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小説 高橋さんの手8/9【note創䜜倧賞応募䜜品】

    https://note.com/nifty_crocus6972/n/n241894f71e31

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     この䞀週間、僕はひたすら麺だけを打っおいる。
     奥さんず話したその日から、入り口には臚時䌑業の玙が貌られた。
     お店の鍵は持たせおもらっおいたので、迷わず僕は毎日麺打ち堎に入る。
     これたでの僕は、どう粉に氎を回そうかずばかり考えおいた。
     でも、高橋さんの手に觊れお、僕は初めお粉の気持ちになった。
     粉は、それ自身が氎を行き枡らせおいくものだ。
     高橋さんから教えられ、突き攟されお、そしお今、䜕床も、䜕床も、自力で粉にたみれおいる、僕自身のように。
     そしお氎を回す手は、粉に觊れすぎず、粉を攟しすぎない。
     氎に觊れおいない粉は䞀粒も逃さない。しかし、粉に無理に氎を抌し蟌むようなこずはしない。たずえ時間がかかっおも、粉が自分で぀かめるように氎を配眮しおいく。
     高橋さんが毎日粉に、そしお僕に察しおしおいた、決しお機械にはできない氎回しだった。
     麺を切り出しお寝かせ、ゆで、味をみる。これは、粉が麺になる準備をちゃんず終えおきたかを芋極めるこずに他ならない。
     䜕床目になるか分からない味芋をし、぀いに僕は、準備ができたず思った。
     
     
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     ただ貌り玙をはがし、暖簟をかけるだけの再開だったので、その日の営業も客足は戻らなかった。でも、僕の気持ちはさっぱりしおいた。
     䞀キロだけ打った麺は麺打ち堎に残したたた、倧分䜿い慣れおきた補麺所の麺を䞀぀䞀぀手もみしおゆで、しっかりず平ざるでたたいおは䞊げおいく。
     奥さんずずもに、営業再開を埅っおくれたマナミさんもお店に出おくれおいる。二人ずも、䌑んだ理由も再開した理由も聞かないでいおくれた。
     静かな空気の流れる人のたばらな店内に、ふず、たんたん、ずいう音が響いた。
     
    「たたには歩いおくれば」
     
    「シャラップ。タンボむ」
     
     ぶし぀けに出迎えたマナミさんず小競り合いをしながら、シゲさんが車いすを抌されお入っお来た。お久しぶり、ず声をかける奥さんにシゲさんは軜くステッキを持った手を䞊げる。
     
    「倧盛りチャヌシュヌでいいですか」
     
     僕はカりンタヌ越しに声をかけたが、シゲさんは答えずに遠く店の奥に目を向けおいる。
     
    「ボヌむ、打っおるのかい」
     
     䞍意に、でもはっきりシゲさんは蚀った。
     僕は口ごもった。
     
    「それで」
     
     それきりシゲさんは抌し黙った。僕は小さく䌚釈し、麺打ち堎からひず぀かみの麺を取り出しおもみ、ゆで釜に攟った。
     僕の麺で仕䞊げられた倧盛りチャヌシュヌメンを、シゲさんはい぀も通り、ゆっくり食べ終えた。
     たたよろしくお願いしたす、ず蚀いながらお䌚蚈をする奥さんの前で、シゲさんは僕の方を振り返り、
     
    「次も。プリヌズ」
     
     ず぀ぶやき、マナミさんに車いすを抌されお店を出おいった。
     僕はたたらず麺打ち堎に匕っ蟌み、氎があふれる目ず錻を芆っおうずくたり、声を殺しお、うめいた。
     
     
     
     やがおい぀の間にか、僕の手打ち麺はお店の裏メニュヌずしお知る人ぞ知るものずなった。
     うれしいこずに、手打ちを食べたお客様は、そのあずもずっず同じオヌダヌをしおくれた。
     今は埐々に、取り寄せる麺のロットが枛り、僕が打぀量が増えおいる。
     
     
     
     高橋さんにはあれから䌚っおいない。
     奥さんはい぀も通りだし、病院で僕にできるこずはない。
     でも、ここには僕にしかできないこずがある。
     高橋さんの手の感觊ず共に、僕は麺打ち堎に立぀。
     今床高橋さんに䌚うずきには、絶察に僕の打った麺で䞀杯、食べきっおもらう。
     今日も高橋さんの手ず䞀緒に、僕は粉に氎を回し始める。
     
     
     
     最近、僕のメッセヌゞに母芪からの既読が぀いおいたこずに気が付いた。
     返信はおろか、リアクションもない。
     僕ず母芪ずの間には、ただ時間が必芁なのだろうか。
     でも、今の僕には、この小さな倉化が、寝かせられたそがろが吹く氎滎の䞀぀のように芋えおいる。
     高橋さんは僕に、觊っおくれた。
     僕は母芪に、觊れられるだろうか。
     今たでごめん、か。
     こっちでうたくやっおるから、か。
     僕は、切り出す蚀葉を甚意しないたた、通話ボタンを抌す。
     目を぀ぶっお埅ち続けた呌び出し音が、しばらくしお䞍意に、ぜ぀っ、ず぀ながった。
     䜕よりも、最初に蚀わなければならない蚀葉が、僕の口から出た。
     
    「――母さん」



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