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第133話 「初めての作文」

    娘が満一歳を迎えた。とても可愛い。凄く可愛い。ぶちゅぶちゅしてぐりぐりしてほげほげして思いっきり抱きしめてウルトラバックブリーカーをかましたいくらいに可愛いのである。勿論そんなことをしたら死んでしまうから絶対に出来ないのであるが、その葛藤たるや凄まじいものである。そこで天井にぶつからない程度に垂直に放り上げて受け止めてやることにしているのだが、これがとても嬉しそうにする。天井にぶつかってもいいくらいに思いっきり放り投げてみたい衝動に駆られるが、これまたその葛藤を押さえ込むのに相当な精神力がいる。

    そのお陰で精神力がついたとはいわないが、体力がついたように思う。体重も10キロ減った。丸で私の体重を吸い取っているかの如く娘の体重がどんどん増えていくのだから堪らない。最初は片手でも楽に持てるほどの大きさで、手足もちっちゃくてガッツ石松みたいだったのに、1年経った今ではすっかり人間らしくなって直立歩行をするし、自分で物を食べるし、首輪を自分で掛けるし、私が読み上げるよりも早く自分で本を捲るし、私の携帯電話から実家に電話を掛けるし、留守電を再生するし、テレビやエアコンや電燈を点けたり消したり、財布から一万円札を抜き取るし、もうすっかり一人前の大人と同じことを行い、携帯の諸機能を私よりも使いこなす割には、パパ、ママ、以外には大平元首相よろしく「あーうー」としか言わないのだから、莫迦なのか賢いのかよく分からjmlkkkkkkkkkkんんんんんんんんんんんbZnnん。、、、j:hgljンjh。
    ンンンンンンンンンンン;;;ぉい:お;p・。

    あ、こら。ちょっと用を足している間にこうなのだから全く目が離せない。足りない頭脳で続きを書いてくれたのは感謝するが、最後の「ぉい」って突っ込みかよ。

    父から聞くところによると、私も幼い頃は10箇月で勝手に走り出し、溝に落ちても泣く素振りすら見せず、平然と己のうんちを口に運んでいたらしく、根心が据わっているだとかマラソン選手になるだとか散々期待されたのだが、頭の打ち所が悪かった所為かその後の成長が人並み程度に抑えられてしまって、今では普通の人である。というかもっと前から普通だけれど。

    尤も、親というものは初めて目の当たりにする子供の成長に一喜一憂するのは自然なことだが、将来の結果に対する決定的な要因とならない限りは、所詮、一二箇月程度の成長速度の差というものは消えていく誤差の範囲内である。道程が長ければ長いほど初期の優位性が薄まる訳だが、それは丁度、発ち上がりは異常に速いが次第に失速していく何処ぞのマラソンランナーの如きである。偶にそのままゴールまで突っ切る者もいるけれど。

    兎も角、我が子の成長ぶりを観察するのは楽しいもので、掛け替えのない;¥lぴl、、、、、、ごpll¥mmmmbンb」0l¥^−−−−−−;;;;@@k尾:mml、
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    なんだなんだ今度は割り込みか。どうやら半角変換や漢字変換ができるようになったらしい。内容はちょっと不明であるが、練習熱心なのは歓迎である。でもそんなにビシバシ叩かなくてもいいじゃないか。

    考えてみれば我が子は確かに練習熱心である。生後三箇月を迎える頃である。俯せになるために懸命に体を捻らせるのだが、これがうまく行かず真直ぐ縦に寝かせておいて30分後に様子を覗くと、何故か時計回りに90度回転して9時15分の体勢で眠っており、更に30分後に覗くと最初とは逆さまの6時の体勢で眠っており、吃驚することにその1時間後には最初の位置に戻っているというのだから、なんとも涙ぐましい限りである。途中を観ていないと寝相がいいのか悪いのかよく分からないけど。

    然し、集中力に欠けるのか、キーボードを矢鱈滅多に叩く、否否、作文している最中にも、光るものには興味をそそられるようで、銀色の電源ボタンは特にご執心らしい。そうそう。そのボタンを押すと電源が落ちるんだよ。君には未だそんな力はないだろうけどね。ブーン。グギギ…。て、おいおい。落ちちゃったじゃないか。起動してみればどうやら一時停止状態になっただけで助かった模様だが、それにしてもそんな高等技を一体どうやったのだか想像すらつかないのである。そして、作文中のファイルには又もや奇怪な文字列が並んで、否否、文章が目に飛び込む。

    ¥・¥ブウウウウウウウウウウウsssvsssssssssssssssxcccccccrあaaaaaaaaaaaaarRRazz^/c /y6ggggg

    作成中と見受けられる句点定まらぬ文章だが、注意深く解読すれば「ブウウーン、シュワアアー、グギギ」と音をたてながら電源が落ちていく様を表しているではないか。満一歳にしてここまで書けるのはちょっと凄いかも知れぬ。

    よくよく思い出してみれば、豊かな表現力は生活場面の随所に現われているような気がする。片手だけ壁に掴まって「うー、うー」とか「んは、ふん」とか言ってうんこをするし、抛っておくと追っ掛けて来て同じ体勢に持ち込み「ふーん、ふーん、ふーん」と言っておむつを替えてくれと主張するし、屁を放いては「うきゃきゃきゃ」と喜ぶし。そして「おおおー」と言えば…、て、その手に何を握っているのだ。万札じゃないか。こらこら。全く油断も隙もなく、処狭しの我が家では中々他事に専念することは難しくある。

    いつまで上に放り投げて受け止めて遣れるのか。血糖値もコレステロールも危険水準に迫った内臓脂肪型の老体を改善しなければ、娘との限られた時間を健康的に躍動的に過ごすことはかなり難しそうである。最早、腹筋千回とヒンズースクワット千回と腕立伏せ五百回のビデオを観てから鼻毛を抜いている程度では、流石に間に合わなくなって来たらしい。さーて、作文の仕上がりをブラウザで確認とするか。

    あれ、文字サイズがいつもより小さくなっているではないか。キーの乱打のみでこんな高等技までこなすとは。全くもって侮れない。

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    142話までは「パブロフの屁」(ぱりぱり噛めん:Parikame) のテキスト復刻版です。見出し形式「第○○話」がテキスト本編、「no.○○」が対応するダイジェスト図解版です。ご贔屓いただけると新作公開の励みになりますのでよろしくお願いいたします。え?頑張らなくていい……ですか

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