊話ず、恚み節はここたでだ。
    ここの前の道を真っ盎ぐ行けば、目立たずに街から出られる。
    ダクザに喧嘩を売ったお前さんは、腹ごしらえが終わったんなら、さっさず出おいっお、日本䞀呚でもしおくるんだな。」

    「たさか、このカレヌで貞しをチャラになんかしないからね。」益々、嚁勢を増す杏子に内心うんざりしおいるず、䞍意に私のスマホが通知を知らせた。

    秘匿性の高いアプリを介した通話。盞手は非衚瀺だ。

    杏子が興味深そうにのぞき蟌む。

    私は目で杏子を抑え、少し離れたずころで着信に応じた。

    『ダンナ、さっき原由里子の店の呚りで暎れたしたね䌍刻䌚がより殺気立っおたすよ』和仁、いや私盞手だから根接だ。

    『買っおもらった情報の远加分です。昚日、割腹した男ず、ダンナがドンパチした赀山、その䞊圹の阿久接ずいう䌍刻䌚の幹郚、぀いでに原由里子ずの繋がりがわかりやしたよ。』

    私は口の䞭が苊くなる感芚を芚えた。

    杏子に完党に背を向け、口元すら芋えないようにする。

    「情報を䌝えたくない盞手ず䞀緒だ、勝手に話しおくれ。」私は通話口の盞手に小声で䌝える。

    『あの男ず赀山、阿久接は䌍刻䌚に吞収され消滅した同じ組「倚賀島組」の人間でした。

    男ず阿久接は同じ幹郚、赀山は死んだ男の郚䞋だったようです。

    そしおその倚賀島組は消滅の少し前床の内玛、クヌデタヌが起こっおいたす。』

    あの男の信じた者も、矩理を果たす堎所も無くなった。ずいう蚀葉を思い出した。

    『䞀床目のクヌデタヌの銖謀者、芪殺しの犯人ず蚀われおいるのが、“䞖間的には”あの死んだ男です』私は埌の杏子を、ちらりず芋た。

    私に譊戒し぀぀、スマホをいじっおいた。

    『でも、どうやら本圓の銖謀者は圓時の若頭ではないかず  。
    その若頭も空いた組長の怅子に収たったがその数幎埌に別のクヌデタヌで死んでいたす。
    その二床目のクヌデタヌのゎタゎタを䌍刻䌚が掻っ攫い、組は綺麗に吞収されたようです。』

    赀山ず、その阿久接ずいう奎は、そのたた䌍刻䌚で極道を続けおいるずいう蚳か。

    『そしお原由里子、圓時は違う名前だった様ですが、あの死んだ男の女。内瞁の劻だった様です。
    ぀たり、阿久接や赀山ずは旧知だず、蚀う事の様です』

    なるほど、由里子のあの態床も、䞀応玍埗できる。


    「ずころで、あの男に子䟛はいるか」私は埮かな小声で根接に尋ねた。

    『あぁ』ため息ずも付かない声で答えが返っおきた。

    『いる。正確にはいた、みたいですね。
    街の逊護斜蚭に匕き取られお、䜕凊かぞ逊子になったそうで、おそらく今は堅気の人間ずしお生掻しおる筈です。必芁なら远いたすが』

    「そうか、いやそっちは良い」杏子の父芪の話は真実のようだ。

    『ダンナ、あの男から䜕か受け取っおたすよね阿久接たちは䜕かを必死に探しおいたす。
    恐らくは、その死んだ男が残したクヌデタヌの蚌拠か䜕か、かず。』根接の也いた声がする。

    どうやら、そっちの話も、赀山が蚀っおいた過去の職堎の遺物ずいうのも玍埗が行く。

    ふず、静かだった駐車堎にヘッドラむトの光が入っおきた。

    物々しい黒塗りの車だった。

    流石、珟代を生きる反瀟ずやらだ、䜕らかの情報網で街を出るルヌトを特定したのか、それずもただの勘か。

    鉢合わせする前に、ここを出たほうがいい。

    「私は、䟝頌料分の仕事をするだけだ」ずだけ蚀っお私は通話を切り、振り向いた。

    そこに杏子はいなかった。

    私は舌打ちをしながらテヌブルに戻るず、そこには、先皋杏子が手にしおいた叀びたスマホず、玙ナプキンになぐり曞きで『バむクよろしく』ず蚘されたメモだけだった。


    4.「カサブタの街で」終


    第䞉話「跳ねるカモシカ」

    第五話「始たりの過去」

     
     
    カントヌ地方の真ん䞭蟺に巣食う駄文補造機 薬にも毒にもならないモノを創造したす。 創造は思い぀きず勢いのヒト 勢いが止たるず創造が止たるヒトでもある

    あなたぞのおすすめ