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【雲間月怪異譚】 第話

    【雲間月怪異譚】第話 鬌の棲家線


    ※泚意※

    本䜜『雲間月怪異譚』には、
    怪異・郜垂䌝説・因習・和颚ホラヌ衚珟が含たれたす。

    薄暗い話や、
    “じわりず嫌な感じ”のする話が苊手な方は、
    どうか無理をなさらず回れ右でお願いしたす。

    それでも芗いおくださる方は――
    どうぞ、雲間の怪異譚ぞ。


    =====================
    「これは——
    母がただ若かった頃の話です」

    料亭の庭では、
    雚の気配を含んだ颚が竹を揺らしおいた。

    陜子さんは、
    湯呑みに芖線を萜ずしたたた、
    静かに語り始める。

    âž»

    時期は、
    今ず同じ倏に近い頃だったず思いたす。

    ただ、
    久留矎流が倧きく名を広め始めた頃。

    同時に——

    家そのものが、
    閉じおいった時代でもありたした。

    䞡芪や芪戚達は、
    久留矎流の名を守る事に執着し始め、
    倖の血を嫌い、
    内偎だけで党おを固めようずしおいた。

    そんな䞭で母は、
    次期家元ずしおの立堎を匷めるため。

    そしお、
    久留矎流そのものの埌ろ盟を埗るために。

    ある名家ぞ、
    政略結婚する事になったそうです。

    「  」

    陜子さんは、
    そこで䞀床蚀葉を止めた。

    だが、
    その暪顔には感情が芋えない。

    たるで、
    䜕床も繰り返し語っおきた物語のようだった。

    âž»

    今でも忘れられない——

    母は、
    そう蚀っおいたそうです。

    広い座敷。

    癜無垢姿のたた、
    ただ静かに座っおいたず。

    祝いの垭ずは思えないほど、
    その郚屋は冷えおいたらしい。

    倖では、
    倕闇ず匕き換えに黒雲が広がり始めおいた。

    やがお雷鳎が響き、
    激しい雚が庭を叩く。

    氎煙の向こうぞ、
    景色が少しず぀消えおいく。

    それでも、
    母は埅っおいた。

    倫ずなる人を。

    けれど——

    時間だけが過ぎおいく。

    芪戚達は、
    䞀人、たた䞀人ず垭を倖し。

    祝い膳も、
    い぀の間にか片付けられおいった。

    その頃にはもう、
    座敷の向こうから䞡芪の怒号が聞こえおいたそうです。

    そしお。

    片付けをしおいた仲居達の、
    ひそひそずした声で知った。

    倫になるはずだった男は、
    婚姻届だけを眮いお。

    愛人の元ぞ消えたのだず。

    「事実婚を遞んだんですっお」

    誰かが、
    そう蚀ったそうです。

    たるで、
    花嫁本人だけを蚊垳の倖ぞ眮くように。

    母は——

    久留矎流の象城だった、
    赀い鬌癟合を抱えたたた。

    涙が枯れるたで、
    その堎から動けなかった。

    âž»

    そこたで語るず、
    陜子さんは静かに埮笑んだ。

    「  酷い話でしょう」

    だが。

    その笑みは、
    どこか劙に冷たかった。

    「その日を境に、
    母は倉わったそうです」

    庭の竹が、
    ざわりず揺れる。

    「母は、
    あの日以来——
    鬌癟合しか生けなくなったそうです」

    「  え」

    「最初は、
    芞術性だず蚀われおいたした。
    ですが次第に、
    母の花展ぞ来た女性達が、
    䜓調を厩すようになったのです」

    「䜓調っお  」

    「泣き厩れたり、
    突然倒れたり。
    䞭には、
    倫の浮気を疑っお発狂した方もいたそうです」

    冗談には聞こえなかった。

    「久留矎流では、
    鬌癟合には“女の情念を喰う花”ずいう蚀い䌝えがありたす」

    âž»

    「その話が、
    僕に話す内容ず重なるんですか」

    正盎、
    僕が期埅しおいたのは、
    昌ドラみたいな愛憎劇ではない。

    怪談ずか、
    ホラヌずか。

    そっちだ。

    「ええ。
    ここからが本題です」

    陜子さんは、
    食埌のお茶で喉を湿らせた。

    「先生は、
    久留矎流が䜕故“鬌癟合”を象城ずしおいるか、
    ご存知ですか」

    「いえ。
    華道の知識は党然で」

    今回のむベントだっお、
    珟地に来お初めおタむアップを知ったくらいだ。

    陜子さんは、
    そんな僕を芋透かしたように埮笑む。

    「久留矎流の起源は、
    この土地の尌寺なんです」

    「尌寺」

    「ええ。
    この蟺りは京郜ず同じく盆地で、
    叀くから街道の芁所でした」

    障子の向こうでは、
    颚に揺れた竹が擊れ合っおいる。

    「ですが、
    それは江戞以降の話です。
    それ以前は、
    戊囜倧名達に翻匄される䞍安定な土地でした」

    「なるほど」

    「そんな時代に、
    この地の城には二人の姫がいたそうです」

    陜子さんは、
    静かに語る。

    「本劻の嚘——『朱華姫』」

    「偎宀の嚘——『瑠璃姫』」

    「二人は、
    郜にも名が届くほど矎しかったず蚀われおいたす」

    「うわぁ  
    その時点で嫌な予感しかしないですね」

    「先生は、
    本圓に遠慮がありたせんね」

    少しだけ、
    陜子さんが笑った。

    「郜の倪公様が、
    偎宀ずしお姫を望たれたのです」

    「どちらを」

    「それが、
    指定されなかったそうです」

    僕は眉をひそめる。

    「それ、
    揉めるや぀では」

    「ええ。
    城では、
    本劻の嚘である朱華姫を城に残し、
    偎宀の嚘である瑠璃姫を郜ぞ送る話でたずたりかけおいたした」

    「たあ、
    普通に考えればそうなりたすよね」

    「ですが——
    朱華姫が、
    “田舎は嫌だ。郜ぞ行きたい”
    ず蚀い出したのです」

    「あヌ  」

    思わず声が挏れる。

    「戊囜版SNS映え女子だ」

    「先生、
    たたに䟋えが軜すぎたす」

    呆れたように蚀いながらも、
    陜子さんは少し笑っおいた。

    「ですが実際、
    郜ぞ行けば呜の危険も枛りたす。
    地方の城䞻より、
    倪公様の偎の方が安定しおいるず思ったのでしょう」

    「それで、
    どうなったんです」

    「本劻は、
    嚘の我儘を通そうずしたした」

    陜子さんの声音が、
    僅かに䜎くなる。

    「衚向きには、
    瑠璃姫が郜ぞ向かった事になっおいたす」

    「衚向き」

    「ですが——
    本圓にあの茿ぞ乗ったのが、
    瑠璃姫だったのかは分からないのです」

    「  え」

    「本劻は、
    自分の嚘ず偎宀の嚘を入れ替え、
    朱華姫を郜ぞ送ろうずしたず蚀われおいたす」

    「いやいや、
    それ滅茶苊茶ですね  」

    「ええ。
    ですが、
    その事実は城䞋には䌏せられたした」

    静かな声。

    「城䞻は最埌たで、
    “瑠璃姫が郜ぞ向かった”
    ず觊れを出したそうです」

    僕は、
    少し背筋が寒くなる。

    「じゃあ、
    本圓に死んだのは——」

    「分からないんです」

    陜子さんは、
    はっきりず蚀った。

    「その埌、
    山道を進んでいた茿が山賊に襲われたそうです」

    「  」

    「姫は逃げ、
    山奥の沌地ぞ远い詰められたした」

    雚の気配が、
    少し濃くなる。

    「そしお——
    蟱めを受けるくらいならず、
    自害したず蚀われおいたす」

    しばらく、
    沈黙が萜ちた。

    「悲劇ですね」

    僕がそう蚀うず、
    陜子さんはゆっくり銖を振った。

    「いいえ。
    話はここからなんです」

    その瞬間。

    障子の向こうで、
    颚が唞った。

    「姫が死んだ沌地には、
    それたで存圚しなかった赀い癟合が咲くようになったそうです」

    「鬌癟合  」

    「ええ。
    血を吞ったような赀色だったず蚀われおいたす」

    「でも、
    瑠璃っお名前なら、
    青い姫のむメヌゞですよね」

    「その通りです」

    陜子さんは頷いた。

    「朱華姫は玅。
    瑠璃姫は青。

    そう語られおいたした」

    「぀たり——」

    「誰が死んだのか、
    誰にも分からなくなったんです」

    ぞわり、ずした。

    「しかも、
    本劻もその埌、
    気が觊れたず蚀われおいたす」

    「え」

    「毎倜、
    沌地ぞ向かうようになり——
    ある朝、
    倉死䜓で芋぀かったそうです」

    料亭の空気が、
    急に重くなった気がした。

    陜子さんは、
    静かに湯呑みを眮く。

    こずり、
    ず小さな音が響く。

    「だからでしょうか」

    その声音が、
    僅かに䜎くなる。

    「この土地には、
    おかしな話が残っおいるんです」

    僕は、
    無意識に背筋を䌞ばした。

    来た。

    やっず、
    怪談の匂いがしおきた。

    「鬌癟合が咲く倜、
    沌の近くを通った者は——」

    陜子さんは、
    真っ盎ぐこちらを芋る。

    「“花嫁姿の女”を芋るそうです」

    障子の向こうで、
    颚が鳎った。

    「癜無垢姿で、
    癟合を抱えた女が、
    沌の氎面に立っおいるんです」

      いい。

    急に、
    空気が怪談になった。

    「しかも、
    その女には顔がない」

    「うわ、
    王道に怖いや぀だ」

    思わず本音が挏れる。

    陜子さんは、
    くすりず笑った。

    だが、
    目は笑っおいない。

    「その女を芋た男は、
    数日以内に必ず“女絡みの砎滅”を迎えるず蚀われおいたす」

    「女絡み」

    「婚玄砎棄。
    愛人問題。
    䞀家離散。
    倱螪。
    あるいは——」

    そこで、
    陜子さんは蚀葉を止めた。

    「  自殺」

    ぞわり、ず鳥肌が立぀。

    「埅っおください。
    それっお、
    今でも続いおるんですか」

    「はい」

    即答だった。

    「昭和には、
    駆け萜ちした男性が沌で亡くなっおいたす」

    「え」

    「十幎前には、
    䞍倫関係にあった垂議䌚議員が倱螪したした」

    「いや、
    普通に事件では」

    「芋぀かったそうですよ」

    陜子さんは、
    静かに埮笑む。

    「沌の䞭で」

    嫌な沈黙が萜ちた。

    「しかも——
    遺䜓の呚囲には、
    季節倖れの鬌癟合が咲いおいたそうです」

      あぁ。

    なるほど。

    これは、
    単なる地方䌝承じゃない。

    “今も続いおいる話”だ。

    「でも  
    それず久留矎流は、
    どう繋がるんです」

    その瞬間。

    陜子さんの笑みが、
    ほんの少しだけ消えた。

    「久留矎流は——」

    静かな声。

    「その鬌癟合を、
    代々“管理しおきた尌寺”だったんです」

      は

    「鬌癟合が増えすぎた幎には、
    街で女の発狂が盞次いだず蚀われおいたす」

    「発狂」

    「突然髪を切り萜ずしたり。
    倫を刺したり。
    沌ぞ向かっお歩き続けたり」

    もう、
    冗談めかした空気はなかった。

    「だから久留矎流では、
    鬌癟合を“鎮める花”ずしお扱っおいるんです」

    「鎮める  」

    「花は、
    食るだけのものではありたせんから」

    その時だった。

    ——カタリ。

    床の間で、
    䜕かが音を立おた。

    芖線を向ける。

    そこには——

    䞀茪だけ。

    赀黒い鬌癟合が、
    食られおいた。

      さっきたで、
    あそこに花なんおあったか

    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ
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    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

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