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ヒバリが歌うのをきいていた 【連載小説・第4話】

    第1話はこちら


    【多星】

    「なぁ多星、今度の空気階段のライブ、一緒に行かない?」
    「空気階段?」
    「お笑いのライブだよ。電力ホールでやるんだ。これからチケット申し込むんだけどさ、どう?」

    お笑い好きな純は、目を輝かせて話す。
    放課後。彼に誘われてマックに寄り道をした。今日は水曜日で、部活も塾もない。

    「いつやるの、それ」
    「5月10日」
    俺はあきれる。
    「中間テストのすぐ前じゃん。俺はいいよ、勉強しなきゃ」
    「そっか。じゃあ仕方ないな、ほかの奴をあたるか」

    ポテトをつまむ純を見ながら、うっすら心配になった。
    純は小学校からの同級生だが、高校に入ってから、明らかに勉強についていけていない。
    テストの点数も、本人はへらへら笑いながらこちらに明かしてくるが、俺はあまりの低さに笑えなかった。
    彼が来年の受験期に、どうなっていくのか気がかりだった。


    「そういえばさ」
    指についた油をナプキンでぬぐって、純は話し始める。
    「今日の現代文の授業で、平沢さん、音読すげーうまかったな」
    その表情を見て、そう感じていたのはやはり俺だけではないのだと思った。

    「うん。うまかった」
    「だよな!アナウンサーみたいにすらすら読んでたもんな。もしかして、目指してたりして」
    「いや、アナウンサーっていうより」
    ――鳥の澄んだ鳴き声みたいに、よく響いた。

    そこで純と目が合う。俺は自分がポエミーな表現を使いそうになったことに焦った。

    「いうより、何?」
    「えっと、オーディブルみたいな感じだった」
    「オーディブル?」
    「電子書籍を朗読してくれるサービスだよ」
    「ふーん、相変わらず物知りだねぇ」

    純や友達はよく、俺のことを「物知りだ」という。俺はそう言われるのが好きじゃない。からかわれている気がする。悪意がないのはわかるけど。

    「そういえば、多星って平沢さんと美化委員で一緒じゃなかった?」

    生徒たちは、みんな何かしらの委員会に所属している。俺は活動がラクそうな美化委員に立候補した。活動が始まるのは来週からだ。

    「そうだけど、大してやることはないらしいよ。月1回、校内の見回りをして終わりだって」
    「そっかー。俺もそっちにすればよかった。文化祭実行委員さ、ミーティング多いらしくてダルいんだよ」
    「純はどうせ暇なんだからいいじゃん」
    「やめろよ」

    俺は少し笑う。純の前では笑えるのだ。カッコつけているわけではないけれど、高校生になってから、中学生のころより笑顔がぎこちなくなってしまった。


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    エッセイ/日記/小説などを書きます。 ・双極性障害を抱えています。 ・健康、生活、恋愛、音楽の記事が多め。 気軽な気持ちで読んでもらえたら嬉しいです!

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