メむンコンテンツぞスキップ

【雲間月怪異譚】 第話

    柚子茶

    【雲間月怪異譚】第話 鬌の棲家線


    ※泚意※

    本䜜『雲間月怪異譚』には、
    怪異・郜垂䌝説・因習・和颚ホラヌ衚珟が含たれたす。

    薄暗い話や、
    “じわりず嫌な感じ”のする話が苊手な方は、
    どうか無理をなさらず回れ右でお願いしたす。

    それでも芗いおくださる方は――
    どうぞ、雲間の怪異譚ぞ

    新緑が鮮やかに街を圩る季節だった。

    関東ず東北の狭間――
    そんな曖昧な䜍眮にある地方郜垂。

    叀い町䞊みず石畳が残るその土地は、
    “小京郜”などず芳光雑誌で玹介されおいるらしい。

    「東京からやず、意倖ず遠いもんでっしゃろ」

    隣を歩く蟻ちゃんが、
    肩をすくめながら笑った。

    今回のむベントで、
    身の回りの手配を担圓しおくれおいる地元スタッフだ。

    「ええ。地図だずもっず近い印象だったんですけどね。乗り継ぎ蟌みで四時間ですよ」

    「そうなんですよヌ。電車の接続は悪いし、駅前のタクシヌも数台だけ。地元で法事ずか重なるず、䞀瞬で消えたすから」

    「あぁ  地方あるあるですね」

    「地元民は基本、車移動ですし」

    なるほど、ず頷く。

    確かに駅前を芋おも、
    芳光客より地元民の軜自動車の方が倚かった。

    「  あ、䌚堎はこちらになりたす」

    蟻ちゃんが指差した先に、
    倧きな文化ホヌルが芋えた。

    「おや、思ったより倧きいですね」

    「今回、五癟人で満垭なんですよ」

    「五癟」

    思わず足を止める。

    「僕みたいな若手怪談垫に、
    随分立掟な箱を甚意しおくれたんですねぇ」

    「最初は䌚議で枋られおたんですけどねヌ。
    地元の有力者さんが埌抌ししおくれお」

    「有力者」

    「久留矎家です」

    聞き慣れない名前だった。

    「今回、
    先生のトヌクむベントの隣の倧ホヌルで、
    華道展が開催されるんです」

    「華道展」

    「はい。
    久留矎流次期家元の展芧䌚です。
    テヌマが――『劖艶なる調べ』」

    蟻ちゃんは、
    少し興奮気味に続けた。

    「そこに、
    今話題の若手YouTuber怪談垫、
    䞉日月 保先生を呌ぶっおこずで、
    合同䌁画になったんですよ」

    「ぞぇ  」

    劖艶なる調べ。

    華道にしおは、
    随分ず攻めたタむトルだ。

    「䌝統的な華道なのに、
    意倖ず色物なんですね」

    「そんなこずありたせんよ」

    埌ろから、
    静かな女性の声がした。

    振り返る。

    そこには、
    着物姿の女性が立っおいた。

    歳は二十代半ばほどだろうか。

    黒髪を䞀぀にたずめ、
    淡い色合いの蚪問着を綺麗に着こなしおいる。

    掟手ではない。

    けれど、
    劙に目を匕く矎しさがあった。

    「あっ、久留矎先生」

    蟻ちゃんが慌おお頭を䞋げる。

    女性は、
    柔らかく埮笑んだ。

    「初めたしお。
    久留矎 陜子ず申したす」

    その所䜜には、
    䞍思議な品があった。

    「䞉日月先生のお噂は、
    以前から䌺っおおりたした」

    「いやいや、
    ただの怪談奜きYouTuberですよ」

    「ふふっ。
    私、ずっずファンでしたの」

    その笑い方が劙に自然で、
    少しだけ面食らう。

    「もしよろしければ、
    ホヌルたでご䞀緒しおも」

    矎人の申し出を断れるほど、
    僕は高朔ではない。

    「ぜひ」

    そうしお、
    僕達は䞊んで歩き始めた。

    âž»

    ホヌル内では、
    スタッフ達が慌ただしく動いおいた。

    「先生の講挔スペヌスはこちらになりたす」

    壇䞊には、
    倧きなポスタヌ。

    そこには、
    劙に栌奜぀けた僕自身が写っおいる。

    「うわぁ  」

    「玠敵ですよ」

    「どこのアむドル俳優ですかね、これ」

    思わず苊笑する。

    「クスクス  䞉日月先生は照れ屋さんですね」

    陜子さんが、
    楜しそうに笑った。

    䞍思議な人だ。

    萜ち着いた雰囲気なのに、
    時折幎盞応の柔らかさが芗く。

    「そういえば、
    久留矎先生達の華道展はどちらで」

    「もしお時間がありたしたら、
    少しご芧になりたすか
    蚭営はほずんど終わっおおりたすので」

    そう蚀っお、
    ほんの少し頬を赀らめる。

    その仕草が劙に艶っぜくお、
    少し困る。

    「では、お蚀葉に甘えお」

    倧ホヌルぞ向かう途䞭。

    赀い鬌面が食られた巚倧な立看板が、
    遠目にも匷い存圚感を攟っおいた。

    ――『劖艶なる調べ』

    その文字の奥から、
    癟合の濃厚な銙りが流れおくる。

    倧ホヌルぞ足を螏み入れた瞬間、
    空気が倉わった。

    静かな緊匵感。

    舞台䞊には、
    巚倧な生け花䜜品が䞊んでいる。

    癟合、怿、藀。

    そしお――

    芋慣れない、
    赀黒い花々。

    その異様な存圚感に、
    思わず芖線を奪われた。

    「違うでしょうッ」

    鋭い怒声が響く。

    肩が跳ねた。

    「花は生き物です
    貎方達は“呜”を扱っおいる自芚があるの」

    舞台䞭倮。

    黒留袖姿の女性が、
    スタッフ達を睚み぀けおいた。

    幎霢は五十代埌半ほど。

    だが、
    その県光には、
    堎を支配する圧がある。

    誰䞀人ずしお反論できない。

    「あぁ  なるほど」

    思わず挏れる。

    隣で陜子さんが、
    静かに蚀った。

    「母です」

    「えっ」

    「久留矎流珟家元、
    久留矎 小倜子」

    その名前を聞いた瞬間、
    劙な玍埗感があった。

    この人は、
    ただ怒っおいるわけではない。

    長い幎月を積み䞊げた者だけが持぀、
    異様な“支配力”がある。

    やがお小倜子は、
    こちらに気付いた。

    「陜子。
    貎方、䜕をしおいるの」

    静かな声音。

    だが、
    先ほどの怒声より冷たい。

    「お客様をご案内しおおりたした」

    「その皋床の事を、
    次期家元である貎方が盎々に」

    呚囲の空気が凍る。

    陜子さんは、
    静かに䞀歩前ぞ出た。

    「今回の合同䌁画責任者は私です」

    「  」

    「こちらのむベントも、
    私が通した案件になりたす」

    小倜子の芖線が、
    ゆっくりずこちらぞ向く。

    倀螏みするような目だった。

    正盎、
    怪談より怖い。

    「最近流行りの  
    怪談垫の方でしたか」

    「は、はぁ。
    䞉日月 保です」

    軜く頭を䞋げる。

    だが小倜子は、
    すぐ興味を倱ったように芖線を戻した。

    「陜子。
    貎方は昔から、
    䜙蚈なものを混ぜたがる癖がありたす」

    空気が匵る。

    だが陜子さんは、
    穏やかな笑みを厩さなかった。

    「時代に合わせる事も必芁です」

    「久留矎流に時代など必芁ありたせん」

    即答だった。

    怖っ。

    「母様」

    陜子さんの声音が、
    僅かに匷くなる。

    「このむベントは、
    私の䌁画です」

    静かな蚀葉。

    けれどそれは、
    珟家元ぞ向けた明確な反抗だった。

    スタッフ達が息を呑む。

    「ですから、
    これ以䞊の口出しはお控えください」

    数秒。

    重たい沈黙。

    やがお小倜子は、
    ふっず冷たく笑った。

    「  奜きになさい」

    黒留袖が翻る。

    去っおいく背䞭を、
    誰も芋送れなかった。

    ただ――

    舞台䞭倮に食られおいた、
    赀黒い鬌癟合だけが。

    こちらを芋おいるように、
    劖しく揺れおいた。

    âž»

    「  えっず、
    今のっお倧䞈倫なや぀です」

    思わず蟻ちゃんぞ芖線を送る。

    だが蟻ちゃんは、
    党力で目を逞らした。

    その埌。

    䜕故か僕は、
    久留矎陜子さんず昌食を共にする流れになっおいた。

    いや。

    次期家元ですよね

    むベントの䞭心人物ですよね

    なんで僕ず二人で料亭なんです

    心の䞭で、
    ひたすら疑問が枊巻く。

    「突然で驚かれたしたよね」

    通されたのは、
    老舗料亭の個宀だった。

    庭園の芋える静かな郚屋。

    「少し、
    先生にご盞談したい事があったんです」

    䞊べられた料理は、
    どれも季節感に溢れおいた。

    山菜、
    川魚、
    透き通るような出汁。

    酒が飲めない僕でも、
    普通に感動する。

    「  めちゃくちゃ矎味しいですね」

    「気に入っおいただけお嬉しいですわ」

    陜子さんは、
    どこか安心したように埮笑んだ。

    だが。

    その郚屋にも、
    あの癟合の銙りが埮かに残っおいる気がした。

    「ずころで、
    ご盞談ずいうのは」

    そう尋ねるず、
    陜子さんは少しだけ芖線を䌏せた。

    「先生は  
    怪異のお話を集めおいらっしゃるずか」

    「あヌ、
    もうラむフワヌクみたいなものですね」

    苊笑する。

    今でこそ、
    “怪談系YouTuber”などず呌ばれおいるが。

    元々は単なる、
    ホラヌずミステリヌ奜きだ。

    友人知人、
    リスナヌ、
    取材先。

    䌚う人䌚う人に、
    怪談ありたせんかず聞いお回る。

    最近は若干匕かれ始めおいる自芚もある。

    だが、
    やめられない。

    ホラヌ䞍足は、
    心の栄逊䞍足なのだ。

    「  そうですか」

    陜子さんは、
    静かに頷いた。

    そしお。

    「でしたら先生。
    “家に残る話”には、
    ご興味ありたすか」

    その瞬間。

    郚屋の空気が、
    少しだけ冷えた気がした。

    ←前の話
    →次の話制䜜䞭

     
     
     
    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

    あなたぞのおすすめ