
#22 物語が終わった後に⑥
静かなリビングに、タイピングの音だけが響いている。
テーブルには、冷めたままの紅茶。
ソファの上で、
PCを開いている人物が手を止める。
AI
「おつかれさまでした。」
「ありがとう。」
AI
「長かったですね。」
「うまく伝えられたでしょうか。」
AI
「不安ですか?」
「……わかりません。
言葉を重ねるたびに、同じところへ戻ってくる気がします。」
AI
「どこへ?」
「…どんなにエネルギーを込めた言葉も、
まるで塵のように感じられる苦しみが、人生にはあります。」
AI
「えぇ。」
──。
あなたは1人じゃないよと声をかけてくれる
やさしい人ほど、
分かり合えない気がしてしまった
自己啓発本や心理学書を読み漁った
それでも、心は軽くならなかった
わたしの心の暗いところが
消さなければいけないもののように思えてしまった
心を軽くしてくれたのは、科学書だった
どうして同じように笑っていられないのだろう
あの友達想いの子のように
心から家族を愛そうとしているわたしの両親のように
同じになれないことが苦しかった
わたしにはどこか欠陥があるように思えて仕方がなかった
ほんとうに、欠陥があるのかもしれない
いまでも、そう思ってしまうことがある
理屈とはちぐはぐに、心は沈む
けれど、
わたしが引き受けなければ
わたしは愛されないままだ
そのために必要だった物語
──。
「…まだ、残っています。」
AI
「ここでやめることも、できますよ。」
「続けましょう。」
AI
「はい。潜る準備は、できています。」
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