
幕末帝王モラ男 #1 少女漫画みたいに現れた日
「ピアス開いてるのって、結婚相手の親とか転職とか将来のこと考えたら、この先大変と思うよ。」
汚物でも見るかのような目つきで私の耳元を見ながら、
令和元年に、地雷が人間のフリして口を開いた瞬間だった。
その男に出会ったのは、会社の先輩に誘われて参加した飲み会だった。
6-8人程度のこじんまりした飲み会。
あの飲み会はちょっとおかしかった。
参加してた男たち、数人が私を気にしてたらしい。
なにそれ。全員で狩りに来てんの?モンハン?
で、
「お前が動いたら、俺勝てねえから、連絡するな」
──そう釘を刺されてた男が、
普通に翌日、LINEしてきた。
フラグを立てて、即回収するスタイル。
いや、すごいな。
あの日の私は、競りにかけられたマグロだったのかもしれない。
高値で落札して、満面の笑みで「すしざんまい」ポーズ決めてたのが──
あのピアス批判男。昭和を通り越し、幕末からきたモラ男だった。時をかけるモラ男。
たしかに釘を刺されるだけはある、
彼は一見ハイスペックだった。
高身長・高学歴・高収入・イケメン。
西洋と日本のハーフみたいな顔立ちで、最初は観光客が紛れ込んでるかと思った。
でもその余裕とスマートさ、当時の私には太陽拳ばりに眩しかったし、こいつ、自意識だけで地球回してるタイプだろと判定を下した。
私はそういう男に対して、自動的に心のシャッターが降りる仕様になっている。
こいつもそのタイプか。はいシャッター。ピシャ。
──そのつもりだった。
が、2次会で隣の席に座ってきた。
そしてそのまま先輩も含めて3人でジェラートを食べに行く流れに。
こわ…なんなん。詰め将棋か?どこで逆転狙ってくるん?
そのあと、LINEを聞かれ、翌日から猛アタックが始まった。
いやまじか。あんたみたいな人が、私と?
私なんぞを、あんたの脳内フォルダに鎮座させてくれるんです?
共通の友達もいたこともあり、わりと会話は弾んだ。
その上、とにかく人当たりが良く、よく笑い、気さくだった。
まるで少女漫画の笑顔がまぶしい王子みたいな対応。良いやつやんけ.…ワレ…疑って悪かったな。
最初は「なんか怪しい…」と思いつつも、何度かご飯に行くうちにその警戒心も少しずつ解けていった。
そしてクリスマス。
その日に彼から告白された。
「俺、本気で好きになった。付き合ってほしい」
いやいやまじか。私でええんか?
あんなにスペック盛り盛りな男が、なんで私なんかを?
けど今なら分かる。
他の男も狙ってたという背景ごと、欲しかったのだ。
恋愛感情というより、所有欲、トロフィー感覚だったのかもしれない。
このあと、ゆっくりじわじわ、相手の本性が現れていく。
…きっとあのとき、ほんの少しでも立ち止まる術があったら。
太陽拳のまぶしさに目が慣れるまで、もうちょっと時間を置けていたら。サングラスをかけていたら。
でも、マグロは落札された。しかも寿司にされるとは知らずに。

時をかける幕末帝王モラ男が、じわじわと本性を現していく話はまた別の日に。
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