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第40話 「芸夢奇声」

    金が無くて流石に西欧大陸からでは二の足を踏んだ帰省も、韓国からなら格安なので早速年末に帰ってみる事にした。そうはいっても低収入の私には堪えるので頻繁にとは行かないし、御敗けに巨大な組織が背後に暗躍する特酒法人日本育米会なる団体に負債がある。返済は堪えるのでそろそろ勘弁して欲しいのだが、ん、待てよ、自己破産ならチャラになるのか?なーんて馬鹿な事を考えている場合ではない。ファイアーエムブレム紋章の謎を終らせるという情け無い目的の為に帰らねばならないのである。

    今、古いと思ったあなたは甘い。もっと凄い事に、ゲームを始めてから6年も経つにも拘らず未だにクリア出来ていないという経緯がある。どうしてそんなに時間が掛るかというと、唯でさえ帰省回数が少ない上に、ゲーム中にフリーズしてメモリが消滅するという凄惨な事故が過去に二度もあったからである。二度ある事は三度笠。期待に違わず案の定、今回も飛んでしまって悔しいのでゲーム仕立てで紛れてみるのである。

    まずは序章、進撃の巻。航空権利書の予約手配が此の章の目的である。構内の松林の外れに位置する旅行代理店に行く。好運にも英語を話すスタッフがいて予約自体はあっさり終了。先ずは「知性が1あがった」というところである。然し、航空権利の書を実際に手にするのはフライトの一週間前で、値段もその時にならないと判らないという。なんだそれは。「技が1さがった」ような微妙ながっかり感があるが、フライト情報の書を入手して第一章クリアとする。だがこれにターミナル番号が記されていない事が後で仇となる。西欧ではターミナル番号も提供するのが常識であり、この点は日本の大手代理店も見習われたい。

    次なる章は、再入国魔法の巻。再入国許可を取得する事が此の章の目的である。店で買物をするだけなのでここは樂勝であるが、唯、電車を乗り継いで外国人登録の店まで出掛けるのがとっても面倒臭いという難関が待っている。この魔法は使用一回きりの物が3万ゴールド。5万ゴールド払えば何度でも使える。二回使うだけで既にお得なので、5万ゴールド払ってクリアする。因みにこの魔法書の有効期間は外人登録証のそれと同じなので、外人登録完了即日に取得すればお得である。技が1あがった。

    第三章、飛龍の鞭の謎。此の章の目的は航空権利の書を入手する事である。これがないと飛龍に乗る事が出来ないのである。だが折角予約した先から親切な上司の茶々が入る。知人から安い航空券を取ってやるから日程を教えろと言うではないか。え゛、今更そんな事を言っても遅いのである。どうせ安いと言ったって1万ゴールド自体が安いのだし、結局無視する事に決め込む。すまん、金臾梅。そしてフライト一週間前、構内竹林の外れにある旅行代理店からきっちり電話が入り、38万ゴールドと引換えに航空権利の書をゲットする。これでも十分に安い。え、先刻は松林の外れだったじゃないかだって?それは松林の南外れは竹林の東外れと同じだからである。それはそうと券面には往復共に予約状況 OK の記載があるにも拘らず、店員がオープンチケットだと宣うのが謎である。これまでに24回も国際線に乗ってそんな奇妙な事を言われたのは初めてであるが、まあ良い。規則が変ったのやも知れぬ。とりあえず無視する。運が1あがった。

    第四章、贋札疑惑の巻。此の章の目的は円を購入する事である。負債を返す為にも多めに必要なので400万ゴールドを換金する。全部札束だと壱万ゴールド札で400枚、67糎もの厚さになる。そんなモノを構内梅林の外れという展開ではなくて構外の両替商へ持ち込むのも物騒なので、半分だけ小切手に変換してから、残りは別口で後日両替する事を目論む。だが小切手といえば聞こえは良いが10万ゴールド分が20枚。それを一枚一枚裏書するのだからもう大変。万札たったの20枚を手に入れるのにここまで苦労するとは豈に図らんや。而も己の金である。万札たったの20枚という感覚もどうかと思うが扨措いて、購入した万札はクシャクシャになったものもあり贋札だったらどうしようかと不安になる。どうしてクシャクシャかというと、韓国民の中には札をクシャッとポッケに突っ込む乱暴者が多いからである。実際、韓国でピン札を拝んだ例など滅多になく、大抵端が折れていたりするのである。後日、残りの半分は現金で両替商人に手渡すが、これまた「ワオッ」と言われて当惑したのは言うまでもない。

    いよいよ最終章、金甫城の攻防である。搭乗時間に間に合うか。実はこれが一番の不安材料であったりする。攻略本によると2番ターミナルとあったので迷わず其処を目指すが、これが裏目に出る。目指す航空会社のカウンターが探せど探せど見当らないので一番綺麗そうな案内係のお姉さんに尋くと、1番ターミナルとの返答。がーん。出発まで20分しかないではないか。1番ターミナルに行く迄には、2番ターミナルまで来た5分許りの途を戻って、同じ距離だけ遣り直しだから10分はかかる。どう考えても相当やばい。一番綺麗そうなお姉さんを探している場合ではなかったとか、こんな事なら空港のホムぺで調べておくべきだったとか、高階テンソルばりに後悔の念が過り、夢中で走ってなんとか搭乗手続きを済ませると残りタイムは13分。急いで出国ゲイトへと走り、並んで順番を待つ。

    だが出国税1万ゴールド券を確り買い忘れて門前払いを食らい、再度並んでゲイト通過は9分前。出国審査でも出国カード書き忘れの門前払いで、またもや二度並びの極刑に処せられる。むう。ここで時間を取られる訳には行かぬ。勇者オグマの必殺の一撃が出た。どりゃあ。周りにいたお姉ちゃん達も吃驚仰天、一気呵成の醜文字速攻殴り書き。出国カードを記入して審査終了が7分前。搭乗口が直ぐ近くだったのが超幸いして5分前に辷り込みセーフ。見事な機動力である。汗だくになり乍ら座席に着くと、経済級最前列右側席。最後に搭乗手続きの栄冠を果した勇者だけが座れる選ばれた席である。ふふふ、してやったり。こんなに熱い冷汗をかいたのは初めてである。ハッキリ言って馬鹿である。

    色々障害があったが、全章目出度くクリアして一件落着。後は野となれ山となれ、これで飛行機が落ちても安心である。安心じゃないって。

    戸締りはしたし、水蒸気のバルブは固く締めてきたし、忘れ物もないし。ん、忘れ物?

    ああああ。家賃を払ってくるのを忘れて仕舞ったよ。リセットか。

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    142話までは「パブロフの屁」(ぱりぱり噛めん:Parikame) のテキスト復刻版です。見出し形式「第○○話」がテキスト本編、「no.○○」が対応するダイジェスト図解版です。ご贔屓いただけると新作公開の励みになりますのでよろしくお願いいたします。え?頑張らなくていい……ですか

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