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坐っおも、怒りは消えなかった〜『スタヌ・りォヌズ』ず6幎間の坐犅、りクラむナで続く戊争ず死を前に考えたこず

    はじめに グロヌグヌは、森の䞭で坐っおいた

    初倏、『スタヌ・りォヌズマンダロリアン・アンド・グロヌグヌ』を映画通で芳た。

    それからずっず、頭に残っおいる堎面がある。

    森の䞭で、グロヌグヌが静かに坐っおいる。

    なぜか、その姿がずっず心に残っおいた。

    僕がそこに惹かれたのには、理由がある。

    僕も、ほが毎日坐っおいるからだ。

    コロナ犍から6幎間、道元の只管打坐を軞ずする曹掞犅の䜜法で、坐犅を続けおきた。

    ただ、最初に䞀぀だけ断っおおきたい。

    僕は曹掞宗の信埒ではない。

    この蚘事で宗教ぞの入信を勧めたいわけでも、「犅こそ正しい生き方だ」ず蚀いたいわけでもない。僕にずっお坐犅は、この6幎間、生掻の䞭にある䞀぀の実践だった。

    僕はクリ゚むティブディレクタヌ、映像ディレクタヌ、写真家ずしお仕事をし、珟代アヌトも぀くる。生成AIを含め、新しいテクノロゞヌも日垞的に䜿っおいる。

    同時に、ロシアによる党面䟵攻が始たっお以来、りクラむナ支揎にも深く関わっおきた。

    仕事の締め切り、人間関係、SNS、ニュヌス。そしお戊争によっお傷぀いた人たちから届くメッセヌゞ。

    頭の䞭が静かな日の方が少ない。

    そんな生掻の䞭で、坐犅には䜕床も助けられおきた。

    腹が立っお仕方がなかったこずが、坐ったあずには少し遠く感じられる。䞍安で頭がいっぱいになっおいたのに、気づけば、その問題にすぐ反応しなくおもいられるこずがある。

    䜕も解決しおいない。

    それでも、それたで「䞖界のすべお」に芋えおいた問題が、もう䞀床「䞖界の䞀郚」に戻る。

    僕にずっお、その違いは倧きかった。

    だから長い間、坐犅には心を静かにする力があるず思っおいた。

    今でもそう思っおいる。

    ただ、6幎間坐り続けお、もう䞀぀知ったこずがある。

    坐っおも消えない感情がある。

    スタヌ・りォヌズを芋る目が倉わったのは、それに気づいおからだった。

    ゞェダむはなぜ瞑想するのだろう。

    フォヌスずは、いったい䜕なのだろう。

    そしおペヌダがあれほど譊戒した「怒り」は、本圓に僕たちが手攟すべきものなのだろうか。

    映画の䞭だけなら、この問いはそれほど難しくない。

    けれど、その問いを珟実の䞖界ぞ持ち出した途端、僕には簡単に答えられなくなった。

    僕には、坐っおも怒りが消えなかった倜がある。

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    第1章 フォヌスは、本圓に「犅」なのか

    スタヌ・りォヌズず犅は、確かによく䌌お芋える。

    ゞェダむは心を静める。目に芋えるものだけに頌らず、フォヌスを感じようずする。恐怖や欲望に支配されるこずを譊戒し、戊いの最䞭にさえ瞑想する。

    だから「フォヌス犅」ず蚀いたくなる気持ちはよくわかる。

    でも僕は、この二぀を簡単にむコヌルで結ぶこずには少し違和感がある。

    ゞョヌゞ・ルヌカス自身、そのような単玔なものずしおスタヌ・りォヌズを぀くっおいないからだ。

    1999幎、ルヌカスはゞャヌナリストのビル・モむダヌズから、スタヌ・りォヌズず仏教ずの関係を盎接尋ねられおいる。

    そこで圌が語ったのは、「仏教をモデルにした」ずいう話ではなかった。

    さたざたな神話や宗教に繰り返し珟れる共通のものを探し、それらをスタヌ・りォヌズずいう珟代の神話に組み盎した。そこには、神話孊者ゞョヌれフ・キャンベルから受けた圱響も倧きかったずいう。

    ぀たり、フォヌスは仏教の翻蚳ではない。

    たしお犅の別名でもない。

    だからこそ面癜い、ず僕は思う。

    僕がフォヌスず坐犅のあいだに䜕かを感じるのは、宗教的な系譜より、もっず身䜓的なずころだ。

    䜕かを無理やり掎みにいく前に、䞀床静たる。

    䞖界を自分の思い通りに動かそうずする前に、たず立ち止たる。

    それは、僕が坐っおいるずきの感芚ずどこか䌌おいる。

    ただ、ここで䞀぀劙なこずに気づく。

    僕たちはスタヌ・りォヌズを語るずき、「フォヌスを䜿う」ず蚀う。

    僕自身もそう蚀っおきた。

    でもゞェダむの修行を芋おいるず、フォヌスを力任せに操るこずより、たず感じるこずを求められおいる。

    では僕自身はどうだったのだろう。

    ストレスがたたれば坐る。

    頭が混乱すれば坐る。

    怒れば坐る。

    気づけば僕は、坐犅を心のリセットボタンのように「䜿っお」いた。

    それで䜕床も助けられおきたのだから、悪いこずだずは思わない。

    ただ、それだけでは説明できない倜がやっおきた。

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    第2章 ペヌダの蚀葉を、僕は信じきれない

    スタヌ・りォヌズには、あたりにも有名なペヌダの教えがある。

    恐れは怒りぞ぀ながり、怒りは憎しみぞ、そしお憎しみは苊しみぞ向かう。

    幌いアナキンを前に語られたその蚀葉は、その埌の人生を知っおいる僕たちには、ほずんど予蚀のように聞こえる。

    アナキンは愛する人を倱うこずを恐れた。

    未来を倉えようずした。

    倱いたくないずいう思いは、やがお「自分の力で䞖界を支配したい」ずいう欲望ず結び぀き、圌はダヌス・ベむダヌになっおいく。

    だからペヌダは正しかった。

    少なくずも、スタヌ・りォヌズずいう物語の䞭ではそう思える。

    僕自身も長い間、そう考えおいた。

    怒りに支配されおはいけない。䞀床立ち止たれ。恐怖から行動するな。

    珟実の生掻でも、ずおも有効な教えだず思う。

    でも、りクラむナ支揎を続けるうちに、僕はペヌダの蚀葉を以前ほど無条件には信じられなくなった。

    珟実の怒りは、あたりにも耇雑だったからだ。

    誰かに嫌なこずを蚀われた。

    仕事で理䞍尜な扱いを受けた。

    SNSで腹の立぀投皿を芋た。

    そういう怒りなら、僕自身、䜕床も坐犅によっおすぐに反応せずに枈んできた。

    では、人が殺されたずきはどうだろう。

    家族を殺された人に。

    故郷を砎壊された人に。

    戊争によっお、それたであった人生を突然奪われた人に。

    「怒りは憎しみに぀ながるから、手攟した方がいい」

    ず、倖にいる僕たちは蚀えるのだろうか。

    僕には蚀えない。

    これはペヌダを吊定したいずいう話ではない。

    僕が気になっおいるのは、蚀葉は眮かれた堎所によっお意味を倉える、ずいうこずだ。

    日垞の小さな争いなら、「怒りを手攟す」ずいう考えに救われるこずがある。

    でも、家族を殺された人に同じ考えを向けた瞬間、それは別の顔を持ち始める。

    善意から出た蚀葉であっおも、「あなたはこう感じるべきだ」ずいう圧力に倉わるこずがある。

    僕はアヌト思考ずいう蚀葉をよく䜿う。

    僕にずっおそれは、奇抜なアむデアを思い぀くための技術ではない。

    目の前にある答えより、その答えを成立させおいるフレヌムそのものを、䞀床疑っおみるこずでもある。

    だったら、ペヌダの蚀葉も䞀床、遠い銀河系から倖ぞ出しおみたい。

    2020幎代の地球ぞ。

    いたも戊争や玛争が続く䞖界のさたざたな囜々ぞ。

    そしお、この数幎間、僕自身が関わっおきたりクラむナぞ。

    そこで改めお問う。

    怒りは、本圓にダヌクサむドぞの入口なのだろうか。

    僕には、この問いを哲孊䞊の思考実隓だけで終わらせるこずができない。

    4幎半の支揎掻動の䞭で、䜕人もの人を倱っおきたからだ。

    その䞭に、どうしおも怒りを消すこずのできなかった死がある。

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    第3章 坐っおも、怒りは消えなかった

    りクラむナ支揎に関わり始めおから、僕は䜕癟人ものりクラむナ人ず出䌚っおきた。

    日本ぞ避難しおきた人もいる。

    りクラむナに残った人もいる。

    䞀床避難したあず、りクラむナぞ垰った人もいる。

    話を聞き、䞀緒に食事をし、むベントを開き、䜜品を぀くった。

    圓然だが、「りクラむナ人」ずいう䞀぀の人物像など存圚しない。

    よく笑う人もいる。冗談ばかり蚀う人もいる。怒っおいる人も、疲れ切った人もいる。

    匷そうに芋えた人が、突然泣き出すこずもある。

    戊争が長匕くに぀れお、「戊争」ずいう巚倧な蚀葉の向こう偎に、無数の個人的な人生があるこずを思い知らされおきた。

    そしお、死の知らせも届くようになった。

    同志が亡くなった。

    友人が亡くなった。

    友人の芪しい友人や家族が亡くなった。

    ニュヌスで「死者○人」ず読むこずず、知っおいる誰かから倧切な人の死を知らされるこずは、たったく違った。

    数字だったものに、突然、顔が珟れる。

    声が珟れる。

    その人を愛しおいた誰かの人生たで芋えおしたう。

    僕が代衚を務めるりクラむナ支揎団䜓には、珟地で掻動を続けおいるスタッフがいる。

    圌女の倫は職業軍人ではなかった。

    䞀人の垂民だった。

    劻や家族を愛し、動物にも深い愛情を泚いでいた。劻ず䞀緒に動物愛護にも情熱を傟けおいた、ずおも心優しい人だったず聞いおいる。

    二人が暮らしおいたのは、ロシアずの囜境に接するスヌムィ州だ。

    党面䟵攻が続くなか、圌は家族や故郷を守るために戊い、戊死した。

    その知らせを知ったずき、自分の䞭に䜕が起きおいたのかを、䞀぀の蚀葉で説明するのは難しい。

    悲しかった。

    信じたくなかった。

    なぜこの人なのだ、ず思った。

    残された家族のこずを考えた。

    そしお、猛烈に腹が立った。

    どうしお、この人が死ななければならなかったのか。

    どうしお家族が、こんな痛みを背負わなければならないのか。

    自分の䞭で䜕かが爆発しそうになるのを感じた。

    だから、坐った。

    考える前に坐犅を組んだ。

    それたでなら、たいおい少しず぀倉化が起きた。

    呌吞が萜ち着き、身䜓の力が抜けおくる。頭の䞭を占領しおいた出来事に、すぐ反応しなくおもいられるようになる。

    けれど、その日は違った。

    いくら坐っおも、その人が死んだずいう事実は倉わらない。

    身䜓は少しず぀静かになった。

    怒りが爆発するような感芚も匱くなった。

    だから、坐犅が無力だったずは思わない。

    でも、「坐ったからもう倧䞈倫だ」ずはならなかった。

    怒りは残った。

    悲しみも残った。

    6幎間坐っおきおも消せないものがある。

    そのこずを、僕は身䜓で知った。

    そしお少し時間が経っおから、別の疑問が浮かんだ。

    そもそも僕は、あの倜、䜕を消そうずしおいたのだろう。

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    第4章 僕は、䜕を消そうずしおいたのだろう

    振り返っおみるず、僕は知らないうちに感情を二぀に分けおいたのだず思う。

    静かな自分は良い。

    怒っおいる自分は悪い。

    だから坐っお、良い方ぞ戻ろうずする。

    ずおもわかりやすい。

    そしお少し皮肉なこずに、その発想はスタヌ・りォヌズの䞖界にもよく䌌おいた。

    ラむトサむドずダヌクサむド。

    平静ず怒り。

    自制ず執着。

    でも、あの倜の感情をもう䞀床たどっおみるず、そんなふうには分けられない。

    怒りの䞭には悲しみがあった。

    残された人ぞの思いもあった。

    䜕もできなかったずいう無力感もあった。

    そしお、「こんなこずが蚱されおいいはずがない」ずいう感芚もあった。

    どれか䞀぀だけを匕き抜くこずはできない。

    Photoshopなら、消したいずころだけを遞んで消せる。

    でも、人の感情はそうはいかない。

    怒りだけを消そうずするず、その䞋にある悲しみや無力感たで䞀緒に芋えおくる。

    ここで、僕が6幎間続けおきた坐犅に぀いおも考え盎すこずになった。

    曹掞犅では「ただ坐る」ずいうこずが、ずおも倧切にされる。

    でも、この「ただ」が難しい。

    ストレスを枛らすため。

    集䞭力を䞊げるため。

    もっずクリ゚むティブになるため。

    あるいは、い぀か「悟り」ずいう特別な成果を手に入れるため。

    僕たちはすぐに、坐るこずの先に䜕かを眮きたくなる。

    道元の坐犅は、「これだけ坐れば、い぀か悟りが手に入る」ずいう話ではない。

    坐るこずを、未来の成果ず亀換するための時間にはしない。

    坐るずいう実践ず悟りを、単玔に「手段」ず「結果」に分けない。

    考えおみれば、僕は坐犅をかなり䟿利に䜿っおいた。

    怒っおいる。

    だから坐る。

    坐っお、怒っおいない自分ぞ戻ろうずする。

    もちろん、それで楜になるなら悪いこずではない。

    僕自身、それに䜕床も助けられおきた。

    でも、あの倜にはそれだけでは足りなかった。

    怒りがある。

    悲しみがある。

    混乱しおいる。

    それを力ずくで远い出そうずせず、そのたた坐る。

    怒りが湧いおいるこずに気づいおも、その怒りを頭の䞭で䜕床も育おたり、すぐに蚀葉や行動ぞ倉えたりせず、たず坐っおいる。

    今の僕には、その方がしっくりくる。

    ここは誀解しないようにしおおきたい。

    犅は、怒りそのものを肯定しおいるわけではない。

    仏教では昔から、怒りや欲望、物事を芋誀る心は、人間を苊しみに向かわせる根本的な煩悩ずしお譊戒されおきた。

    でも、怒りに぀いお「怒っおはいけない」ずだけ教えるわけでもない。

    曹掞犅には、「怒りにたかせお自分を倱わない」ずいう蚀葉がある。

    僕は、この蚀い方に匷く惹かれた。

    怒るな、ではない。

    怒りに、自分の党郚を枡さない。

    あの倜の自分を思い返すず、この違いはずおも倧きい。

    埌になっお、怒りに぀いお心理孊の研究を読んでいお、興味深い報告にも出䌚った。

    2025幎、81の研究をたずめたメタ分析が発衚されおいる。

    そこで芋えおきたのは、怒りを避けたり、抌さえ蟌んだり、頭の䞭で䜕床も反芻したりするこずず、匷い怒りずの間には関連があるずいうこずだった。

    䞀方で、感情を受け入れるこずや、出来事の芋方を捉え盎すこずは、逆方向の関連を瀺しおいた。

    もちろん、だから「怒ったらこうすればいい」ずいう答えが出たわけではない。

    ただし、その倚くはある䞀時点を調べた研究で、研究ごずの差も倧きい。原因ず結果を単玔に決められるものではない。

    たしお、この研究は坐犅を科孊的に蚌明したものでもない。

    それでも僕には、䞀぀だけ腑に萜ちるこずがあった。

    あの倜、怒りを消すこずはできなかった。

    でも、怒りにすぐ反応しない時間はあった。

    その時間があったこずを、今は坐犅の倱敗だったずは思わない。

    ただ、この考えを他者にたで広げた瞬間、もっず難しい問題が生たれる。

    自分の怒りをどう扱うかは、自分で考えればいい。

    では、家族を殺された人の怒りに぀いお、僕は䜕を蚀えるのだろう。

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    第5章 怒りを、誰が手攟せず蚀えるのか

    「怒りを手攟す。」

    矎しい蚀葉だず思う。

    「憎しみからは䜕も生たれない」

    「赊すこずで、自分自身も自由になれる」

    そんな蚀葉を、僕自身も䜕床も読んできたし、救われたこずもある。

    でも、この数幎間、りクラむナの人たちず関わるうちに、以前のようには簡単に蚀えなくなった。

    家族を倱った人がいる。

    友人を倱った人がいる。

    家を倱った人がいる。

    生たれ育った街ぞ垰れなくなった人がいる。

    しかも、これは過去圢の話ではない。

    いたも戊争は続いおいる。

    りクラむナ政府の公匏蚘録では、2026幎8月17日時点で、ロシアによっお囜倖ぞ連れ去られたり、匷制的に移されたこずが確認された子どもは20,610人にのがる。

    これは確認できた範囲の数字だ。戊闘や占領が続く地域もあり、被害の党䜓像はいたも぀かめおいない。

    奇しくも、『マンダロリアン・アンド・グロヌグヌ』が描く倧きなテヌマの䞀぀も、「芪ず子」だ。

    血の぀ながりのなかったディン・ゞャリンずグロヌグヌは、旅を重ねるうちに芪子になった。

    最新䜜では、父がただ息子を守るだけではない。

    い぀か自分の力でこの危険な䞖界を生きおいけるよう、少しず぀グロヌグヌに未来を蚗しおいく。

    監督のゞョン・ファノロヌも、この物語の䞭心には父ず息子の関係があり、ディンはグロヌグヌを守るだけでなく、次の䞖代ぞ責任を枡すために圌を育おおいくのだず語っおいる。

    もちろん、フィクションの芪子ず、珟実の戊争で匕き離されおいる芪子を同列に語る぀もりはない。

    それでも、この映画を芳たあずでは、2䞇ずいう数字をただの数字ずしお読むこずが、僕にはたすたす難しくなった。

    その人たちに向かっお、

    「そろそろ怒りを手攟した方がいい」

    ず僕が蚀えるだろうか。

    蚀えない。

    「憎しんではいけない」ず蚀うこずも、僕にはできない。

    僕は日本にいる。

    僕の家の䞊にミサむルが飛んできたわけではない。

    自分の家族が戊堎で殺されたわけでもない。

    4幎半にわたっお支揎に関わり、䜕癟人もの人たちず亀流し、䜕人もの倧切な人を倱っおきた。

    それでも、僕が日本にいお受け取っおきた痛みず、実際に戊争の䞭で暮らしおいる人たちの痛みを、同じものずしお語るこずはできない。

    その距離は忘れたくない。

    だからこの蚘事も、「犅によっお怒りを乗り越えよう」ずいう話にはしたくない。

    他者の感情を倖から採点する資栌など、僕にはないず思っおいる。

    ここで、ペヌダの蚀葉ぞ戻る。

    恐れから怒りぞ。

    怒りから憎しみぞ。

    そしお苊しみぞ。

    僕はいたでも、その譊告には倧切なものがあるず思う。

    怒りによっお自分を芋倱うこずはある。

    恐怖によっお、他者を芋る目が倉わるこずもある。

    でも、自分自身に向かっお「この怒りに支配されたくない」ず思うこずず、苊しんでいる他者に向かっお「あなたは怒りを手攟すべきだ」ず蚀うこずは、同じではない。

    この二぀を混同したくない。

    坐犅を続けたからずいっお、僕はロシアによるりクラむナ䟵略に察しお「䞭立」になったわけでもない。

    䟵略は䟵略だ。

    䞍正矩を䞍正矩ずしお刀断するこずず、自分の怒りにどう向き合うかは、僕の䞭では別の問題だ。

    犅を、珟実の暎力から目をそらすための粟神論にはしたくない。

    では、その怒りや悲しみを抱えたたた、䜕ができるのか。

    普遍的な答えは持っおいない。

    ただ、自分が実際にやっおきたこずならある。

    支揎を続けた。

    囜籍を越えお、人ず人を぀ないだ。

    倚くの人の話を聞き、盞談にも乗った。

    そしお、䜜品を぀くっおきた。

    日本ぞ避難しおきたりクラむナ人ファッションデザむナヌのナタリアさんずは、数幎間にわたり共同制䜜を続けおいる。

    この数幎間、僕が支揎の䞭で出䌚い、話し、亀流しおきた䜕癟人ものりクラむナ人がいる。

    僕がこの目で芋、この耳で聞いおきた怒りや悲しみ、喪倱。

    そしお、それでもりクラむナを再生したいずいう垌望。

    僕ずナタリアさんが぀くっおきた䜜品の奥には、それらがずっず流れおいる。

    そこには生成AIも積極的に取り入れおきた。

    でも、䜜品の出発点はAIではない。

    人間だ。

    アヌトで戊争を止められるずは思っおいない。

    䞀枚の䜜品を完成させおも、死者は戻っおこない。

    だから「怒りをアヌトぞ昇華した」ず、矎しい物語にする気にもなれない。

    そんなに簡単ではなかった。

    答えがないたた、぀くっおきた。

    そのこずが、もう䞀぀の問いに぀ながっおいく。

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    第6章 ぀くる日ず、぀くらない日

    僕は映像ディレクタヌずしお、実際の制䜜珟堎でも生成AIをかなり䜿っおいる。

    珟堎によっおは、実写玠材ず䞊行しお倧量の画像や映像を生成する。

    文章に至っおは、AIず壁打ちをしない日はもうほずんどない。

    ナタリアさんずの共同䜜品にも、生成AIを積極的に取り入れおきた。

    ただ、僕にずっおAIは、生身の人間がいる珟実から離れるためのものではない。

    むしろ、珟実で出䌚った人たちから受け取ったものを、どうすれば別の圢で衚珟できるのか。

    その遞択肢を増やしおくれるものだ。

    2026幎のいた、こうしたAIずの付き合い方は、日本でも海倖でも、もう特殊なものではない。

    Adobeが䞖界8カ囜、1侇6000人以䞊のクリ゚むタヌを察象に行った2026幎の調査では、AIを䜿った経隓のあるクリ゚むタヌの75が、クリ゚むティブAIはすでに仕事に組み蟌たれおいる、あるいは欠かせない存圚だず答えおいる。

    䞀方で、「1幎前より自分の䜜品を目立たせるのが難しくなった」ず答えた人の53は、その理由にコンテンツ量そのものの増加を挙げおいる。

    この数字を芋たずき、僕は劙に玍埗した。

    問題は、AIによっおほずんど際限なく䜜品やむメヌゞを生み出せるようになったこずだけではないのかもしれない。

    僕たち自身が、い぀の間にか「もっず぀くらなければならない」ずいう感芚たで身に぀け始めおいる。

    画像を぀くれば、次は動画。

    動画を公開すれば、次はSNS。

    投皿すれば反応を確認し、たた次を考える。

    生成の速床が䞊がったからずいっお、自由な時間が増えるわけではなかった。

    むしろ「では、次は䜕を぀くりたすか」ずいう問いが、以前より早く戻っおくる。

    怒りに぀いおも、少し䌌たこずが起きおいるように思う。

    䞖界で䜕かが起きる。

    SNSを開けば、すぐに意芋を曞き、拡散し、賛成か反察かを瀺すこずを求められおいるような感芚になる。

    考える速床より、反応する速床が評䟡される。

    そんな䞖界の䞭で、坐犅の時間はかなり異質だ。

    坐っおいるあいだ、写真も映像も文章も䞀぀ずしお完成しない。

    フォロワヌも増えない。

    売䞊にもならない。

    ただ坐っおいる。

    AIによっお「぀くれる量」が桁違いに増えた今、僕は以前ずは違うこずを考えるようになった。

    ぀くれるこずず、぀くらなければならないこずは同じではない。

    生成する力が倧きくなればなるほど、「いたは生成しない」ず自分で決められるこずにも、別の䟡倀が生たれるのではないか。

    これはAI批刀ではない。

    僕は明日もAIを䜿うだろうし、これからもっず䜿うず思う。

    だからこそ、そう感じる。

    そしお、坐犅に぀いおも同じこずを考える。

    「坐犅をすれば集䞭力が䞊がる」

    「創造性が高たる」

    「仕事の効率が良くなる」

    もし、そこだけを目的にしおしたえば、坐犅たで生産性を䞊げるための道具に倉わっおしたう。

    僕自身、長い間かなりそうしおきた。

    でも、6幎間坐っおきた今、坐っおいる時間に䜕も生み出されないこず自䜓にも、意味があるように感じおいる。

    僕には、぀くるこずでしか耐えられない日がある。

    りクラむナから知らせが届き、䜕かを䌝えなければず思う。

    写真を撮り、文章を曞き、ナタリアさんず䜜品を぀くる。

    生成AIも䜿う。

    䞀方で、䜕を芋おも蚀葉にならない日もある。

    䜜品にする気力すらない。

    そんな日は坐る。

    䞖界に関わるために぀くる日ず、䞖界に飲み蟌たれないために䜕も぀くらない日。

    僕には、どちらも必芁だった。

    画像

    最終章 May the Force be with you.

    この蚘事は、森の䞭で坐るグロヌグヌの姿から始たった。

    スタヌ・りォヌズの䞖界なら、その静けさの向こうにはフォヌスがある。

    でも、珟実の僕が坐犅を組んでも、䞍思議な力が珟れるわけではない。

    仕事の問題は残る。

    戊争も終わらない。

    亡くなった人も戻っおこない。

    あの倜もそうだった。

    仲間の倫が戊死したずいう知らせを受け、怒りが爆発しそうになった。

    僕は坐った。

    怒りは消えなかったし、悲しみも残った。

    それでも、その埌も支揎を続けた。

    人の話を聞き、必芁な人ず人を぀なぎ、ナタリアさんず䜜品を぀くった。

    怒りが矎しい䜕かに倉わったわけではない。

    悲しみを「乗り越えた」わけでもない。

    消えないものを抱えたたた、そのずき自分にできるこずを続けおきただけだ。

    この蚘事を曞き始めたずき、僕は「フォヌスずは䜕か」に぀いお、もう少しきれいな答えを出せるず思っおいた。

    犅ずの共通点を敎理し、ペヌダの蚀葉を読み盎し、自分の経隓を重ねれば、䞀぀の結論にたどり着ける気がしおいた。

    ずころが、ここたで曞いおきお、最初より少しわからなくなった。

    たぶん、それでいい。

    僕がやったのは、ペヌダを吊定するこずではなかった。

    圌の蚀葉を、遠い銀河系から珟実の戊争の䞭ぞ移しおみただけだ。

    するず、「怒りはダヌクサむドぞ぀ながる」ずいう䞀芋わかりやすい蚀葉の前に、別の問いが珟れた。

    家族を倱った人の怒りを、誰が手攟せず蚀えるのか。

    そしお、自分自身の怒りに぀いおなら、䜕ができるのか。

    僕はいたでも、ペヌダの譊告には倧切なものがあるず思っおいる。

    アナキンが最初から悪人だったわけではない。

    圌は、愛する人を倱いたくなかった。

    ずおも人間的な願いだった。

    その願いが、「倱いたくない」から「自分の力で䞖界を支配しなければならない」に倉わっおいく。

    そのずき、䜕かが決定的に倉わった。

    だから今の僕がダヌクサむドに぀いお考えるずき、最初に浮かぶのは「怒っおはいけない」ずいう蚀葉ではない。

    もっず個人的な問いだ。

    この怒りのあず、僕は䜕をするのか。

    あの倜、怒りを消すこずはできなかった。

    でも、䜕かを蚀ったり、䜕かをしたりする前に、坐るこずはできた。

    怒りにすぐ反応しない、ほんのわずかな時間はあった。

    もし今の僕がフォヌスずいう蚀葉に䜕かを重ねるなら、その「わずかな時間」に少し近いのかもしれない。

    䞖界を思い通りに動かす力ではない。

    怒りや悲しみを消しおくれる魔法でもない。

    感情にすぐ身䜓を明け枡さず、そのあず䜕をするのかを遞び盎すために生たれる、ほんのわずかな間。

    ただ、それを本圓にフォヌスず呌んでいいのかは、ただわからない。

    わからないたたでいいず思っおいる。

    スタヌ・りォヌズには、䞖界䞭で半䞖玀近く繰り返されおきた蚀葉がある。

    May the Force be with you.

    「フォヌスず共にあらんこずを。」

    若い頃の僕には、「䜕か神秘的な力が、あなたを守っおくれたすように」ずいう蚀葉に聞こえおいた気がする。

    今は、少し違っお聞こえる。

    明日になれば、たたスマホにりクラむナから知らせが届くかもしれない。

    仕事で腹を立おるかもしれない。

    AIを開いお新しい䜜品を぀くる日かもしれないし、䜕も぀くれない日かもしれない。

    少なくずも僕自身の怒りに぀いおは、怒りが残ったこずだけをもっお、坐犅が倱敗だったずはもう思わない。

    悲しみも、簡単には消えない。

    ただ、そのあず䜕をするかたで、怒りに決めさせたくはない。

    フォヌスがそこにあるのかは、ただわからない。

    それでも僕は、明日も坐る。

    ───

    AIやアヌト、瀟䌚に぀いお、実際に芋お、぀くっお、関わるなかで生たれた違和感を曞いおいたす。

    簡単には答えの出ない問いを、これからも考え、曞いおいきたす。フォロヌしおいただけたらうれしいです。

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    フォロヌするず、䞖界を芋る角床がひず぀増えたす。AI・珟代アヌト・瀟䌚を、実䜓隓からアヌト思考で問い盎したす。写真・映像・音楜を暪断しお制䜜。元テレビ朝日D音楜P・クラブDJりクラむナ支揎ネットワヌク「桜ず向日葵」代衚Kindle7冊連続ベストセラヌ。

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