
んの魔法 | 長編小説 | 第7章 僕の心の中のライオン(第17話)
「虚栄心(きょえいしん)?」
「見栄っぱりな心じゃ。スポンされたから、今は普通に言えるようになったじゃろ?」
これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。
始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第7章僕の心の中のライオン(第16話)
本編はここから
「わしの見立てでは、お前さんは今、巨大な壁にぶち当たっておると見える。」
ンタンタンは、僕の心の中のモヤモヤを「巨大な壁」というセリフで表現して、いきなり僕を揺さぶってきた。
「何なの?それ、何かの占い?」
「本のページが多く、そのどれもが色あせとる。その上、新しいものをどんどんスポンしておるとは…。何かから逃げようとしている時とよく似とるんじゃ。」
「ぼっ、僕は…逃げてなんかないよ!」
つい、大声をあげて、本をパタンと閉じると、ンタンタンの前から逃れるように、部屋の奥の方へ向かって立ち上がった。
「おっと、急ぎすぎたわい…。」
困った。本当は逃げ出したかった。
ンタンタンの言う通り、僕はどこかに逃げてしまいたかった。
でも、僕にだって意地がある。それが強がりだとわかっている。
虚勢なんだ。
今朝起きて、いつものように顔を洗って、朝ごはんを食べて、ランドセルをしょって、「行ってきます」を言って、家を出たはずだったのに…。
足が重くて、どうしても前に進まない。
気がつくと、知らない道を通っていて、海の匂いがする方へフラフラと歩いていたのだった。
僕は、先月の中頃までは、東京の八王子という町に住んでいた。
だけど、去年の秋頃に、お父さんが病気で亡くなってから、お母さんと僕は二人暮らしになってしまった。
お母さんは仕事がとても忙しくて、僕のことがだんだん負担になってしまい、僕は田舎のおじいちゃんちに行くことになったのだ。
おばあちゃんや他の家族はいないので、今は海沿いの田舎の町で、おじいちゃんと二人暮らしをしている。
春から学校にも通い始めた。
お母さんとは、別々に暮らすようになってからは気まずくて、毎日メールが来るけど、一度も返信をしていない。
僕も最初は、普通に学校生活を頑張るつもりだったんだ。
おじいちゃんは優しいし、新しい生活は少し楽しいとさえ思っていたけど…。
転校初日に、おじいちゃんに連れられて、職員室に行く途中に、なんとなく廊下を歩いていたら、こんなセリフが聞こえてきたのだ。
「転校生はじーちゃんと二人暮らしなんだってさ!うちの母ちゃんが言ってたぜ〜」
この瞬間、僕の心にはきっと仮面が現れたんだと思う。
強がりの仮面が。

次は、第7章僕の心の中のライオン(第18話)につづきます。
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