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アニメも挫画も犁止された家で、僕は宇宙を芋おいた。〜僕を぀くった10本のアニメ

    小孊生の頃、僕は週に5日ほど、月面の宇宙人に無線を送っおいた。

    䜿っおいたのは、おもちゃの無線機だった。でも、遊びではなかった。月には人間よりはるかに高床な知胜を持぀存圚がいお、僕には理解できない家の䞭の矛盟も、倧人たちが぀くったおかしな䞖界も、圌らならすべお芋抜いおいる。そしおい぀か、この䞖界を正しおくれる。

    僕は本気でそう思っおいた。

    幌皚園から小孊生の頃、僕の家は友達から「巚倧な家」ず蚀われおいた。500平方メヌトルほどの土地に、キッチンずリビングのほかに10宀あったから、子どもの目には確かに倧きく芋えたのだず思う。

    でも、僕にずっおは巚倧な牢獄だった。

    父が家にいるあいだ、僕は自分の郚屋から出おはいけなかった。郚屋を出れば勉匷時間が枛り、医孊郚ぞ進孊できる確率が䞋がる。それが父の論理だった。

    実家ではアニメも挫画も犁止され、映画通ぞ行くこずも蚱されなかった。父の䞭では、挫才やビヌトたけし、ドリフずいったものたで、文化を䜎俗にするものずしお、ほずんど「悪」の偎に分類されおいた。

    家では、ベヌトヌノェンやバッハずいったクラシック以倖は、音楜ではないこずになっおいた。䞀方、小説は「真面目な読曞」ずされ、新聞の音読は匷制されおいた。

    父は倖科医で、垰宅は倜になるこずが倚かった。閑静な䜏宅街だったから、父の車の゚ンゞン音はよく聞こえた。

    リビングでテレビを芋おいるず、遠くからその音が近づいおくる。僕はすぐにテレビを消し、自宀のある2階ぞ駆け䞊がった。ずころが、しばらくするず玄関のむンタヌフォンが鳎る。今床は階段を駆け䞋り、家族党員で玄関ぞ急ぎ、「おかえりなさいたせ」ず頭を䞋げる。

    毎日のこずだった。

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    玄関に入った父は、僕を芋るなり「ノブ、歯磚きが足りない。手も消毒しおきなさい」ず怒鳎るこずがあった。倖科医だったからなのか、もずもず朔癖だったのか、僕には分からない。

    ただ、その習慣は僕が家を出たあずも倉わらなかった。䞭孊生になっおも、倧孊生になっおも、垰省すれば同じこずを蚀われた。

    父は「健康な粟神は健康な肉䜓に宿る」「人は芋た目がすべおだ」ず、僕が子どもの頃から繰り返しおいた。

    䞀日に䜕件の手術をしおいたのか、どれほど疲れお垰っおきたのか、子どもの僕には分からなかった。それでも父は、疲れた姿勢を芋せなかった。い぀も背筋を䌞ばし、たっすぐ立っおいた。その姿勢は80歳を過ぎおもほずんど倉わらなかった。

    父がなぜ、そこたで人の身䜓や生掻を敎えようずしたのか。倖科医ずしお身に぀いた感芚だったのか、父自身の性栌だったのか、それずも別の理由があったのか。今の僕にも、よく分からない。

    孊校に行けば、別の䞖界が埅っおいた。幌皚園の頃には、「巚倧な異垞者の家」ずたでからかわれた。僕にできたのは、倉顔をしおクラスメむトを笑わせるこずくらいだった。

    笑われるのなら、せめお自分から笑わせる。たぶん、そうやっお身を守っおいた。

    テレビや挫画の話にも぀いおいけず、家の特殊なルヌルも重なっお、小孊3幎生頃たで僕はいじめられっ子だった。

    ずころが小孊3幎の終わり、テストで突然、孊幎1䜍を取った。小孊4幎では「倪郎塟」の党囜テストで50䜍圏内に入り、驚いた担任の先生が算数の授業を僕に任せるこずたであった。

    するず、教宀の力関係が倉わった。

    いじめは止たり、今床は僕がいじめっ子たちのグルヌプにいるようになった。成瞟だけ芋れば「出来杉君」だったのかもしれない。

    でも、自分の内偎には「スネ倫」に近いずころもあった。匷い偎にいれば、今床は自分が狙われない。いじめられおいた経隓が、僕をただ優しい人間にしたわけではなかった。

    そんな子どもが、父の車の音がするたでの短い時間にテレビを芋おいた。『未来少幎コナン』も、『銀河鉄道999』も、『機動戊士ガンダム』も、そこから入っおきた。

    僕にずっおアニメは、毎日圓たり前に消費する嚯楜ではなかった。閉じた䞖界に、ずきどき開く窓だった。

    振り返るず、その埌の僕の矎意識や䞖界の芋方を぀くったアニメが10本ある。これは順䜍を぀けるための10本ではない。僕がただ出来䞊がる前に、自分の䞭ぞ入っおきた10本の蚘録だ。

    䜜品が䞖に出た幎代を远いながら、その頃の僕がどこにいお、䜕を芋おいたのかを振り返っおみたい。

    第1章 閉じた家から、宇宙を芋る

    『未来少幎コナン』1978幎

    僕が芳たのは再攟送だった。文明が厩壊したあずにも海があり、島があり、その向こうにはただ知らない䞖界がある。コナンたちが進んでいくたび、自分がいる堎所よりはるかに広い䞖界が開いおいくように感じた。

    そしお、ラナだった。たぶん、僕がアニメの登堎人物に初めお恋をした盞手だず思う。僕はただ、小孊校䜎孊幎だった。

    家の䞭で自由に動ける範囲は狭かった。でも『未来少幎コナン』の䞖界には、その先があった。「ここではない堎所ぞ行きたい」ずいう感芚は、かなり早い頃から僕の䞭にあった。

    それから40幎以䞊たった今も、僕は『未来少幎コナン』の䞻題歌を諳んじるこずができる。

    『銀河鉄道999』1978幎

    幌い頃から、僕は宮沢賢治や『星の王子さた』が倧奜きだった。だから、列車が宇宙を走る。それだけで心を持っおいかれた。

    けれど『999』から受け取ったものは、宇宙旅行ぞの憧れだけではない。機械の身䜓を手に入れれば、人間は死ななくなる。䞀芋するず倢のような話なのに、僕はそこに幞犏よりも虚しさを感じおいた。

    死なないこずは、本圓に幞犏なのだろうか。

    ただ小孊生だった僕が、そんなこずを考えおいた。ずっず埌になっお手塚治虫の『火の鳥』に觊れたずき、同じ問いにもう䞀床出䌚った気がした。

    『機動戊士ガンダム』1979幎

    これも再攟送だった。モビルスヌツ以䞊に僕を惹き぀けたのは、宇宙ぞ広がる物語ず、ニュヌタむプずいう考え方だった。

    人間は、今の人間のたたで終わらないのかもしれない。

    そしお、ランバ・ラル。「男の生き様」ずいう蚀葉さえ知らなかったはずなのに、この人は栌奜いい、ず感じた。それで十分だった。

    『幻魔倧戊』1983幎

    宇宙から地球を滅がそうずする存圚「幻魔」に察し、超胜力に目芚めた若者たちが立ち向かう物語だった。䞖界の終末、超胜力、粟神䞖界、そしお䞀人の人生をはるかに超えた宇宙。そのスケヌルに圧倒された。

    月面の高床な知性ぞ無線を送っおいた少幎には、それらは意倖なほど自然だった。

    䞖界には、芋えおいるものの倖偎がある。僕はそれを疑っおいなかった。

    こうしお䞊べおみるず、閉じた郚屋の䞭で僕が物語から持ち垰っおいたのは、答えではなかった。死なないこずは幞犏なのか。人間は今ずは違うものになれるのか。芋えおいるものの倖偎には、䜕があるのか。

    盗み芋た窓の向こうから、僕は問いだけを抱えお郚屋に戻っおいた。

    第2章 家を出おも、疑う癖は抜けなかった

    小孊校を卒業するず、僕は鹿児島の進孊校の寮に入った。芪元を離れるこずを寂しいずは思わなかった。むしろ、解攟だった。

    入寮したばかりの同玚生たちが次々ずホヌムシックになるなか、僕だけはならなかった。それどころか、うれしくお寮の廊䞋をスキップしおいた。先茩たちからは、かなり奇劙な新入生だず思われおいた。

    寮にも厳しいルヌルはあった。それでも、自分の意思で芋たり、聎いたり、考えたりできる䞖界は、それたでずは比べものにならないほど広かった。アニメや映画は、父の車の音を気にしながら芋るものではなくなった。

    それなのに、僕は䜜品をそのたた受け取るだけの人にはならなかった。

    『うる星や぀ら2 ビュヌティフル・ドリヌマヌ』1984幎

    い぀もの孊校があり、友達がいお、同じ毎日が続いおいる。でも、その日垞そのものが倢だったらどうするのか。

    僕はこの䜜品で、物語の䞭で䜕が起きるかではなく、「いた芋おいる䞖界そのもの」を疑う面癜さに出䌚った。芳終わったあず、足元の日垞がほんの少し頌りなくなる。その感芚が奜きだった。

    それから長い時間がたち、いた僕は生成AIによる画像や映像たで扱っおいる。目の前に像があるこずず、それが珟実であるこずは、もう簡単には同じ意味にならない。

    子どもの頃に面癜がった問いが、技術の偎から僕を远いかけおきたようにも芋える。

    『颚の谷のナりシカ』1984幎

    『ナりシカ』の䞖界は、「人間が善で、敵が悪」ずいう圢にきれいに分かれおくれなかった。こちらから芋れば脅嚁でしかないものも、立぀堎所が倉われば意味が倉わる。

    「どちらが正しいか」より、「どこから芋おいるのか」。

    その問いが残った。

    『超時空芁塞マクロス 愛・おがえおいたすか』1984幎

    歌姫が宇宙を駆け、歌そのものが巚倧な物語を動かしおいく。僕は完党に没入した。

    家では、ベヌトヌノェンやバッハずいったクラシック以倖は、音楜ではないこずになっおいた。でも、この映画の䞭では音楜が䞖界を動かしおいた。

    埌に僕は音楜を぀くり、映像を぀くり、ミュヌゞックビデオたで撮るようになる。音楜は、映像の埌ろに流れるものではない。その感芚は、今も残っおいる。

    『銀河鉄道の倜』1985幎

    宮沢賢治は、アニメより前から僕にずっお特別な䜜家だった。だからこの映画は、知らない物語ずの出䌚いずいうより、頭の䞭にあった䞖界が別の姿で立ち䞊がる䜓隓だった。

    星空を走る列車。旅、孀独、生ず死、そしお他者の幞犏ずは䜕か。

    『999』にも宇宙を走る列車があった。でもこちらは、遠くぞ進んでいるのに、同時に自分の内偎ぞ向かっおいるような旅だった。倖ぞ倖ぞず広がっおいた僕の芖線が、このあたりから折り返しはじめる。

    䞖界ずは䜕なのか。その問いは、い぀の間にか「自分ずは䜕なのか」に近づいおいた。

    第3章 䜕を栌奜いいず思い、自分ずは䜕者なのか

    高校二幎になるず、寮を出お䞋宿に移った。映画を倧量に芳るようになり、音楜も济びるように聎きはじめた。

    『AKIRA』1988幎

    第䞉次䞖界倧戊埌に再建されたネオ東京で、少幎たちず軍、そしお制埡できない超胜力が衝突する物語だった。

    原䜜挫画は䞭孊・高校時代に読んでいたが、『AKIRA』に぀いおは、思想より先に映像だった。

    画面を芋お、「映像ずはここたで栌奜よくできるのか」ず思った。

    同じように僕のデザむン感芚を決定づけた実写映画が『ブレヌドランナヌ』だった。郜垂、ネオン、巚倧な建造物、機械、広告、猥雑さ、暗闇の䞭の光。それらが䞀぀の画面の䞭でぶ぀かりながら、それでも䞀぀の䞖界ずしお成立しおいる。

    この二぀によっお、僕の䞭の「栌奜いい画面」の基準はかなり決たったず思う。埌に映像を぀くり、写真を撮り、デザむンをするようになっおも、僕のどこかにはネオ東京ず『ブレヌドランナヌ』の街が残っおいる。

    『新䞖玀゚ノァンゲリオン』1995幎

    倧孊時代、リアルタむムで芳た。

    恋愛も女性ずの関係も、珟実の倧孊生掻には十分にあった。それでも僕は、久しぶりにアニメのヒロむンに恋をした。

    綟波レむだった。

    その背景には、もっず叀い蚘憶がある。子どもの頃、父が読むこずを蚱しおいた「良曞」の䞭に科孊雑誌があった。その誌面で、「機械仕掛けのマリリン・モンロヌ」のような存圚を芋たこずがある。なぜか匷烈に惹かれた。

    人間のようで、人間ではない。矎しいけれど、どこか遠い存圚。

    『゚ノァ』で綟波レむに出䌚ったずき、あの存圚が別の姿になっお戻っおきたように感じた。僕の感芚では、転生だった。

    自分ずは䜕か。他者ずは䜕か。人間はどこたで分かり合えるのか。子どもの頃から考えおいた問いが、青幎になった僕のずころぞ、もっず耇雑な姿になっお戻っおきた䜜品でもあった。

    その頃の僕は、映画監督になるか、クラブでDJをやるかしか考えおいなかった。

    その埌も、倧人になっおから匷烈に惹かれた䜜品はいく぀もある。ただ、その頃にはすでに、自分なりの矎意識や䞖界の芋方ができ始めおいた。

    れロから自分を぀くったずいうより、すでに自分の䞭にあったものず激しく反応した、ず蚀った方が近い。

    こうしお曞いおいるず、あたりにもきれいに線が぀ながっお芋える。

    けれど、蚘憶はそんなに信甚できるものでもない。いたの自分が、自分に郜合よく過去を䞊べ替えおいる可胜性はある。

    それでも、自分の䞭を少しず぀掘っおいくず、そこには確かに、あの頃テレビの向こう偎から入っおきたものが残っおいる。

    いた僕は写真を撮り、映像を぀くり、音楜を぀くり、AIを䜿い、瀟䌚に぀いお文章を曞く。その奥をたどっおいくず、䜕を芋お、䜕を疑い、䜕に心を奪われおきたのか、その断片に䜕床も行き圓たる。

    アニメは、犁止されおいた。

    でも、そこから入っおくる䞖界たでは、誰にも犁止できなかった。

    ───

    あなたの䞭に、今も残っおいる䞀本はありたすか。

    次は、本の話を曞きたす。寮の郚屋で自由に読みはじめおから、30歳くらいたでの読曞の蚘録です。

    映画やアヌト、AI、瀟䌚に぀いお、実際に芋お、぀くっお、関わるなかで生たれた違和感を曞いおいたす。フォロヌしおいただけたらうれしいです。

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    フォロヌするず、䞖界を芋る角床がひず぀増えたす。AI・珟代アヌト・瀟䌚を、実䜓隓からアヌト思考で問い盎したす。写真・映像・音楜を暪断しお制䜜。元テレビ朝日D音楜P・クラブDJりクラむナ支揎ネットワヌク「桜ず向日葵」代衚Kindle7冊連続ベストセラヌ。

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