第11話 「怪奇、和製英語」
和製英語とは、日本人が独自の意味を英語に添加し転化し天下をとったというか市民権を得たものであるが、元が仏蘭西語であっても和製英語呼ばわりされる時もあり、そんな事で良いのか、和製英語よ、しっかりしろ、と思うこともある。また、元々が英単語であっても余りにデフォルメが酷い所為で違う単語に聞こえてしまって、殆ど駄洒落と化してしまっている単語もある。こういった情けない言葉達の名誉挽回を図るべく、以下に列挙してみたい。
1.「リンクフリー」‥‥ suger-free, duty-free 等から解る様にその意味は「リンク無し」であるが、自由に連結せよという意味なら、link freely の方が自然である。関連事項として、高がリンクを張るが如きに許可を要求する輩が存在するが、web で公開する事の物理的な意味が解っていれば、そんな無意味で恥ずかしい発言は出来ない筈である。閲覧を通して自動生成される bookmark だの cache だのといったファイルには閲覧先の URL が書込まれるのだし、或は自分の手で 〇〇.txt という file に HTML 形式でメモっておくのも自由である。でもって mv ○○.txt ○○.html とやってしまうと、あーら不思議。許可なくリンクを張って仕舞えちゃったりする。
2.「マシーン」‥‥ サーバーや端末を指す場合が多いが、矢張り、がちゃがちゃ音をたてて動く機械にこそ、この言葉は相応しい。昔のコンピューターなら兎も角も、昨今の物は静かな家電機器であって machine のイメージからは程遠い。ミシンの語源である。マシンが訛ったものであるが、現在となってはどう考えても駄洒落である。言葉は生き物と呼ばれる所以である。
3.「サービス」‥‥和製英語の四番打者。英語の「出す」が原義であるが、日本語では無償奉仕や無料品を示す。実は面白いことに韓国人も同じ意味で用いる。卓球やバレーボール等では原義に忠実にサーブと言うくせに、名詞になると扱いが変ってくるのだから困ったものである。
4.「リュックサック」‥‥獨逸語である。NHK の英語講師によると英語ではラックサック(rucksack)と云うらしい。然し、これは見るからに獨逸語ではないか。ウムラウトが脱落して訛ってしまっているけれど。リュックの英語は back であるから、矢張り英語は backpack と言うべきかと思う。
5.「ハンバーグ」‥‥五月蝿い事を言えば、これも獨逸語である。獨逸ではその土地の名物には、地名+erで呼ぶ慣わしがあり、Hamburger は漢堡(ハンブルグ)名物の挽肉ステーキである。言うまでも無く、これをパンに狭んだ物がハンバーガーの源である。同様なものに Frankfurter がある。
6.「クレパス」‥‥商標である。クレヨンが一般名詞。粘土を紙に塗る様な筆感から clay + on かと思ったら、実は crayon と綴ったりする。而も、蜊蛄が crayfish であるから、cray には泥のイメージが憑き纏って、かなりややこしい。ホッチキスと stapler の関係も有名である。
7.「オクラ」‥‥オクラホマの略でもお蔵入りの略でもない。野菜の一つとして知られるが日本語ではない。okra と綴る舶来物である。筆者はコペンハーゲンの埃及(エジプト)料理店でメニューに okra と書いてあったのを見て、一体何だろうと思って注文したら、本当にオクラ料理が出て来て吃驚した経験がある。埃及が原産か? 論旨に影響はないのでそういう事にしておく。旨かった。
8.「フレー」‥‥振れ、振れ、白組、とかいうあれである。hooray とか hurray とか hurrah とか綴る。綴りが一定でないのは音声を真似て綴っているからである。という事は矢張り「振れ」が元祖なのか。堂堂回りである。似た様なものに、大君(tycoon)、颱風 (typhoon)がある。ええとそれから、大砲は tyho…。んな訳ないか。
9.「エールを送る」‥‥応援に関連してもう一つ、叫び声の yell である。「いぇる」であって「えーる」ではない。同じエールでも、ale とか ö l(öは o umlaut)とか øl(ø は o slash)と綴ると別な物になる。因にこちらは英語ではない。北欧系言語である。ええ定食の失敗作がビー定食であるのと同じ様に、ええルの出来損い、則ちビールを意味する。この場合は、エールを「贈る」という具合に使用する。
10.「フリーズ」‥‥プリーズではない。freeze!である。間違えると大変な事になる。これを知らない為に日本人少年が射殺された事件は有名である。しかし相手を良く見ることだ。相手は銃の代わりにヘアドライヤーを持って構えているかもしれない。この場合は射たないでくれといいながら何か適当なアクションを添えて、相手の呆けに応える寛容さを忘れてはならない。
11.「ハムサンド」‥‥間違えると大変な言葉。ハムサンドを頬張りながら「はみさーぃど」などと言って屍体の側でくるくる廻って踊っていたりすると、殺人犯にされてしまうので注意せねばならない。その通り。hamsand と homicide は米国産の駄洒落である。
12.「シャムソーセージ」‥‥駄洒落をもう一つ。sham 双生児。sham とは偽物という意味で、双生児が完全に分離せずにくっついて生れてきたものを称してこう呼ぶ。全部日本語に翻訳して擬双生児とすれば良いものを、音がハムソーセージに似ているのでそれが残ったとする説がある。一体どこが駄洒落だって? 本当は Siamese twins というからである。
13.「オーデコロン」‥‥ Eau de Cologne 仏蘭西語である。コロンの水という意味。コロンとは日本ではケルンと呼ばれる獨逸の都市 Köln である。コロン産の香水をナポレオンが持ち帰り、その匂いに感銘し、命の水と称したのが始まりであるらしい。鶯の糞から香水を作ると聞くからといって、コロンを colon(結腸)だと思うといけない。大変な臭いになってしまう。
嗚呼、Eau de colon …
以上の様に和製英語と駄洒落は紙一重であり、其の使用方法を正しく理解しておかないと、大変危険なものもあるので注意されたい。中には単なる駄洒落も混じっている様に見受けられるが、それは多分あなたの気の所為である。最後に、本稿が皆さんの駄洒落、否、和製英語発掘のお役に立てれば、筆者の喜びこの上ない。
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