第30話 「コピペのススメ」
外国での和文書作成には、日本語OS塔載の自分専用端末を所有していないと結構不自由するものである。職場の共用端末では勝手に日本語OSをインストールする訳にもいかず、英語を解さない友人知人関係者とのメイル交換やら、本国への和文書提出やら、日本語掲示板への書込みだとか、雑文を書いて発表するだとか、日本語を要求される状況はかなりある。フォントに困ったものである。
だがその苦労もこの数年間のことで、今では私も自分専用の日本語塔載機をゲットして随分と快適になった。欲を言えば個室にして、専用美人秘書を設けて、余り働かず、世界各地を漫遊して暮しても余りある程の金銀財宝が欲しいところだが今回は我慢する事にして、地道に日本語OSでない場合の対策を考えてみたい。
最初に問題点を整理しておく。まずはメイルである。日本語メイルを読む事自体はブラウザの文字コード解読機能を利用すれば良いのだが、逆に日本語メイルを自ら書いて送信するには難がある。最近では、日本語環境やらフォントが無くても日本語メイルが読み書き出来てしまうウェブメイルもあったりするが、文字画像のやりとりである為にテキストベースへの変換が極めて困難であり、こんなものでHTMLやTEXファイルなどの原稿を作成しても仕様がない。メイルでは最悪、半角羅馬字での遣り取りが現実的な策となる。
同様に掲示板や登録フォームへの書き込みも不自由するのだが、問題は更に顕著となる。仮に半角羅馬字で書き込んだとしても大抵の登録フォームの場合、何と怪しからん事に全角入力を要求してくるのである。更に、日本語ブラウザでないとフォームのオプション選択肢は当然の如く文字化けするのであり、英語若しくは羅馬字表記でない限りそのままでは為す術もない。私が時々英語を使用したりするのは、そういう不便さへの鬱憤が理由であったりする。然し、フォントにどうしようも無いかというと実はそうでもなく、登録頁のソースコードを解読して該当箇所の選択肢をクリックすればよい。だがこれもソースが読めない場合は諦めるしかない。
以上、どうやら全ての問題は如何に全角文字を入力するかの一点に集約されそうである。というか最初からそうなのだがこれさえクリアーすれば、メイルを書いたり、家頁を開設したり、色んな登録フォームへの日本語の書き込みや、エッチな通販への申込が出来るのである。フォントに薔薇色である。そこで、薔薇色の世界へと踏み出して行く為の秘策をここに伝授しようと思う。その方法とはコピー&ペーストである。コピペちゃん。それは欲しい文字を求めて電網世界を探訪し、新聞雑誌から雑文に至るまで凡る文章サイトを徘徊しまくる力技である。なので、やたら時間がかかる。短いメイルも一日掛かりで作成だが、確実に書ける事に狂喜乱舞する貴方にとってそんなのは些細な事である。
然し、万能に見えるコピペちゃんにも全く問題が無い訳ではなく、フォームへの書込みに於ては少々我慢せねばならぬ事がある。上手く貼り付いた(或いは貼り付いてない)と見えても文字は当然化けているので、送信後の表示を見るまで結果は全く判らないし、表示を見て一部が欠けていて落胆する事もあるし、作業の途中で目に見えない改行コードを一緒にコピーしてしまってあとちょっとという時にブラウザが落ちてしまってやり直しという事もよくあるし、挙げ句の果てには全く貼り付かない場合もある。こういった場合、誰かに依頼して投稿してもらうより他にない。
兎も角もメイルの草稿であるとか単にテキストの編集であれば、そういった問題はない訳で、コピペを駆使してメイルを書いたり出来るのである。バラバラにコピーしてきてもブラウザのコード設定機能を使えばコードは統一されるし、あとは如何に文字を探してくるかにかかっている。だが、欲しい言葉や文字がどうしても見付からなくて、面白くもない雑文を隅から隅まで何度も何度も読み返して貴方の忍耐も限界、もう駄目だ、という時もあるので以下に例文と共に対策ポイントを挙げておく。
其の一、意味の近い言葉で近似すへし。但し、非礼にならぬ樣に成る可く平仮名の使用は避けられたし。
川村大先公樣
近況速報です。大先公樣の助力にて大変良好な結果、取得せり。有難き幸せに候。またよろぴくお願いです。稚拙な文で御免候。
かなり頑張った跡が見られるが如何せん、あと一文字「生」または「せ」が見付かれば恩師川村先生の逆鱗に触れる事もなかったであろう。大と様で挟めば良いというものではない。しかしこれはまだましである。欲しい仮名さえ中々見付からない場合もある。
其の二、記号や片仮名を活用すへし。但し、濫用は慎むへし。
皮ムラ先生え。
近呪ホウ告デス。先生の助言のお影でト〒モ◎な結果をL事がデキ、大感謝祭デス。マタ宜く願いシマス。辺な文面デ住マセン。
何だか新聞切り抜きの脅迫状の樣でもある。況の字が呪になってるし。ヤバイものが来たと思って読まれずに無視されてしまう可能性大である。結びがスマンに見えて何だか失礼だし「皮ムラ」という表現も逆鱗に触れそうである。嗚呼、皮ムラ先生。御免なさい。
其の三、視覚的に近い文字で近似すへし。これには、力(ちから)を「カ」と読ませたり、数字の二を「ニ」と読ませたり、「イ」を人偏としたり、「ヌ」を「ス」と読ませたりする技術が要求される。
川木寸先生へ。
近况報吉です。先生のアドバイヌのお景彡で太恋良い糸吉果を得る事が出来まレた。有リ勤ふございまレた。又よろレくお原頁いレます。言売み肉くてすみません。
かなりいい線を行っているが、最後の肉が惜しい。
それで、こんな時にはコピペの友でもあれば作業は迅速且つ円滑に進むと思うのである。
【前を読む】 【目次へ戻る】 【次を読む】