
んの魔法 | 長編小説 | 第6章 スポンの本とポワンの本(第13話)
「マカロン、マカロン、ふわん、ぽわわわ~ん!」
呪文を唱え始めると、本の周りに、大きな光の文字が浮かび上がり、やがて魔法円になって、ピカッと温かい黄色の光を放ちはじめた。
これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。
始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第5章 迷子のりんちゃん(第12話)
本編はここから
「スポンの本とポワンの本って、一体何なの?」
とうとう、我慢しきれなくなって、僕は思わず口に出して聞いてみた。
「スポンの本とポワンの本?どういうこと?」
りんも興味があるようだ。
「本の話をする前に、この世界の話をしなければならないようじゃな。
ちと長くなるぞい。」
と、ンタンタンはピンと伸びた髭を、ツンツンしながらそう言った。
温かいほうじ茶とおいしいスイーツを食べながら、ンタンタンは僕たちに、この世界のことを話し始めた。
「最初にわしが言ったじゃろ?
『この世界は、「言葉」と「イメージ」で作られている』
…と。
言語と精神が結びついて、実体化した世界“カタリーバ”という世界なのじゃ。
この世界は大きく分けて、“始まりの世界”と“終わりの世界”に分かれておる。
“始まりの世界”は、「言語を具現化し新しく創造する世界」、“終わりの世界”は、「言語を選別し大切に記憶する世界」なのじゃ。
ちなみにわしらがおる方は、“終わりの世界”じゃ。
そして、わしは、この世界の管理人で「んしり亭」の主人の“ンタンタン”じゃよ。」
「え~っと、アタシが知ってる“ントリン”もそうなの?」
「あれは、あっちの世界の…あ、いや、“始まりの世界”の管理人じゃ。じゃから、りんちゃんは“始まりの世界”から来たことになる。」
「へー、そうだったのね?!」
りんがどこからやって来たのか?ということは、どうでもいいんだけど、「どうして人間の僕たちが、この世界にやって来たのか?」ということの方が、気になって仕方がなかった。
そんな僕の表情を察してか、ンタンタンは続きをこんな風に始めた。
「“カタリーバ”は、人の心と密接につながっておってな、人の性格や気分によって、言語は二つのうち、いずれかの世界を形作るのじゃ。
“始まりの世界”の言語は、人の心の想像や欲望を形にし、“終わりの世界”の言語は、人の心の記憶と願望を形にする。」
「記憶と願望?」
「わかりづらいかのう?具体的に言ってみようか?
例えば、お前さんはどうして“終わりの世界”に来たのじゃ?よく思い出してみるといいぞい。何か忘れてしまいたいような事はなかったかい?」
「……うん。」
ンタンタンにそう聞かれて、否定できなかった。だって、そのとおりだったから…。
「“カタリーバ”は、人の心と密接につながっておる。
お前さんの願望が言葉を作り、“スポンの本”を生み出す。そして、スポンの本が“「ん」の魔法”を使って、ここにお前さんを呼び寄せたのじゃよ。そして、りんちゃんもしかり、じゃ。」

次は、第6章 スポンの本とポワンの本(第14話)につづきます。
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