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第3話。ぽかぽか、ひだまりの日のできごと

    スズさんは、しあわせ市内を走行中、とあるレストランの前を通過しました。

    「そういえば、あの時乗せたお客さま、元気かにゃあ……。」

    スズさんは、あの日を懐かしむように目を細めました。


    それは、ある春の午後のこと。

    にゃもやかた駅前で、スズさんのネコタクに
    ふわりと花の香りが乗りこんできました。

    ドアの向こうに立っていたのは、
    淡いピンクのワンピースを着たねこさん。


    このあたりのねこたちとは
    少し雰囲気が違います。

    ペコリと頭を下げたそのねこさんは、
    この国のねこさんではないようでした。


    スズさんは話す前から思いました。

    「優しそうなねこさんだにゃあ。」


    毛並みはやわらかな金色。

    まるで春の陽だまりを
    そのまま連れてきたようなねこさんでした。


    「にゃん・ド・にゃしあレストランまで、
     お願いしまス」

    少したどたどしい話し方
    けれど、その声はとても丁寧で、心がこもっていました。


    走りだしたネコタクの中で、スズさんは声をかけました。

    「このあたりの言葉、お上手ですね。」


    ルームミラー越しに見たそのねこさんは、少し驚いたようでした。

    「はい。6年、住んでいまス。お仕事です。」

    「6年もお仕事で! それはすごいですにゃあ!」

    「はい。」


    そのねこさんは、少し笑いました。

    たったそれだけの短い会話だったけれど、車内には不思議な安心感が流れました。


    やがてレストランの前でタクシーが止まりました。

    お客さまは金いろのしっぽをゆらしながら、ケーキの包みを大事そうに抱えていました。

    「ありがとう。お兄さん、気をつけテね。」


    その言葉に、スズさんの胸がふっとあたたかくなりました。

    たくさんのお客さまを乗せてきたけれど、「気をつけてね」と言われたのは初めて。

    しかも、それがまさか外国から来たねこさんだったなんて。


    スズさんは嬉しくて、どこか懐かしい気持ちになりました。

    忘れていた“思いやりの言葉”が、春風のように胸を包みました。


    ねこさんの去っていく後ろ姿。

    ピンクのワンピースが、光を受けてふわりと揺れました。


    ――第3話 おわり。


    🚕 次のお話はこちら 🐾

    →第4話。初霜の日のお話。|すーしゃん/ねこタク


    📚 ネコタク物語 第1話から読む

    → 第1話。「ねこタク、出発!」|すーしゃん/ねこタク

     
     
    ご乗車、ありがとうございます。 ねこねこタクシー、略してねこタク。 プロねこドライバーのスズさんが送る 出会いの物語。 お話は、一応、番号をふっております。 ですが、出会いはいつも一期一会。 ヘッダー画像の猫さんに会いに行く気持ちで、お好きなところからお読みください。

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