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ダークダンス 第1話「過去」

    ―ヒーローと、怪人と。そして、わたしたちの、物語―



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    『ダークダンス』全話まとめ|大人のためのヒーロー巨編



    あらすじ


    正義のヒーロー・ボディネーションこと田代大人と、街を恐怖に陥れる怪人ダークダンスは、落雷によって互いの姿が入れ替わってしまう。

    怪人として恐れられる田代と、ヒーローとして崇められるダークダンス。
    二人はそれぞれの姿で、これまで見えなかった世界に触れていく。

    時は流れ、かつてボディネーションに憧れた少年・大楠義治は、あらゆる支払いから目をそらす冴えない大人になっていた。
    そんな彼は、国民の声を力に変える新たなスーツをまとい、二代目ボディネーションになるよう求められる。

    ヒーローと怪人、過去と現在。シリアスと滑稽の間を行き来しながら、物語はやがてひとつの戦いへ向かっていく。



    登場人物


    ◆ 過去

    田代大人(たしろ・だいじん)
    悪と戦うヒーロー、ボディネーション。

    ヨシハル(12)
    ボディネーションに憧れる少年。

    ダークダンス
    街を恐怖に陥れる怪人。(セリフ表記DD)

    アヤコ(7)
    街の闇に暮らす少女。ボディネーションを憎んでいる。

    グーラン
    街の闇に暮らす女。

    吉岡
    帝国病院の看護婦。

    安岡
    青年剣士。一子相伝の剣術『光影流』の使い手。

    ◆ 現在

    大楠義治(36)
    ヨシハル少年の成長した姿。あらゆる支払いから目をそらす日々を送っている。

    マチ(13)
    大楠の娘。父である大楠を「この人」と呼ぶ。

    志ず子
    学生。ボディネーションについて調べている。

    小池麗香
    大衆紙の記者。大楠の幼なじみ。

    荻野目
    国民防衛対策室室長。『プロジェクトボディネーション』を主導する。

    榊
    国民防衛対策室室長補佐。

    ヤブ
    フェンスの外に住む医者。

    シマ
    フェンスの外の住人。

    ◆ その他

    まとうもの・街の人々・警官・怪人など

    読む前に


    本作は、舞台脚本形式で書かれたエンタメ原作です。
    照明・音響・身体表現の指示も含め、舞台脚本の形のまま掲載していますが、漫画・アニメ・映像作品としての展開を想定しています。




    本編



    序


    暗転。

    少女の鼻歌『闇の子守り歌』が聞こえる。

    やがて、うす明かりの中に、ヒーローと少年のシルエットが浮かび上がる。

    ヒーローは、少年の頭に手をのせている。

     

    少年 俺がヒーローになるまで、街を守って。

     

    少年、首から下げていたお守りをヒーローに渡す。

     

    ヒーロー これは?

    少年 お守りだよ。

    ヒーロー ありがとう。じゃあ……これを君に。

     

    ヒーロー、自らのペンダントを外し、少年に渡す。

     

    少年 いいの?

    ヒーロー 持ってて。

     

    少年、ペンダントを握りしめる。

    暗転。

    夜が明けるように明かりが入って来ると、

    いつかの「今」から遡ること二十余年。

    どこかの国の首都トーキョー。

    街の一角。

    路の端には鼻歌を歌う一人の少女(アヤコ)が座っている。

    やがて休日の昼下がり。行き交う人々。

    車の音、大型ビジョンの音など、賑々しい雰囲気。

    そこへ、母に連れられたヨシハル少年がやって来る。

    通行人の一人、女1がヨシハルのもとへ駆け寄り、

     

    女1 ヨシハル君?

    ヨシハル そうだけど。

    女1 (嬌声をあげ)あー!やっぱりヨシハル君だー!やばいほんものだー!えー!かわいいー!

     

    女1、ヨシハルの首元を指し、

     

    女1 え、え、それ、あれ?あれ?

    ヨシハル そうだよ。

     

    ヨシハル、つけているペンダントを襟元から出す。

     

    女1 うわー!すごーいほんものだー!うわー!え、え、さわってもいい?

    ヨシハル いい――

    女1 (ペンダントをつかみ)うわー、えー!すごー!!

    ヨシハル ……(母に)俺こいつ無理かも。

    母 こら!

    女1 すごーい。(母に)あ、あたしすっごいボディネーションのファンなんですよー!

    母 はあ。

    女1 ヨシハル君がヒーローになったら、ヨシハル君のことも応援するからね!

    ヨシハル ありがと。

    女1 握手してもらっていい?

    ヨシハル やだ。

    女1 (手を握り)ありがとー!

    ヨシハル ……。

     

    女1、ヨシハルの手に絆創膏を発見する。

    ヨシハルは顔にも絆創膏をしている。

     

    女1 あれ。絆創膏いっぱいだね。どうしたの?

    ヨシハル 別に。

    母 この子しょっちゅうケンカして帰って来るんです。

    女1 あー、ヒーローがケンカしちゃダメじゃん!

    ヨシハル ケンカじゃねーよ!弱いもんいじめする奴らぶっ飛ばしてるだけだ!

    女1 うわーたのもしー!

     

    などとやっていると空がにわかに黒雲につつまれ、雷鳴。

     

    母 あら。

    女1 さっきまで晴れてたのに。

     

    つづいて離れたところから悲鳴。

    舞台下手側から、どやどやと人が逃げてくる。

     

    男1 逃げろ!ダークダンスだ!

    女1 うそ!え、やだ。

     

    「怪人だ」「ダークダンスだ」などと言いながら、逃げてゆく人々。

    女1も逃げる。

    混乱の中、アヤコは皆が逃げて来た方へと歩いてゆく。

     

    母 ヨシハル!

     

    母、ヨシハルと逃げようとする。

     

    ヨシハル 大丈夫だよ!ボディネーションが来て、すぐやっつけてくれるよ!

    母 何言ってるの!早く!

     

    母、ヨシハルの手を引き、逃げてゆく。

     

    ヨシハル ボディネーショーーン!!

     

    と言いつつ袖へ。

    雷。

    照明変化。

    音楽。

    銃を構えて後ずさりしてくる警官。

    つづいてダークダンスが登場。

    その周囲には、まとうものたち――人とも獣ともつかぬ、形をたえず変えつづける闇のようなもの――が、ダークダンスの体内から沸き上がり、まとわりつくようにうごめいている。

    それらはダークダンスの一部のようでもあり、ダークダンスの身体に棲みついた、別の生命体のようでもある。

    ダークダンスが手をかざすと、まとうものたちが警官の動きを封じ、その手から銃が弾き飛ばされる。

    警官との距離を詰めるダークダンス。

    警官、尻もちをつく。

    ダークダンス、警官を仕留めようと手を振り上げる。

    落雷。

    ダークダンス、何かに気づき、手を下ろす。

    田代、登場。

    田代、警官に逃げるよう促す。

    逃げる警官。

    田代、変身のポーズをとる。

    まとうものたちが現れ、田代の周囲を舞う。

    まとうものたちは光を強めながら、田代の身体を包むように巡る。

    田代、ボディネーションとなる。

    ボディネーションとダークダンスの格闘。

    ダークダンスを追い詰めるボディネーション。

    ダークダンス、咆哮してのち、ボディネーションに掴みかかる。

    受けて立つボディネーション。

    二人が取っ組み合ったその時、二人のすぐ近くの建物に落雷。

    壁を伝った雷が二人を襲う。

    ボディネーションとダークダンスの“まとうもの”が激しく乱れ、絡み合う。

    暗転。

    雨の音と共にゆっくりと明かりが戻ると、

    ボディネーションとダークダンスが、倒れている。

    ボディネーションのまとうものは、ダークダンスの傍らに。

    ダークダンスのまとうものは、ボディネーションの傍らに。

    それぞれの肉体を眺めている。


    雨の音だけが残る。

    アヤコが出てきて、ダークダンスの生死を確認する。

    続いて、ボディネーションの傍らに座る。

    ボディネーションの胸元に手を伸ばし、何か小さなものを取る。

    それが何かは、まだわからない。

    溶暗。


    一 目覚め


    明転。廃墟の一室。割れた窓や壁のすき間から日の光が差し込んでいる。

    ベッドに横たわっている田代、傍らに座っているアヤコ。

    田代、目を覚ます。

     

    田代 ……。

    アヤコ やっと起きた。

    田代 ……。

     

    田代、痛みをこらえつつ、ゆっくりと上体を起こし、辺りを見回す。

     

    アヤコ 三日。

    田代 ……え?

    アヤコ 寝てた。

    田代 ……ここは?

    アヤコ わたしの基地。

    田代 基地?

    アヤコ そうだよ。世界をぶっ壊すための。

    田代 ……ぶっ壊す?

    アヤコ うん。

    田代 なんでぶっ壊すの?世界。

    アヤコ みんな悪い奴だから。

    田代 そんなことないよ。世の中には――。

    アヤコ あるよ。

    田代 ……。お父さんとお母さんは?

    アヤコ いないよ。

    田代 ……ここに一人で住んでるの?

    アヤコ うん。今はグーランもいる。

    田代 グーラン?

    アヤコ ここらの闇に長く住んでる。

    田代 闇?

    アヤコ 明るくない場所。路地裏とか、裏通りとか。街の光があまり届かない場所。

    田代 ここも闇?

    アヤコ そう。グーランに運んでもらった。パン三つで。

    グーラン 五つだよ。

     

    グーラン入って来る。

     

    アヤコ 三つだよ。

    グーラン 五つだよ。とっととあと二個持って来な。じゃないと街の連中に売っちゃうよ。あんた。

    アヤコ クソばばあ。

    グーラン なんだって?

    田代 あの、パンなら俺が買ってきますから。

    グーラン あんたはパンどころじゃすまないよ。命救ってやったんだから。

    田代 あ、はい。それはもう。ありがとうございます。(アヤコに)えーっと名前は?

    アヤコ アヤコ。

    田代 アヤコちゃん。ありがとうね。助けてくれて。

    アヤコ ううん。おじさん、元気になったら、あいつらぶっ殺す方法教えてくれる?

    田代 え。……悪い奴ら?

    アヤコ そう。みんなわたしがぶっ殺す。

     

    グーラン、椅子に座り、新聞を広げる。

     

    田代 なにか、嫌なことされたの?

    アヤコ べつに。

     

    と言ってアヤコ、コップに水を注ぎに行く。

     

    グーラン ちょっと日付見て拾ってきなよ。これ昨日のじゃないか。

    アヤコ 写真が違ったから。

    グーラン ……。

     

    グーラン、アヤコから視線をそらす。

     

    田代 ……。

    グーラン しかしすごいねぇ。雷に打たれてくたばんないなんて。

    田代 雷?

    グーラン 覚えてないの?

    田代 はあ。ちょっとその辺記憶が。雷……。

    アヤコ あいつと戦ってたのは?

    田代 それはなんとな――

     

    田代、自身の体の異変に気付く。

     

    田代 え?

     

    照明変化。

     

    田代 え?

     

    田代、体をあちこち確認し、周囲を見回し、窓ガラスに自身の姿を映す。

    窓に映るダークダンスの姿。

     

    田代 え?……うそ……え、なに?

     

    田代、顔をおさえたり、動き回ったりして窓に映っている姿を確認する。

    窓の向こうのダークダンスは田代と寸分たがわぬ動きをする。

     

    田代 これ!おれ!?おれ!?おれこれ!?え?これこれ!!

    グーラン (頭を指しながら)無事じゃなかったみたいだね。

    アヤコ 体はピンピンしてる。

    田代 いっ……。

     

    田代、体の痛みもあり鏡から離れ、

     

    田代 えー……。

     

    田代、頭を抱える。

    グーラン、新聞に目を落とし、

     

    グーラン こりゃあっちもただじゃ済んでないかもね。

    田代 ……あっち?

    グーラン あのボディネーションとかいう奴。無事目を覚ましたって出てるけど。向こうも脳みそ焼けちゃってるかもね。

     

    田代、グーランの新聞を取り上げる。

     

    グーラン ちょっと!

     

    記事に目を走らせる田代。

     

    グーラン しかし、その正義の味方とかいうの、ホントにいけすかない顔してるねぇ。

    アヤコ 殺してやる。

    田代 ……。

     

    田代、グーランとアヤコを見、再び記事に目を落とす。

    舞台上に新聞記事が踊る。

    『ボディネーション田代氏、意識回復』

    『田代氏、目を覚ます』

    『不死身のヒーロー』など。

    溶暗。



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    尾米タケル之一座 作・演出。コントやら。舞台やら。 尾米タケル之一座HP https://okometakeru.jp/ 脚本・演出などお仕事のご相談はこちらまで→okometakeru@yahoo.co.jp

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