
介護費用は「払う」だけじゃない 申請すればお金が戻る、税金が安くなる4つの制度 ~介護費用シリーズ番外編~
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介護費用シリーズ3記事をご覧いただいて、「こんなにお金がかかるのか」と思った方もいらっしゃると思います。
今、介護をしている方。
これから老後資金を考えたい方へ。
介護費用の中には、申請すれば戻ってくるお金や、税金を安くできる可能性がある制度があります。
制度を知って、条件を確認して、申請したり、確定申告をしたり。そうして初めて負担が軽くなります。
今回は、費用負担を少しでも軽くするため、「払った後に戻ってくるもの」と「税金が軽くなるもの」4つの制度について、実際に利用するときの注意点も含めてお話しします。

1 高額介護サービス費
~「すぐ戻る」「何でも戻る」の誤解~
まず一つ目は「高額介護サービス費」です。
介護保険のサービスを利用して、
介護保険サービスの自己負担額の合計が上限を超えた場合、
超えた分が支給されます。これが高額介護サービス費です。
支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です。
最初の申請漏れに注意
対象になると自治体から申請書が届きます。多くの自治体では、一度口座を登録すれば以降は自動で振り込まれます。
しかし、一人暮らしや高齢夫婦世帯では、最初の申請書を見落としている方がいらっしゃいます。
もしかしたらと思う方は、一度自宅の書類を探すか、自治体の介護保険担当部署に問い合わせてみてください。なお2年の時効の範囲内であればさかのぼって申請できる場合があります。
支給対象になる条件に注意
「介護に6万円使っても上限4万だから大丈夫」という記事を目にしたことがあります。 それはとても難しいことですし、誤解があると感じました。
高額介護サービス費には、2つの落とし穴があります。
わかりにくいので、簡単な例で説明していきます。
【例】デイサービスに通うAさん
住民税非課税世帯で、個人の上限額 月15,000円となる区分の方です。
Aさんは週3回デイサービスに通い、月約2万2,000円かかりました。
「2万2,000円 - 1万5,000円 = 約7000円が戻ってくる」
と思われるかもしれません。
答えは、× です。
デイサービスの費用の中には、昼食代のような「介護保険外の実費」が含まれています。
介護保険1割負担のサービス費 約11000円
介護保険外 食事代等の実費 約11000円
合計 約22000円
高額介護サービス費の対象になるのは、「介護保険のサービス費だけ」です。
Aさんの場合、上限の1万5000円に届かないので、高額介護サービス費の対象にならず、戻ってくるお金はありません。
介護保険の区分支給限度基準額と高額介護サービス費の基準との比較
高額介護サービス費の自己負担額の上限は、所得によって決まっています。また、福祉用具の購入費や食費・居住費等の実費は対象外です。
下の二つの表を見比べてみてください。

右側は介護度ごとの、1か月の介護サービスの保険の上限単位数です。
要介護5でも、区分支給限度基準額の範囲内で利用した場合、1割負担なら自己負担はおおむね3万6,000円程度です。(厳密には1単位=1円ではないので、実際の金額は異なります)
「介護保険を6万円使えば…」というのは、1割負担の方一人では難しいとお判りいただけると思います。
要支援の方がお一人で、限度いっぱいまで使っても、高額介護サービス費の対象には届きません。
簡単に確認する方法
在宅介護している方は、ケアマネジャーが毎月お渡しする「利用票別表」の右下
図の赤丸部分を確認してください。ここに、その月の利用者負担額が記載されています。(ただしこれは予定なので、お休みしたりすると変わります)
ここが、上記の左の表の高額介護サービス費の上限を超えている方は、費用が戻ってくる可能性があります。

では、どんな方が対象になりやすいのでしょうか。
一番対象になりやすいのは、「複数の家族が介護保険を利用している場合」です。
親子や夫婦など、同じ世帯で複数の方が介護保険を利用していると、世帯内で合算して計算されます。
この場合、支給時にはそれぞれに按分されて振り込まれます。
ただ、複数の人が介護サービスを利用するのは、それなりに大変な状況でもあります。
介護負担が大きくなりすぎていないかも、注意が必要です。
入金までのタイムラグ
もう一つ覚えておいてほしいのが「入金までのタイムラグ」です。
例えば、1月に介護サービスを利用した場合。2月にすぐに戻ってくるわけではありません。
事業所の保険分請求、自治体での確認などを経て、問題がなければ振り込まれます。
自治体によって幅はありますが、順調でも2~3か月してからの支給です。
要介護認定が遅れて費用が確定しなかったり。事業所の請求ミスがあれば、さらに支給が遅くなります。
私が担当している方で、事業所の請求が間違っていて、高額介護サービス費の支給時期がずれ込んだという方もいらっしゃいました。
「戻ってくるお金」を当てにして毎月の資金計画をギリギリにしてしまうと、支払いが回らなくなる可能性があります。

2 高額医療・高額介護合算療養費制度
~「年1回の通知」と「別々の入金」~
二つ目は「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。
これは、1年間にかかった「医療保険」と「介護保険」の自己負担額を合算して、一定の上限額を超えた場合、その超えた分が支給される制度です。
「医療も介護も両方かかっていて、毎月大変…」という世帯を助ける仕組みですが、計算が複雑なため深追いする必要はありません。
覚えておくべきポイントは4つです。
対象者には、年1回医療保険の窓口などから申請案内が届く
対象になるのは、8月~翌7月の医療・介護費
案内が届くのは、合算期間が終わって数か月後
申請後、さらに数か月して、医療分と介護分が別々に振り込まれる
これも、届いた申請書を見落としている方がいらっしゃいます。一度ご自宅を確認するか、後期高齢者医療の担当窓口に問い合わせることをお勧めします。
なお、高額介護サービス費と違い、対象となる年に毎回申請が必要な自治体が多いので、注意してください。

3 障害者控除(障害者控除対象者認定)
~知らないと損する税の軽減~
ぜひ知っておいていただきたいのは「障害者控除対象者認定書」です。
介護認定を受けている高齢者や、
あるいは、その高齢者を扶養している家族が、
所得税や住民税を払っている場合は、税負担が軽くなる可能性があります。
「障害者手帳を持っていないから関係ない」と思われるかもしれません。
ですが、障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で要介護認定を受けている方が、市町村長等から認定された場合、「障害者控除対象者認定書」が発行されることがあります。
仕組みは、それほど難しくありません。
障害者控除によって、税金の対象となる「課税所得」がさらに減ります。
控除が増える。
↓
税金を計算する所得が減る。
↓
税金が安くなる、ということです。
ただし、要介護認定を受けていれば自動的に認定されるわけではありません。自治体に申請する必要があります。
また、厚生労働省が示した大まかな基準はありますが、対象の要件が「市町村長の認定を受けている者」となっています。判定基準が市町村により異なる場合があるので、まず自治体の介護保険担当部署に確認してください。
認定を受けた後は、
対象者を扶養している会社員は、年末調整の障害者の欄にチェックを入れる
年末調整を行わない世帯は確定申告する
ことで控除が受けられます。
これまで申請していなかった場合、過去5年分まで還付申告によって還付を受けられる場合があります。
「確定申告はハードルが高い」という、年末調整を行わない世帯の方は。
9月頃に日本年金機構から「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」が送られてきた場合。下の図の赤丸のところにチェックを入れて返送してください。翌年からですが、控除が受けられます。

ただ、所得税は払っておらず、住民税だけ対象となっている方は、この「扶養親族等申告書」が届かない場合があるようです。その場合は、住民税の確定申告をしないと控除が適用されません。
まず、所得税、住民税を払っているかを確認してください。
そしてこの「障害者控除対象者認定書」の対象になるかを、自治体の介護保険 担当部署に確認してください。
4 医療費控除
~介護にかかったお金も、税金が安くなるかもしれない~
最後は「医療費控除」です。
医療費控除というと、病院代や薬代を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、介護保険サービスの中にも、医療費控除の対象になるものがあります。例えば、訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療系サービスです。また医療系サービスを利用している場合のみ、医療系ではない介護サービスの自己負担額も対象になるものがあります。
また、介護をしていると「おむつ代」が大きな負担になることがあります。
このおむつ代も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。
医師が発行する「おむつ使用証明書」などが必要です
もしくは要介護認定時の主治医意見書が利用できる場合もあります
主治医意見書は自治体から取り寄せるか、ケアマネジャーが取り寄せている場合もありますので、聞いてみてください。
医療費控除は、e-taxを利用すれば病院にかかった費用などは、比較的簡単に読み込ませることができます。しかし、介護サービスにはこの機能がありません。自分で領収書を集めて入力しなくてはなりません。
確定申告を行わなくてはならないので、手間はかかります。けれど、障害者控除と同じように課税対象額が減るので、医療費と介護費が同時にかさんでいる方は やってみる価値があるかもしれません。

おむつの支給制度もある
そして、おむつは、自治体から現物を支給されたり、費用助成を受けられる制度もあります。
ただし自治体によって、かなり条件が異なります。おむつが必要になってきたら、自治体に確認することをお勧めします。
おしらせ
もう二つ、読んでいただきたい記事があります
今回の記事では、介護費用を軽くする制度について、制度の側からお伝えしました。
一方で、実際に介護をしている家族から見ると、どうなるのか。
その「鏡合わせ」になるのが、ののこさんの記事です。
老健から特養へ移った義父さんについて、実際にかかった費用を1円単位で公開し、施設による費用の違いや、医療費控除の対象額まで、実際の領収書をもとに書かれています。
私自身、介護の仕事を25年以上していますが、読んでいて「これは知っておいてほしい」と思いました。
これらの記事には、専門職である私が、読んで初めて気づいたことも盛り込まれています。
医療費控除について、家族の側から深堀りした記事はこちら。
老健の退所から特養に申込んで入所するまで。そして二つの施設の医療費控除のについての記事はこちら。
どちらも有料記事です。
「【体験全記録】在宅の限界から特養まで9か月。老健の退所期限、一度自宅に戻した判断、そして1円単位の全費用」は1,500円ですが、
「施設選びを考えている方」
「施設にかかる現実的な金額を知っておきたい方」
には、特に参考になると思います。
ですので、9月9日~9月30日の期間限定で、先着5名の方について、私が1,200円を負担します。(チップとしてお返しします)
ご興味のある方は、お手数ですが、「補助希望」とこの記事にコメントか、私にメッセージをください。

おわりに
ここまで4つの制度を見てきました。
今回取り上げた以外にも、介護費用にかかわる制度はあります。「社会福祉法人による減免」「自治体独自の施設入所時の補助」など様々です。
「申請すれば必ず大きなお金が戻ってくる」というものではありません。対象にならない方もいます。戻ってくる金額が少ない場合もあります。
けれど、介護費用を考えるとき、「毎月いくら払うか」だけを見るのではなく。
いくら戻ってくる可能性があるのか。税金はいくら減らせるのか。自治体から受けられる助成はないのか。
こうしたものを全部合わせて、実際の負担額を考えてほしいと思います。
そして何より。制度を知って、必要な書類を見つけて、期限を考えて提出する。
高齢になり、判断力や手続きする力が落ちてくると、この「制度を使う」ということ自体が難しくなる方もいます。
だからこそ、介護の道筋と費用、負担を軽くする制度があるということを、元気なうちに知っておいていただくために、介護費用シリーズを書きました。
実は、私も含めてケアマネジャーは、これらの制度の詳細を知らない場合もあります。これはケアマネジャーが不勉強ということではなく、構造的なものです。いつかそのことも記事にします。
次からは、介護施設の費用について、もう少し掘り下げます。
次回予定
施設入所の費用はいくらなのか ~平均の罠、再び
注:
・2026年8月の情報を基に執筆しています。制度や基準改正が今後も見込まれます。確認をお願いいたします。
・できる限り正確を期して執筆していますが、私は税の専門家ではないため、必ず確認、検証をお願いいたします。
参考:
老齢者の所得税、地方税上の障害者控除の取扱いについて 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 老健局総務課
No.1185市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について 国税庁