
【オリジナル小説】感想屋さんはじめました。 ⑦ あかちゃん毛布さん初めての同人誌その2
『あかちゃん毛布』というPNで二次創作活動をしているOLが主人公です。
最初は『あなたの作品、褒めてあげます』というタイトルで連載していたのですが、主人公の性格に合わないと感じ、タイトルを変更しました。
内容は変わりませんので、よろしければ引き続き読んでいただけたら嬉しいです!
前回はこちらです!
ビニールにぴっちりと包まれたボール紙の封筒。それを見て、私の心はパッと浮き立った。
(狢の穴さんの封筒だ……! どれが届いたんだろう!)
同人誌が好きなら誰もが見覚えのある、主に同人誌を扱う書店の封筒だ。逸る心を抑えながら、適当に荷物を置くと開封する。中からは、文庫サイズの厚めの本が出てきた。
(これは……リンネさんのご本だ!)
パール系の表紙が照明を反射してキラキラと輝き、牡丹の花が、上品な線画と淡い彩色で描かれている。タイトル文字と花の輪郭にはエンボス加工がされていた。
(なんて綺麗……! それに豪華!)
同人誌を出そうとしていろいろ調べていると、こういった加工には別料金がかかることがわかる。
(流石神作家さんだ! それに『天こい』は人気ゲームだからな……)
だけどリンネさんが活動しているのは、來墨……來おじさま受けだ。少しマニアックな好みだから、メジャーカップリングほどの人気はないだろう。
だけどリンネさんのファンが多いのか、最近は『あつまれ!』に來おじさま中心の二次創作も増えてきていた。
本は『月下にて』というなんとも詩的なタイトルだった。來おじさまの腹違いの弟、來明は死んだと思われていた。だが、ある月夜に來おじさまは謎の人物と出会う。
「何者だ!」
彼を誰何した來おじさまだったが、その人物はうっすらと微笑むと言った。
「幽霊です」
二百ページ近い本を読み終え、私はため息をついた。
同人誌はいい。小説なら一冊買えば、一、二時間の至福の時が約束されている。それに、私は全てのネタバレを知ったうえでの、二度目に読む同人誌もこよなく愛していた。週末にでも、もう一度読み返そうと思う。それにしても、と私は思った。
(文庫サイズ、いいな……!)
手に馴染むし、本文用紙も柔らかくてめくりやすかった。奥付を確認すると、見覚えはあるが、オンデマンド印刷を調べているときには出てこなかった印刷所が書かれていた。比較的大部数向けの印刷屋さんか、もしかしてオフセット印刷かも知れない。私はほうとため息をついた。
(神作家さんは凄いな……!)
『文庫本を考えていらっしゃるんですね』
『はい…! 読みやすくていいな、と思いまして……』
いろいろ検討した末に、やっぱり文庫本でいきたいと思った私は、犬山さんに連絡を取った。
『文庫なら、コミックコールさんが良心的なお値段ですよ。印刷も綺麗です』
『でも、コールさんは二十冊からですよね? そこまで出るかは自信がないのですが……』
私は正直に事情を伝えた。
『そうですか。十冊程度なら、ぽちっと工房さんもお勧めです。早割なら一桁の部数でも安いし、印刷もまずまずですよ』
『そうですか……』
犬山さんと話し合いながら、アンケートを取るなどして部数を予測し、多かったらコールさん、少なめならぽちっとさんにしようという方針を固めた。
『あの、この間買った本が、紙が柔らかくてとても読みやすかったんです。薄くはないけど軽い紙、ありますよね』
『ああ、コミック紙ですね。いぶりがっ子さんの本はどれかお持ちですか?』
『勿論! いなうらの本なら全部持ってます!』
私は勢い込んで答えた。いぶりがっ子さんの本はいつも新書サイズだ。わりとマイナーな判型なので、使っている人はあまりいない。私はファイルボックスを判型で分けているが、新書サイズを集めたボックスは、ほぼいぶりがっ子さんのコレクションだった。
『いぶりがっ子さんの本、いつもコールさんですよね。色が選べる『薄手コミック用紙』のシリーズが、適度に厚みもあって軽いです。文庫や新書などの小さな判型でも読みやすいですよ』
『確かに……!』
『コールさんとぽちっとさんから、紙見本を取り寄せてみたらどうでしょうか? 表紙の紙も本文の紙もありますし、実際に見て、触ってみるといいと思います』
●Bメールの下書き機能●
コミックコールさんとぽちっと工房さんのサイトから、なんとか紙見本のページを探し出して申し込む。
一仕事終えてホッとすると、私はTwitterを開いた。雪の結晶写真のアイコンが目に飛び込んでくる。
(淡雪さんだ! 久しぶりだなぁ!)
『国語の成績が上がった! どうしてかわかんないけどうれしいです』
(それは君が頑張って二次創作をしたからだよ!)
自分のことのように嬉しくて、ニコニコしながらいいねした。
『かしみくかきたい、、、お母さんとの約束守るの大変、、、小説は書いてないけど、せっかくいいお話想いついても受験までに忘れちゃう、、、』
(それは勿体無い!)
わたしは一読者として危機感を持った。
(馴れ馴れしいかな……)
迷いながらも、思い切って声をかける。
『淡雪さん、Bメールのアカウントは持ってますか?』
『Bメールですか?はい、持ってます。。』
私は少し考えて、わかりやすい言葉を選んで返信した。
『思いついたネタは、携帯のBメールアプリで、自分宛てのメールを作ってメモするといいですよ。しかも、送信はしなくていいんです。『下書きに保存』しておくとすごく便利です。思いついたらまた書き足して保存できるし、パソコンからもそのまま続きが書けますよ』
しばらく経ってから、『わかりました!たぶんできます。。。』という返信が返ってきた。
『わからないことがあったら、なんでも聞いてくださいね!』
(うまくいくといいな……)そう思いながら返信する。私は中高時代に二次創作にハマって、いぶりがっ子さんたちに可愛がられていた頃を思い出した。
(確かに歳の離れた妹みたいでほっとけないや!)
次回はこちらです!