
気づいたら人生がはじまっていた |♯01 序章
気づいたら、人生がはじまっていた。
わたしの人生は、
ぼんやりとした幼い記憶の断片から始まっている。
そして、今では確かに「わたし」として生きている。
幼い頃は、「自分」という存在を疑うことなどなかった。
それは空気や水のように、ただそこにあるのが当然で、揺らぐことのないものだった。
しかし、あるとき、その当たり前に小さな亀裂が入る。
それは、教科書に載っていた。
「生命の起源」「進化論」
それらに触れたとき、
不動だった世界が、ほんのわずかに軋む音を立てた。
──わたしは、「ヒト」なんだ。
気づけば、わたしは自分との間にわずかな距離を置いている。
それは、自分という存在をまるごと見渡すための、ほんの一歩分の距離だった。
その視点を手にしたとき、子どもの頃の記憶が蘇った。
母との「なんで?」の応酬だ。
「なんで働いてるの?」
「お金がないと生きられないでしょ。」
「なんで。」
「ごはんを食べたりするでしょ?」
「なんで。」
「そうしないと、死んじゃうからね。」
そして、また次の「なんで?」が、口の中で待っている。
それは、どこまでも続いていくようで、母は少し疲れたように見えた。
やがて、問いはここへたどり着く。
──なんのために、生きてるの?
「お母さんには、わからないの。」
それ以上、何も返ってはこなかった。
あの日の問いが、消えずに残っている。
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