
推しが俺。“動画アイコン”という終着駅。
LINEアイコンに、自撮り動画を設定していた彼。
イヤホンでリズムを取りながら、カメラ目線を送ってくる“俺”。
その狂気のループに笑うしかなかった。
これは、私がかつて惚れてしまった男の話。
ナルシスト“キャラ”ではない。中身がナルシストだった。
自己愛が袖からチラ見え…じゃなくて、タンクトップで全開だった。
連絡はもうとっていない。
けどLINEにはまだ、アイコンで生存していた。
また自撮りアイコンかよ……と思った次の瞬間、
「……ん? 動いてない?」
タップしてみると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。
まさかの自撮りの動画を、アイコンに設定していたのだ。
しかも——
イヤホンを耳にぶっ刺し、軽くリズムに乗って、チラッとこっちを見て、すぐに目を逸らす。
その動きが、無限ループで再生されている。
もはや“聴いてない可能性すらある”音楽にノッてる俺を見せたいだけの映像作品だった。
え、アイコンって…動画いけたんだ?
知らなかった。
いや、知った上で"やる勇気"がすごいんだ。
なぜ、いけると知ってそれに挑んだ。
思わず見入ってしまった。
なぜならこれは、ただの自撮り動画ではない。
そう、これは推し活だった。
しかも——推しが“俺”。
きっと彼はこう思っていたに違いない。
「実物の俺のほうがもっとカッコいいのに…どう伝えよう…」
そしてたどり着いた、“動画の俺”という最終進化系。
自己愛が暴走してる。
俺街道真っしぐらのハイビーム運転。
羞恥心のDNAが組み込まれていない。
いや、逆に“恥”を燃料にして走ってるタイプかもしれない。
たぶん光の当たり方や目線の角度も、
ミリ単位で調整してる。
アイコン確定したあと、
一人で10回くらいチェックしただろうな。
もういっそ、私のLINEアイコンに設定してやろうかと思った。
“俺”の布教、私が代行してあげるよ。
それどころか彼は、
スマホをもう一台持っているのでは?とすら思えてくる。
そしてもう一つのLINEアカウントで、
別の“俺”動画をアイコンに設定し、
俺と俺でLINEのやりとりをしてるのでは?
俺「アイコン変えたんだね!カッコ良すぎて開いた瞬間、心拍数上がったw」
俺「そっちこそ吉沢亮かと思った」
これはもう、俺と俺の恋愛である。
ちなみに彼、実物より写真が2割減だった。
それでも彼は、誠実に“俺”をアイコンにし続けていた。
推しが“俺”である以上、迷いはなかったのだろう。
たぶん何年も悩んで、ようやくたどり着いたのが——動く俺。
私は思わず祝福した。
推し活に妥協しないその姿勢に、笑いながらちょっと涙ぐんだ。
たぶん、彼のLINEアイコンはもう更新されている。
きっと、より完璧な“俺”を見つけたから。
彼の中では、今日も推し活が続いている——推しが、俺である限り。
……あれ、なんで私、ちょっと感動してんの?
▼おこめ?いいよ。と言っただけなのに…
▼最近あった不可解な出来事:トイレ編