
第2話。朝靄広がるプチプチ森で。
木影団地の前まで来ると、
まっしーおじにゃんは、いつものグレーのコートを着て、ねこタクを待っていました。
「プチプチ森の湖まで。」
まっしーおじにゃんはプチプチ森が大好き。
そこには季節ごとにいろんな木の実がなり、
ときどき珍しいフルーツにも出会えるのです。
でも――
どの木もずいぶん背が高くて、
登ってみないと、何が実っているのかわかりません。
「今日もフルーツを取りに行くんですね!」
スズさんが声をかけると、
おじにゃんはうれしそうに、目を細めました。
「うん、そうなんだ。
本当は昨日たくさん取れたから行かなくてもいいんだけどね。
木に登ること自体が楽しくてさ。
もう、習慣みたいなものだよ。」
スズさんも、その笑顔につられてふわりと微笑み、
ハンドルを握り直しました。
「もう僕も年を取ったから、朝のうちだけ行って帰ってくるんだ。
木から降りるときに、ちょっと疲れちゃうからね。」
「とってもお好きなんですね。
プチプチ森には、ずっと通われてるんですか?」
「いやぁ、働き始めたころから毎日行っていたよ。
どんなに忙しくても、少しの時間でもね。
夜遅くに登ったこともある。
登ると、不思議と次の日が頑張れるんだ。」
懐かしそうに話すおじにゃんを見て、
スズさんの胸の奥がぽかぽか温かくなりました。
「でもね、登っても一粒も取れなかった日もあるよ。
隣の木にはたくさんあるのに、なんで今日はこっちを選んじゃったんだろうって。
でもね――木に登れたこと自体が嬉しかったんだ。」
スズさんは思わず言いました。
「そんなに若いころから毎日続けてるって、本当にすごいですねぇ。」
ちょうどそのとき。
ねこタクはプチプチ森の入り口に着きました。
「お客様、お待たせしましたにゃ。
お代は3ニャンと5ミャーです。」
まっしーおじにゃんはコートのポケットをゴソゴソし、
運転席の横にニャコインと、小さな包みを置きました。
「これ、運転手さん食べてね。」
包みの中には、さっき話していた木の実と、
めったに採れない貴重なフルーツ「にゃしの実」が入っていました。
「ええっ!? こんなに、いただけませんよ…!」
スズさんがあわてると、
おじにゃんは少し照れたように言いました。
「無かったらあげられないんだ。もらってくれ。」
その一言に、スズさんは
おじにゃんのやさしさがぎゅっと詰まっているのを感じました。
「ありがとうございます。いただきますにゃ。」
スズさんはにこっと笑い、ドアを開けました。
まっしーおじにゃんは車を降りると、
ねこタクが見えなくなるまで大きく手を振ってくれました。
「さて、今日はどの木に登ろうか。」
背の高い木々を見上げながら、
まっしーおじにゃんは一匹、嬉しそうに呟きました。
――第2話。おわり。
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→第3話。ぽかぽか、ひだまりの日のできごと|すーしゃん/ねこタク
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