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【連続小説】「未来の娘からのLINE」第12話ー写真の中で、私だけが笑っていなかったー

一週間。

 

私は落ち着かなかった。

 

未来の結衣から届いた、

「次は、未来の写真を送信します」

 

その一文が頭から離れない。

 

未来の写真。

 

何が写っているのだろう。

 

未来の結衣の顔?

 

それとも——。

 


月曜日。

 

昼休みになった瞬間、スマホが震えた。

 

ピコン。

 

【未来の結衣】

 

私は深く息を吸い、トーク画面を開く。

 

メッセージは一つだけ。

 

写真、送るね。

 

その下に、画像が一枚添付されていた。

 

震える指で開く。

 

そこに写っていたのは——。

 

青い空。

 

芝生の広場。

 

大きな桜の木。

 

そして、

大人になった結衣。

 

白いブラウスにデニム。

髪は肩まで伸びている。

 

隣には、小さな男の子。

五歳くらいだろうか。

 

結衣によく似た笑顔で、手をつないでいる。

 

「……結衣。」

 

思わず声が漏れる。

 

大人になっても、

笑うと右のえくぼができるんだ。

 

そのことが嬉しくて、

涙がこぼれそうになった。

 

でも。

 

次の瞬間。

 

私は写真を拡大した。

 

そこには、

もう一人写っていた。

 

少し後ろ。

 

ベンチに座る女性。

 

帽子を深くかぶり、

こちらを見ている。

 

私だった。

 

十年後……いや、

もっと年を重ねた私。

 

だけど。

 

私は笑っていなかった。

 

結衣と男の子は笑っている。

 

私だけが、

少し離れた場所に座っていた。

 

その距離が、

妙に胸を締めつける。

 


その夜。

 

私は何度も写真を見返した。

 

「どうして隣に座らないの?」

 

「どうして抱きしめないの?」

 

「どうして……笑ってないの?」

 

答えはない。

 

ただ一枚の写真。

 

でも、

そこには言葉より多くのものが写っていた。

 


その時。

 

スマホが震える。

 

【未来の結衣】

 

気づいた?

 

私は思わず画面に触れる。

 

ママ、
私たちの間に
少し距離があること。

 

胸が苦しくなる。

 

私は写真をもう一度開いた。

 

確かに。

 

ほんの二、三歩。

 

でも、

その二、三歩が、

どうしようもなく遠く感じる。

 

さらにメッセージが届く。

 

この頃には、
少しだけ話せるようになってた。

 

少しだけ。

 

ということは。

 

それまで長い時間、

話せなかったのだ。

 

仲直りしたわけじゃない。

 

少しずつ、
戻り始めただけ。

 

私は静かに涙をぬぐう。

 

「戻り始めた」。

 

その言葉だけが救いだった。

 

未来は、

完全に壊れたわけじゃない。

 

まだ、

つながることはできたんだ。

 


翌日。

 

結衣と一緒に公園へ行った。

 

ブランコを押しながら、

私はふと聞く。

 

「結衣。」

 

「なあに?」

 

「大人になっても、
一緒に公園に来てくれる?」

 

結衣は笑った。

 

「もちろん!」

 

そして首をかしげる。

 

「でも、そのころママ、おばあちゃんじゃない?」

 

私は吹き出した。

 

「まだ、おばあちゃんじゃないよ。」

 

「じゃあ、おばちゃん?」

 

「それはもっとイヤ。」

 

二人で笑う。

 

その笑い声が、

夕暮れの公園に響いた。

 

結衣はブランコを降りると、

私の手をぎゅっと握った。

 

「ママ。」

 

「ん?」

 

「ずっと一緒にいようね。」

 

その言葉に、

私は返事ができなかった。

 

「うん。」

 

そう言うだけで精一杯だった。

 


夜。

 

未来の結衣から、

最後のメッセージが届く。

 

あの写真ね。

 

実は、
ママが初めて
私の子どもに会った日なんだ。

 

私は目を見開く。

 

あの男の子は——。

 

結衣の息子。

 

つまり、

私の孫。

 

胸が熱くなる。

 

でも、

続く一文で呼吸が止まった。

 

その日、
息子はママのことを
「知らないおばあちゃん」
って呼んだの。

 

スマホを持つ手が震えた。

 

知らない。

 

孫に、

そう言われるほど、

長い時間を失っていたのだ。

 

最後の一文が届く。

 

私ね。

 

あの時間だけは、
どうしても変えたい。

 

私は写真を胸に抱くように、

スマホを握りしめた。

 

もう二度と、

こんな未来にはしたくない。

 

そう強く思いながら。

 

(第12話 完)

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