
潮が引くように|第四話 仕事はできるらしい
岡田から最初に依頼されたのは、広告のデザインだった。
チラシと言えばチラシなのだけど、私の感覚では広告に近かった。
外注の話は思ったより早く進んだ。
資料もあった。
ラフもあった。
校正指示も分かりやすかった。
正直、少し拍子抜けした。
もっと適当な人だと思っていたからだ。
初めて会った時の印象は、イケメンだけどイカつい人だった。
LINEは1文字ずつ送られてくる。
通話は雑談ばかり。
距離感も独特だった。
だから仕事も勢いで進めるタイプなのかと思っていた。
でも違った。
仕事の話になると、どこにでもいるような社会人対応だった。
必要な資料が送られてくる。
こちらが作る。
校正がくる。
やり取りは驚くほど普通だった。
校正も分かりやすかった。
ここをこうしてほしい。
ここはこのままで良い。
説明は短かったが、何を求めているのかは伝わった。
会社の仕事を終えて帰宅する。
夕飯を済ませる。
それから外注の仕事を始める。
当時はそんな生活だった。
報酬も悪くなかった。
むしろ良かった。
副業として考えれば十分だったと思う。
だから続ける理由があった。
ただ、不思議だった。
岡田は起業すると言っていた。
独立して会社をやると言っていた。
でも私は、彼のデザインを見ても、
そこまで凄い人には見えなかった。
もちろん、私より下だと思ったわけではない。
ただ、独立するほどの技術がある人なのだろうか。
デザインが飛び抜けているわけでもない。
強みというのがどこなのか分からない。
営業だろうか。
人脈だろうか。
それとも別の何かだろうか。
よく分からなかった。
変な人。
面白い人。
仕事はできるらしい人。
そのくらいの認識だった。
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