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んの魔法 | 長編小説 | 第6章 スポンの本とポワンの本(第15話)

    若菜あずき

    「前にも言ったじゃろ?終わりに『ん』がつく言葉には余韻がある。その余韻が大きな魔法を生み出すのじゃ。本の1ページ目に『ん』の魔法と使い方が書いてあるはずじゃよ。」

    第6章 スポンの本とポワンの本(第14話)より

    これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。

    始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
    前回のお話はこちら → 第6章 スポンの本とポワンの本(第14話)

    本編はここから


    僕たちが、この“終わりの世界”を、ほんの少し理解しはじめた頃——

    「どうしよう。ママから留守電が入ってるみたい…!」
    と、突然りんがそう言った。

    「ルスデン?何のことじゃ?」
    「留守電は、“るすばんでんわ”を短くした言葉だよ。」と僕。
    「電話が留守番するのかニャ?えらいニャー!」

    ンタンタンもマフも留守電(るすでん)に驚いているようだけど、
    “終わりの世界”って、どうにもかなり旧時代のような気がする。

    そういえば、僕のスマホはランドセルの中だった。ここにはない。
    りんはどうやって留守電の内容を確認するのだろう?
    この世界にスマホを持って来てるのかな?

    あ、そうか! ポワンの本は強く願えば絵になるのか!

    僕がそう気付いた時、りんのポワンの本の2ページ目からオレンジの光が漏れ始めた。
    りんがページをめくると、スマホの絵が書かれてあって、
    その画面には「りん、早く帰っておいで。ピアノの時間よ。」と書かれてあった。

    「やばーい!遅刻しちゃう!」
    「遅刻?どこかに行くのかニャ?」
    「ピアノ教室。アタシ、ついついこの世界で長居しちゃうタイプなの。
    えっと、ンタンタン、帰り道はどこ?」

    りんはそう言って、ポワンの本をパタンと閉じて、赤いポシェットにしまった。
    それから、気をつけながらスツールをゆっくりと降りた。
    それにつられて、僕らもりんを見送るために、玄関までついていった。

    「提灯に沿って、真っすぐに光のある方へ行くとよい。帰り道は一本道じゃ。」と、ンタンタンがそう言うと、
    「ありがとう!」
    にっこり笑って、りんはそう言った。

    それから、りんは僕に向かって、
    「あのね、また会えたら、その時は“名前”教えてね。」
    「…わ、わかったよ。会えたらね。」

    僕は少しうつむき加減でそう答える。

    「約束だよ!じゃあね。バイバーイ!」

    りんは、手を振りながら、玄関から飛び出して、
    庭から提灯の道へと向かって去って行った。
    慌てているのか、少し駆け足だった。

    「バイバイニャ~!」

    あの子とまた会えるのだろうか?
    それはわからないけど、ちょっと面白い子だったな。

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    次はいよいよ、第7章 僕の心の中のライオン(第16話)につづきます。

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    はじめまして、若菜あずきです。 言葉や記憶をテーマに、ちょっと不思議な物語を書いています。 「んの魔法」をnoteとTalesで公開中。 noteでは、AIとの雑談「Azuki House」を毎週日曜の夕方に更新中。 小説、エッセイ、AIイラストなど、いろいろやってます(^^)

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