
んの魔法 | 長編小説| 第6章 スポンの本とポワンの本(第14話)
『この世界は、「言葉」と「イメージ」で作られている』…と。
言語と精神が結びついて、実体化した世界“カタリーバ”という
世界なのじゃ。
これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。
始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第6章スポンの本とポワンの本(第13話)
本編はここから
「『ん』の魔法?」と僕とりんが、同じタイミングで聞き返した。
「前にも言ったじゃろ?終わりに『ん』がつく言葉には余韻がある。その余韻が大きな魔法を生み出すのじゃ。本の1ページ目に『ん』の魔法と使い方が書いてあるはずじゃよ。」
「えーそうなの?知らなかった!」
りんは、再びポシェットからポワンの本を取り出して、1ページ目を開けた。
僕たちには「ん」という文字しか見えない。
「1ページ目は本の持ち主しか、読めんのじゃ。本は“心そのもの”なのじゃからな。りんちゃんのポワンの本の1ページ目には、なんと書いてあるのじゃ?」
「ん~とね、にんにくの絵と使い方が書いてあるよ。
『開けゴマ、伸びよマメ、オーバーヒートでフリーズ!』だって。
変なの~!」
にんにくの絵?終わりの「ん」じゃないけど、ポワンの本ってそうなのかな?
僕も気になって、自分のスポンの本の1ページ目を開いてみる。
他の3人は僕の言葉に耳を傾けている。
「僕の本は、機械のような赤い丸いボタンの絵が描いてあって、使い方は『忘却は軽く、混沌は重く、解放は時を待つべし』と書いてある。」
「使い方は本人にしか、わからないニャ!」
ずっとカウンターの隅で、会話に参加していなかったマフが、そう言って割り込んできた。
「みゃー達が、おみゃーの本を使っても、“同じようには使えない”ということニャ。お師匠だけは、この世界をコントロールできるから、いろいろ教えることができるんだニャ。さすが、お師匠だニャ。」
「何だか難しいけど、ンタンタンは偉いってことね?」
「わしができるのは、お前さんが困っている時は、助言をすることだけじゃよ。」
「助言?スクールカウンセラーみたいだね?」と僕は言った。
最近、そういう人に会ったことを、急に思い出していた。
転校して2週間くらいたった頃、優しい声の女の先生に声をかけられて、
相談室という所へ連れて行かれた。
その先生も「何か困っていることはないか?」と言っていた。
多分、僕がクラスの誰とも会話をしないことを心配していたのだろう。
でも、突然、別室に連れて行かれて、刑事ドラマの取り調べみたいに1対1で面と向かって、僕が素直に話ができると、本当にあの人は思っていたのだろうか?
「助言ついでに言っておくと、お前さんのボタンの絵には“言葉”がある。ボタンの名称のことではないぞい。
絵に込められた“『ん』の魔法の言葉”じゃ。
その言葉の意味をよく考えると、本の使い方が見えてくるやもしれん。」
「アタシのにんにくの絵にも言葉があるのかしら?」と、りんが小さな声でつぶやいた。

次は、第6章スポンの本とポワンの本(第15話)につづきます。
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