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【高田馬場⑫】ぼんやり【連作短編】

    あれからもう1週間。

    けど…彼の隠しきれない寂しそうな顔。
    別れ際に言われた「ごめんなさい」

    どう向き合っていいのか、まだわからない

    …

    「天気いいなぁ」

    当たり前だった何もしない休日。
    ボーっとしてると午前中の時間が溶けた。

    「プリン…おいしかったな」

    先週、帰りにもらったプリン。
    食べた時は味なんてわかんなかった。

    なのに バニラの香り。舌触り。
    濃厚な甘さとカラメルのほろ苦さ。
    不思議と記憶にある。

    「買いに行こうかな?」

    先週見つけた、あの住宅街のケーキ屋。
    お姉さんの声も聞きたいし。

    スマホと財布を鏡の横において
    少し時間をかけてメイクをはじめた。

    …

    「よし。かわいい」

    鏡の中の女の子にそう言って、
    精一杯の笑顔を作る。

    外に出る時の扉は…大丈夫。
    重くない。



    箱根山通りは緑が多くて
    空気がヒンヤリして気持ちいい。

    人通りも少ない。

    歩道にはみ出して咲いてるタンポポは
    きっと私しか知らない。

    たった一日歩いただけなのに、
    もうここは私の場所だ。


    落ちてる空缶を拾う。
    確か、T字路にコンビニあったな…。

    「この季節はアイスコーヒーだよ。絶対に」

    聞く相手のいない言葉を呟いて、
    口元がほころぶ。

    コンビニでコーヒーを買う時
    「ありがとう」って声をかけたら
    褐色の肌がきれいな子が微笑んでくれた。

    言葉も違う異国で暮らすって寂しくないのかな?

    そんな事に気を取られながら
    ケーキ屋のあった道へ…

    少しだけ入り組んだ住宅街は
    耳を澄ますと子供の声が聞こえた。

    「公園でプリン食べてる時、子供に絡まれるかな?」

    なんて考えると少し楽しい…あっ

     
    【本日臨時休業】


    …噓でしょ…お姉さん。

    唇が記憶してる
    プリンの滑らかさと香りが
    はらりと崩れる。

    「帰るのもなぁ」 

    飲むのを我慢してたアイスコーヒーを口に含む。
    いつも感じない苦さが広がった。

    何となく振り返って歩き始める。
    多分、早稲田通りのどこかに出る道。どこでもいいや。

    「あっ…」

    気づけば正面にサントクスーパー。

    …そりゃそうだ。
    無自覚に歩いてるフリをしてたんだから。

    思ってた。ずっと。

    もしも2人に偶然…

    …

    心音が聞こえる。

    私のだ。

    氷が溶け切ったアイスコーヒーを飲みきる。

    もうすぐだ…大丈夫。

    …


    赤い提灯に『子育地蔵尊』の文字。
    大通りに面してるのに、静かで不思議な場所。

    …誰もいない。

    「まっ、そうだよね」

    けど…ちょっと残念。

    今日、肩透かし多いな…

    ふぅ。

    …


    「どっかいいお店ないかな…」


    それぞれの悩み方

    凹むきっかけ






















     
     
    はじめまして。 音楽や本、人や言葉に触れて、残ったものを書いています。 拙いですが、何かが残ればいいかなと よろしくお願いします。

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