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給食の時間を凍らせた、恐怖ののど自慢

    まちぼうけ まちぼうけ
    ある日せっせと野良かせぎ
    そこへうさぎが飛んで出て 
    ころりころげて木のねっこ

    ある日、一人の農夫が野良仕事をしていたら、そこに兎が勢い良く走ってきて木の切り株に頭をぶつけて死んでしまいました。楽をして獲物をとる事ができた農夫は、それからは野良仕事もせず再び兎がぶつかることを期待して、木の切り株の番をするようになりました。しかしそんな虫のいい偶然が、再び続くはずはなく、彼は国中の笑い者となってしまいました。

    作詞:北原 白秋  作曲:山田 耕筰
    ===============================

    1980年代、小学校5年の時にくだらないイベントが開始されました。
    それはお昼の放送で『のど自慢大会』を開催するというのです。

    各クラスから2人ペアで出場しなくてはなりません。
    我がクラス(5年3組)でも誰が出場するかの緊急クラス会が開かれました。

    誰も出場したくないのでシーンっとしてズーンっと重い空気となっていました。
    すると、その会議を進行していた学級委員長が「じゃあ僕の方で推薦します」と言い出しました。

    何を思ったのか「バク君(自分)と岡島君を僕は推薦します」と、何故か私を推薦してきました。
    クラスのみんなも自分が出場しないで済んだという感じですぐに可決されました。
    生まれて初めて民主主義の恐ろしさを知りました。

    当時から人前に出て何かするような目立った子供ではなかった私は本当に困りました。
    そしてパートナーである岡島君は私よりもっともっと大人しい感じの子で泣きそうになっていました。
    しかし、クラス会で決まってしまった以上、出場するしかありません…
    岡島君と何を歌うか話し合いをして、その時ちょうど音楽の時間に習っていた「まちぼうけ」を歌うことにしました。

    この「のど自慢大会」は生で歌うわけではなく、前日の放課後に歌を放送室で録音をして、放送当日は録音テープを流す方式で行われていました。
    録音も放送も2クラスずつ行い私たちは隣のクラスの代表と一緒に収録するという事でした。

    収録日になり放課後に放送室へ行くと隣のクラスの代表が来ていました。
    隣のクラス(5年2組)代表はクラスで中心的な人気がある女子2名でした。
    目立つ事が好きなタイプでおそらく「のど自慢大会」にも自分で立候補したのだと思います。
    一方コッチはイヤイヤ引っ張りだされた地味な男子二人です・・・。
    この時点でかなりの差です。

    …しかもその女子二人が歌う曲も「まちぼうけ」だったのです。
    「まちぼうけ」VS「まちぼうけ」のガチンコ対決です。

    始めに女子二人が録音室に呼ばれ録音をし、その後私たちのペアが録音をしました。
    一度も練習などせずにぶっつけ本番アカペラ収録しました。

    そして…翌日の昼休み喉自慢が放送されました。
    私も岡島君もクラスのみんなと一緒に教室で給食を食べながらお昼の放送に耳を傾けました。

    「今日の喉自慢は5年2組と5年3組です。はじめに5年2組○○さん、××さん(人気女子コンビの名前)で曲は”まちぼうけ”です」

    タララ タタララ タンタラタンタンタン♪
    まちぼうけ~♪まちぼうけ~♪
    ある日せっせと野良稼ぎ~♪
    そこに兎が飛んで出て~♪
    ころり転げた木の根っこ~♪

    ちなみに始めのタララ タタララ・・・の前奏部分はノリを良くするため工夫して、自分達で歌っていました。
    歌のスピードも速く、そのノリの良い歌い方に歌い終わると
    「おぉぉぉ~!!」っと感心のどよめきがありました。
    あちらこちらから「さすが○○ちゃん達だよね~うまいよね~!」という声が聞こえてきます。

    「続いて5年3組バク君・岡島君です。曲は”まちぼうけ”です」

    次の瞬間、スピーカーからお経のようなモノが流れてきました・・・

    イチ・・・ニ・・・サン・・・ハイ・・・(必死にタイミングとってる)
    まちぼうけ・・・まちぼうけ・・・
    ある日せっせと野良稼ぎ・・・

    自分なりには頑張ったつもりだったんですが、思っていた以上に声が低く、スピードも遅い・・・
    教室のスピーカーを通すとその暗さに拍車がかかり、
    なにかの呪文のような言葉がゴニョゴニョと聞こえてくるだけでした。

    そこに兎が飛んで出て・・・
    ころり転げた…木の根っこ・・・

    ウサギ餓死…??

    クラス中大爆笑!!
    「なにコレ~?!怖えぇ~!!」という言葉が様々なところから聞こえてきました。歌が上手い・上手くないではなく、怖い・怖くないの話になっていて、しかも怖い…
    しかも歌う速度が遅いため、なかなか歌い終わらない・・・。
    ただただ恥ずかしく私も岡島君も下を向いていました。

    そんな私たちを見た先生が気を使ってくれてみんなに向かって
    「ハーイ、みんな笑うな~、バク(自分)も岡島も頑張ったんだからな~」と言ってくれました。

    そして私たち二人を見て「よく頑張ったなぁ、ただちょっとだけ音程とスピードがズレちゃったな」
    …っと…音楽でその2つズレたら致命的だろう・・・っ
    つーかその2つ以外ないだろう・・・というようなフォローを入れてくれました。

    もちろんお経で勝てるわけもなく敗退しました・・・
    もうこの手のものには二度と参加しません・・・

    自慢できる「のど」などないのですから…


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    初対面や慣れない場所だと、少し緊張して口数が減ってしまうタイプのシャイなオッサンです。その場を穏便にやり過ごそうとして、つい適当なことを言っては後で一人反省会をする……そんな日常のちょっとしたすれ違いや失敗談をエッセイにしています。

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