
【オリジナル小説】感想屋さんはじめました。 ⑥ ケース4 茉莉夏さんの場合
『あかちゃん毛布』というPNで二次創作活動をしているOLが主人公です。
最初は『あなたの作品、褒めてあげます』というタイトルで連載していたのですが、主人公の性格に合わないと感じ、タイトルを変更しました。
内容は変わりませんので、よろしければ引き続き読んでいただけたら嬉しいです!
前回はこちらです!
私は『感想屋さん』を続けているが、二次創作を再開してからは、二週間に一度にペースを落としている。だけど私を生き返らせてくれた『感想屋さん』の活動には感謝しているし、向き合うと背筋が伸びる気がする。
今回の依頼人は『茉莉夏』さん、『2.5次元が主です!』とプロフィールにあり、映画やテレビドラマの二次創作で活動しているようだ。
『あかちゃん毛布さん、初めまして。私は死神なんです……!』
依頼文は衝撃的な文章から始まっていた。
『好きでそういうキャラにハマっているわけではないのに、私が好きになるキャラは何故かいつも死んでしまいます。死亡率は……とにかくスポーツとか人が死なない世界の映画やドラマ以外では、死ななかった推しを思い出せない……』
私はたちまち茉莉夏さんに同情した。『あかモフさんの推しってしぶといよね』などと言われたりもするが、そんな私だって幼い頃から本やテレビ番組で好きなキャラが死んでしまい、泣いた経験は何度もある。
それに、推しでなくても、キャラが死んでしまうのは悲しいものだ。それなのに推しばかりが死んでしまうだなんて、どれだけ辛いだろう。
『推しがすぐ死んじゃうので、ジャンルに長いこといられず、いいねも少ないし感想もほとんど貰えないんです。今回も本当にマイナーなドラマで……それなのに推しまで死んじゃって……孤独で…飢えた私に何卒ご感想の慈悲を……!』
指定された小説は『ここに生きている』というタイトルで、三万字近い長編だ。ジャンルは『オレンジ・レスキュー』という災害救助もののドラマで、そもそものジャンルからしていかにも危険そうだ。
最近放映が終わった深夜ドラマで、私は観たことがなかったが、動画配信サイトで視聴することにした。
茉莉夏さんの推しの『山岸陽炎』は少し斜に構えたキャラで、いかにも女性に人気が出そうだった。熱血主人公の『中西元気』とは、事あるごとに対立している。
まだドラマは序盤だが、茉莉夏さんからカップリングは『かげんき』と聞いており、(そうか、攻めが死んじゃうんだ……)と思って、私は少し切なくなった。
ドラマは毎回ハラハラドキドキの展開で、『かげんき』のぶつかり合いにも、観ていて熱が入ってしまう。
(それなのに、死んじゃうんだ……)
シリーズ前半で既に陽炎が好きになっていた私は、とても残念な気持ちになっていた。そして、最終回を待たずに、陽炎は殉職してしまう。それからの元気は、時に無謀だった態度を改め、よりバランスの取れたレスキュー隊員へと成長していった。
最終話のエンディングを見届けてから、私は茉莉夏さんの作品を読みに行った。2.5次元ジャンルなので、掲載されているのはオープンな『あつまれ!』ではなく、検索避けがしてあり、アクセスにパスワードが必要になる姉妹サイト『かくれんぼ』だ。
小説は、大地震が起きた地方へ元気らが派遣されるシーンから始まる。
〔『陽炎、おまえはこんな時、どうするんだろうな』
陽炎はもういないのに、元気は死んだ友に頭の中で語りかける。それは元気の習慣のようなものになっていた〕
ろくに食べ物も支給されない中で、元気は淡々と任務を遂行し続ける。
〔『このおにぎりにも、おまえは文句を言うんだろうな』〕
元気は時に脳内で陽炎に問いかけ、彼ならどうするか考え、次々に人々を瓦礫の中から救い出す。
そんな中、災害発生から72時間を過ぎているのに、元気と災害救助犬の『テリー』は瓦礫の下に生存者を発見する。
〔「必ず助けます、待っていてください!」〕
元気や他の隊員たちは、懸命に生存者を励まし続ける。そして夜明け前についに少女は救い出され、元気は瓦礫の向こうに朝日が昇るのを目の当たりにする。
〔『早くお前のところに行きたいとは思わない。長生きして、九十年だって、百年だって生きてやる。だって俺が生きている限り、心の中のお前も生きているんだからな』〕
私は滂沱の涙で作品を読み終えた。
[幕切れでめちゃくちゃ泣いてしまいました。この作品、もう純文学同様の完成度では!?]
[それにしてもテリーが可愛くてキュンキュンしました]
[ドラマでしっかり描かれているとは言え、災害救助の描写が本格的で凄いです]
[もう陽炎くんはいないけど、回想シーンの二人があまりにも幸せで、それがとても切なかったです]
凄い作家さんに出会ってしまった。私はそう思いながら、せめてもと丁寧に感想を書いた。
茉莉夏さんからは感謝のメッセージが返ってきた。
『あかちゃん毛布さん、ありがとうございます。こんなに丁寧なご感想、初めて貰いました』
『私は同じ作品で長く活動できないんです。推しが必ず死んでしまうからです』
『この作品だって、続編が作られても、もう陽炎くんはいない。今はこんなに強烈な印象が残っていても、シーズンが変われば忘れられてしまいます。私はいつも取り残される側です』
『私だって、同じ作品で、友達同士キャッキャして長く活動したいです』
『でも、ありがとうございます。頑張って書いたのが、報われました。やっぱりかげんきが好きなんです。また作品を書いてみようと思います』
メッセージを読み終わり、私はしばらく考え込んでしまった。もしこれが人気アニメの二次創作だったら、あつまれ!でたくさんのブクマを集めるだろう。
でも、私もマイナージャンルで活動していたからわかる。この作品の、このキャラの二次創作でなければ、意味がないのだ。
そして、 私はふと、(この人にはオリジナル適性があるのでは?)そんなことも思った。オリジナルなら、好きなキャラを生かしておくこともできるのではないだろうか。それとも、やっぱり死んじゃうんだろうか。
でも、また『かげんき』の二次創作を書いてくれるのなら嬉しい。私は『感想屋さん』を引き受けた人を、皆Twitterでフォローしている。新作が投稿されたら、また読みに行こうと思った。
次回はこちらです!