
んの魔法 | 長編小説 | 第5章 迷子のりんちゃん(第12話)
転校初日の自己紹介で、クラスメートの視線を一斉に浴びて、うつむいてしまったことを思い出す。純粋な好奇心こそ、今の僕にはいちばん怖い。
これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。
始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第5章 迷子のりんちゃん(第11話)
本編はここから
「ねえ、おいしいおやつのお礼に、アタシもスイーツをあげるね。」
突然、りんはそう言うと、赤いポシェットから、オレンジ色の本を取り出した。
あれ?
表紙に金色の「ん」の字が入っている?
「おお?!りんちゃん!それは…もしや、“ポワンの本”ではないかのう?」
「にゃ、にゃんと、“ポワンの本”?」
「そうだよ。アタシの夢が叶う本なんだよ。見ててね。」
僕たちは、りんの持つオレンジ色の本にくぎ付けになり、目をこらして、その様子を見つめている。
りんは、ゆっくりと本を開いた。
小さな本なのに、たくさんのページがあって、いろんな絵が描かれている。その中から、「丸いコロッとした、お饅頭のような形の、カラフルなお菓子が、お皿に10個くらい置かれている」そういう絵のページを開いた。
左手の上に本を乗せ、右手の手のひらをあてて、くるくると円を描き始めて、何やら呪文を唱え始めた。
「マカロン、マカロン、ふわん、ぽわわわ~ん!」
呪文を唱え始めると、本の周りに、大きな光の文字が浮かび上がり、やがて魔法円になって、ピカッと温かい黄色の光を放ちはじめた。
そして、くるくる回した、りんの右手に吸い付くように、本の中から
“ポワン”と、丸いお菓子がコロコロと転げ出てきた。
「あ、落っこちそう!」
本から、お菓子を6個出したところで、コロンとテーブルの上に、何個か転がってしまった。
りんが右手を回すのをやめると、魔法円は小さくなってスッと消える。
「食べれるのかニャ?」
「もちろんだよ~!マカロンだよ。おいしいよ。」
「ほんとニャ!サクサクでミルクの味がして甘いニャ!」マフは、さっそく本から飛び出した、白いマカロンを一口。
「最中のようじゃな。どれ?」
ンタンタンも、赤いマカロンを食べてみる。
「甘酸っぱい最中じゃな。キュンとくるわい。」
「最中じゃなくて、ラズベリーのマカロンだってば。」
マフとンタンタンは、マカロンは知らないらしい。僕もそんなに食べたことはないけどさ。
そんな事より、“なんで本からお菓子が出てきたのか?”って、ことの方が、不思議だと思うんだけど…。

次はいよいよ、第6章 スポンの本とポワンの本(第13話)につづきます。
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