
殺人のない館 ─AI時代の****ゲーム─ 【#プロローグ 自白 ─AI時代の犯人当てゲーム─】 No.2
#プロローグ 自白 ─AI時代の犯人当てゲーム─
「これは簡単なアンケートです。あなたが犯人と思われないためには、館の外に出るか、それとも館の中に居続けるのか、選んでください」
ネイビーカラーのスーツを着た田原編集者が館のスタッフ2名にそう尋ねる。
「いきなり言われても困りますね──ご説明いたします。若手作家たちが創作活動を行う1ヶ月のカンヅメ生活で今日で7日目を迎えました。AI時代の若手作家らがこの館内でAIを使わずに、新作を作るご予定でした。しかし、いくつかトラブルが発生し、あなたたち館のスタッフのうち、どちらかが解雇される可能性があります」
館の男性スタッフ、鹿部代護《しかべだいご》は口を引き締め、館の女性スタッフ、外浦《そとうら》すみかは笑みを止めた。
「それはあなたたちもこの館に居るAI作家ハンターだと疑われているからです。AI作家ハンターはこの館へとやってきたジャッジ役を名乗る人物で、ふつうの作家をAI作家へと決める権限を持っています。世間から見れば公平なる正義の味方ですが、この館に居る作家から見ればとても怖い人物です。この館にいる作家のみなさんはAI作家ハンターと一緒にいる気はありません。そこであなたたちふたりがAI作家ハンターと疑われたとき、この館の中に居て無実を証明しますか? それとも館の外で無実を証明しますか?」
「それは仕事に関係ありますか? 外にいたら減給されますか?」
鹿部からの問いに、田原が答える。
「それはございませんが、この1ヶ月のカンヅメ生活で最後まで居られない可能性があります。このアンケートを通じて、あなたたちの“仕事への誠意”について見せてもらいます」
「わかりました」
「それと、──スマホが見つかりました。AI作家ハンターが仕掛けたスマホです。このスマホでAI作家と思われる人物を撮ることで、作家はこの館から退館できます。恋愛作家のやまもとなおさんが持っていました」
何かが落ちた物音が聞こえ、すみかは手をあげた。
「すいませーん、スマホ落としました。持っててもいいですか?」
すみかのおねがいに、田原が返事する。
「かまいません」
「すいません、スカートが長くて……」
すみかは謝りながらスマホを拾う間に鹿部が田原に尋ねる。
「やまもとさんにスマホが仕掛けられたと言いましたが、ホントですか?」
「ええ、ホントです。『スマホがシーツの中にあった』ことで、やまもとさんは恐怖を感じていました。誰かを撮影しないと自分がAI作家にされると意識していました」
「わかりました。でも、無事スマホが見つかって、みなさんは安心したと思います。あれはヒトを殺す“凶器”です」
鹿部は快く言った。
「ワタシもそう思います」
スマホを見ながらすみかも続けて言った。
「では館のスタッフさん、館の中に居たいか館の外に出たいか、アンケートをおねがいします」
田原が口を閉じると、鹿部は声を出した。
「それでしたら、ぼくは、外にいることで無実を証明します」
「それはどうしてですか?」
田原からの問いに、鹿部はこう答える。
「ぼくは作家さんの気持ちに答えたいと思います。スマホを持っている人間がひとりでも外へ出れば、AI作家ハンターと組んだAIクリエーター暴露系動画投稿者、仮刈《かりかり》の動画を見なくてすみます」
「でも、あなたは仕事をやめることになりますよ」
「ぼくは自分を見つめるために、このバイトをすることにしました。中途応募枠ですが、ここでやめても構わないと思います」
「わかりました」
鹿部は館のスタッフでありながらも館の外に出ることでAI作家ハンターの疑いを晴らそうと示す。
「では、外浦さんはどうでしょうか?」
田原から話を振られたすみかはゆっくりと声をあげた。
「ワタシはこのAIのない館が途中で辞めようと思ったことはありません。たとえ、AI作家ハンターが居たとしても人間の作家さんなら最後まで書きあげることができます。ですから、館のスタッフであるこのワタシも、人間の作家のみなさまにおつかえいたします。ワタシは彼らを無視して外に出ることはありません」
すみかは言葉を続ける。
「──人間の作品が完成するまでワタシも作家もこの館から退去《チェックアウト》することはありません。ここに居られる作家さんが“人間”と認められるまでここから去ってはいけないのです」
すみかは田原編集者にこの館に居ることで自分の仕事に忠義を見せた。
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