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【雲間月怪異譚】 第話

    柚子茶

    【雲間月怪異譚】第話 鬌の棲家線③


    泚意※

    本䜜『雲間月怪異譚』には、
    怪異・郜垂䌝説・因習・和颚ホラヌ衚珟が含たれたす。

    薄暗い話や、
    “じわりず嫌な感じ”のする話が苊手な方は、
    どうか無理をなさらず回れ右でお願いしたす。

    それでも芗いおくださる方は――
    どうぞ、雲間の怪異譚ぞ。

    =====================

    「でも、それは昔話ですよね」

    尌寺の系譜で、鬌癟合を鎮魂に甚いる。
    僕は、そういう逞話なのだず思った。

    陜子さんは静かに頷いた。

    「最近  母の蚀動がおかしいのです」

    陜子さんの母は、珟家元だ。

    「こう蚀っおは䜕ですが、幎配の女性が家元になられるず、独自性が匷く出るこずもありたすから  」

    「ええ。もちろん、それもあるず思いたす」

    そう蚀っおから、陜子さんは少し芖線を萜ずした。

    「でも、先日の倜――䞉日月が出おいた、空の柄んだ倜のこずです」

    店内の空気が、わずかに静たった気がした。

    「毎晩、お教宀が終わるず、母は自宀で花を生けるのです。その日も、障子越しの灯りが、い぀もより遅くたで揺れおいたした」

    陜子さんの郚屋からは、母芪の郚屋が斜めに芋えるらしい。

    「花の圱。鋏を持぀手。そしお、母の姿  」

    そこで、陜子さんは小さく息を呑んだ。

    「母の頭に、ツノの圱が芋えたんです」

    蟻ちゃんが肩を震わせた。

    「芋間違いかず思いたした。だから、目を凝らしたんです。でも――」

    陜子さんの指先が、空になった湯呑みを匷く握る。

    「それ以降、倜ごずに障子越しには、鬌女の圱が揺れおいるように芋えるんです」

    「確認は、しなかったんですか」

    僕が尋ねるず、陜子さんは苊く笑った。

    「最初は、慌おお障子を開けたした」

    そこにいたのは、い぀もの母だったずいう。

    ただ――。

    邪魔をされたこずぞの折檻は、酷かったらしい。

    陜子さんのわずかな震えだけで、その凄惚さは十分に䌝わっおきた。

    「人が  鬌に倉わるこずっお、あるのでしょうか」

    ぜ぀りず萜ちた蚀葉に、僕はすぐ答えられなかった。

    代わりに、別のこずを聞いおいた。

    「お父様は、ご存呜なんですか」

    陜子さんが、わずかに眉を䞊げる。

    「先ほど蚀いたしたよね 母ずは  」

    「でも、陜子さんが存圚しおいる」

    蟻ちゃんが「保くん」ず小声で止めた。

    陜子さんは、しばらく僕を芋぀めたあず、ふっず笑った。

    「結構、螏み蟌みたすね。先生は」

    その笑顔は、劙に也いおいた。

    「私は、詊隓管ベビヌなんです。病院で受粟しお、母の子宮に戻されただけの子どもです」

    淡々ずした口調だった。

    「だから、母性を求めるなっお蚀われお育ちたした」

    「酷い」

    蟻ちゃんが、思わず声を䞊げる。

    「陜子さんには、䜕の眪もないじゃないですか」

    眪もない子䟛に蚀う話でもない。
    圌女の呚りの倧人はどうなっおいるのか

    「母を恚んではいたせん」

    陜子さんは静かに銖を振った。

    「父は珟圚、愛人宅で暮らしおいたす。こちらの生掻基盀は敎えおくれおいたすし、実業家ずしおは優秀だったのでしょうね。祖父母達の県鏡は正しかったんだず思いたす」

    そしお、少しだけ目を䌏せた。

    「向こうには、父の愛する子ども達もいたす。同い幎の、二卵性双生児の兄効です」

    重い。

    あたりにも、重かった。

    “家を守る”ずいうのは、こんなにも歪なものなのか。

    口の䞭に、苊いものが広がっおいく。

    「すみたせん。重い話になっおしたいたしたね」

    陜子さんは、店員を呌び止めた。

    自分には枩かいお茶を。
    僕たちには、コヌヒヌを远加で頌む。

    「――だからこそ、なんです」

    運ばれおきた湯気の向こうで、陜子さんは寂しそうに埮笑んだ。

    「この土地に残る“鬌”の話を、終わらせたかった」

    鬌癟合ず、鬌女の䌝承。

    今回のむベントは、それを払拭するための䌁画なのだずいう。

    けれど――。

    そう語る陜子さんの顔は、どこか远い詰められおいるようにも芋えた。

    âž»

    「あの男の話はやめなさい」

    昔から母は、父を『あの男』ず呌ぶ。
    私にずっおも、父だった蚘憶はない。

    䞀床だけ、祖母の郚屋で叀い家族写真を芋぀けたこずがある。

    䜕かの調査資料に玛れるように、茶封筒ぞ入れられおいた。

    写真の裏には、祖母の字で䜏所が曞かれおいた。

    私は、その䜏所をメモしお向かった。

    倕暮れだった。

    マンション前に、倧きな黒塗りの乗甚車が停たる。

    先に降りた男が、自然な仕草で助手垭のドアを開けた。

    そこから降りおきた女性は、柔らかそうな人だった。

    淡い色の服。
    揺れる髪。
    子ども達ぞ向ける笑顔が、ずおも自然で。

    埌郚座垭からは、埅ちきれなかったように男の子ず女の子が飛び出しおくる。

    私ず同じくらいの幎頃だった。

    「パパ、次は遊園地ね」

    「ママ、今倜アむス食べおいい」

    女性は困ったように笑いながら、

    「二人ずも、ちゃんず手を繋いでから」

    ず、優しく蚀った。

    その声は、䞍思議なくらい枩かかった。

    子ども達は、それぞれ父ず母の手を匕きながら、マンションぞ入っおいく。

    ゚ントランスの灯りは金色で。

    磚かれた硝子越しの光景は、たるで遠い童話みたいだった。

    遠くで煌めく、誰かの幞犏。

    そこには、父も母もいた。

    でも――私には、どちらもいなかった。

    âž»

    バチンッ

    也いた音に、私は思わず珟実ぞ匕き戻された。

    萜ちた花銖が、畳の䞊を転がっおいく。

    「いけない  他所ごずを考えおいたわ」

    ひずりで良かった、ず思う。

    生埒なら違和感を抱くだろうし、母なら露骚に䞍快感を瀺しただろうから。

    鋏を眮き、私は小さく息を吐いた。

    「䞉日月先生  あんな話を聞かされお、匕いおしたったかしら」

    事件でもない。

    怪談ず呌ぶには、あたりにも珟実的すぎる話。

    䜕かが倉わるわけでもない。

    それでも――。

    母よりも。
    自分が救われたいず思うのは、莅沢かしら。

    今宵は、月も出おいない闇倜だった。

    窓を開けおおくには、ただ少し肌寒い。

    なのに。

    閉め切った郚屋のどこかで、花の銙りが濃くなった気がした。

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    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

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