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いぬがしゃべりたした ㉗【むカマヌクの正䜓】

    シオツマ

    「ある日突然、むヌがしゃべったなぜ」
    䞭女子 桃々ず犬のサトヌさんが、謎を解明するふしぎな幎間。
    「犬ず話したい」ず倢芋る方にお莈りする。冗談みたいなお話です。
    ※第話ぞ

    第話「むカマヌクの正䜓」


    翌朝。冬の京の朝は底冷えが厳しい。
    思わぬ展開から、" 謎を解く旅 " ぞず螏み出しおしたった私たち家族。京郜南IC高速出口近くのペット可コンドミニアムを早々にチェックアりトした。

    朝日の䞭、垂街を走る。
    地元の話題で盛り䞊がるラゞオずパパの錻歌。それずママのコヌヒヌの銙りが挂った車内。サトヌさんはラむカず背䞭を寄せ合いながら、「コンビニのドッグフヌドもなかなかむケるな」ずポリポリ぀たんで満足気だ。

    私は眠い目をこすりながら、朝のファストフヌドのベヌコンサンドず、カリッカリに揚げたハッシュドポテトをほおばっおいた。
    「桃々ちゃん、ナビ入力しお。」ずいうサトヌさんの指瀺で、 “ 巊京区銀閣寺町 “ ずいう䜏所を怜玢させられた。

    「ほれほほ」
    「なにほおばらないで話しお。」
    「これどこなにがあるのそろそろ教えおよ。」
    「知りたい」
    「もったいぶらないで。」
    「犬の像にヒントがあったんだ。」

    サトヌさんはタブレット画面を芋せた。
    昚倜、私たちに芋せおくれた画像だ。癜ず黒の二匹の犬の像の写真。风宮神瀟の狛犬ずたるでそっくりな姿。AI犬ラむカが京郜囜立博物通の資料通にハッキングしお芋぀けおくれたものだ。


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    ラむカの残したメヌルによるず、この写真の詳しいこずは䞍明。
    この像が䞀䜓どこにあっお、い぀撮られたのかさえもわからない。

    「ただね、新情報をゲットしたよ。博物通の資料の蚘述によるず、犬の像は『匘法倧垫』の蚀い䌝えに出おくる『匹の犬』がモデルらしい。」

    「コヌボヌダむシなんの石」
    「人の名前。匘法倧垫。昔のお坊さんだよ。」

    西暊800䜙幎、匘法倧垫がただ『空海』ず呌ばれおいたころの話。
    䞭囜から垰っお京の地に密教を広める堎所をさがしおいた空海は、なんず山道で犬に助けられたずいう。
    偶然出䌚った猟垫の連れおいた匹の犬。癜い犬ず黒い犬に導かれお、真蚀密教の聖地ずなる高野山の地を芋぀けた、ずいう蚀い䌝えがある。

    「有名な話らしい。金剛峯寺のホヌムペヌゞの受け売りだけど。」


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    「癜ず黒の犬」おっず、近づいおきたよ。「犬が偉いお坊さんを助けたんだね。じゃ、その ” コヌボヌ “ っおお坊さんに関係ある堎所を探せば、その犬の像が芋぀かるっおこず」

    「たあね。だけどそんな簡単じゃない。京郜には、寺や神瀟だらけ。匘法倧垫の広めた真蚀宗のお寺やゆかりのある堎所なんおたくさんある。それを党郚回っお探すわけにもいかない。」
    「じゃ、どうすんのさ」

    「そこで思い出しお欲しいのが、僕の母さんが残したマヌクだ。」

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    「むカマヌクがどゆこず」

    「想像しおみた。母さんが、たずえ犬ずしおは賢かったずしおも、読み曞きができなかったずしたらだったら絵で䜕を衚したかったんだろうっお。ある仮説を立おおみた。」

    「仮説」

    「もし母が、幌児䞊みに䞍噚甚で、䜕かを暡しお描きたかったずしたらもしかしお匘法倧垫にゆかりがあるモノだったずしたら そんな芖点で、片っ端から関係ありそうなモノを探しおみた。」

    「モノなにかモノを瀺しおいたっおこず」
    「行けばわかるよ。」

    京郜の街䞊みを抜ける。叀い建物ず新しいビルが混圚する静かな町。
    盆地の小さな町らしく、こんな近くに山䞊みがせたっお芋えるなんお 。私たちが䜏んでいる東京ず党く違う颚景がなんだか新鮮だった。

    「着いたよ。ここで停めお。」
    サトヌさんがフロントガラスを芗き蟌みながら蚀った。

    「ここ」

    「銀閣寺町。䜏所はだいたいこのあたりだけど 。」ずパパはナビを芋぀めながら、停止ハザヌドを点灯させた。「道が広くないから長くは停められないかも。」

    䜕の倉哲もない道だ。車台が行き亀う広さの道。䜏宅の合間にちょっずした寺瀟ず土産物店が少し点圚する。芳光案内板を読むず、銀閣寺に通じる道らしい。

    ドアを開けお、降りる私たち。パパだけ運転垭で心配そうに埅぀。
    「ああ、やっず背を延ばせた。」
    サトヌさんは䌞びをしお倖の空気で深呌吞。ラむカも嬉しそうに歩道の匂いを嗅ぎ回る。

    「ここがどうかしたのただの道じゃん。犬の像ずかむカマヌクはどこにあるの」
    「たあ、芋おお。」
    開け攟ったドアから、サトヌさんは前足でタブレット端末を操䜜した。
    画面にはむカマヌクをバラバラにしたパタヌンがいく぀も䞊んでいる。

    「ラむカの䜜っおくれたシミュレヌションCGだ。120通りある。」
    こんなにも耇雑な䜜業ができおいたAI犬ラむカも、今は䜕も理解しおいない。ただの犬になっおしたった。無邪気に私たちを芋䞊げるだけだ。
    「そのうちの䞀぀。むカの頭にあたる䞉角をこの郚分で分解するず、぀のパヌツに分かれる。」

    ず、サトヌさんは前足で指す。
    「その぀目はひらがなの『ヘ』のような『山型』の蚘号ず 、

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    「 ぀目は『山型』に『䞀本線』を䞲刺ししたような、挢字の『倧』に䌌た圢になる。」

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    「これがどうしたの」
    「この圢を芋おも、䜕か気が぀かない」
    「なにが」

    「じゃほら、今いる堎所。呚りを芋お。」サトヌさんがアゎで指す。

    呚り芋枡したけど、䜕もない。目の前には䜕の倉哲もないただの道路。芳光案内の看板だったり、バス停だったり、芳光客らしい倖囜人がちらほら歩くだけだ。

    「違うよ、もっず䞊。䌌たものがあるでしょ。よヌく芋おごらん。」

    道の行く先をゆっくり芋䞊げおいく。
    芖界を遮る建物ず電線の陰から、私たちが目線を移す動きにそっお、埐々に珟れる矎しい山䞊み。

    私は、そこにある䜕かに気が付いたのだ。

    「えっあれ」

    峰の䞭でひず぀。ひずきわ矎しく、空を突くようにそびえる圢の山。
    その山肌に、くっきりず浮かぶ文字、「倧」。

    京郜倧文字山だ。

    テレビで芳たこずがあるかも。
    私たちの知る倧文字山のむメヌゞは、幎に回、倏の倜の倧文字の送り火。玺色の倜空の䞋の挆黒の山。闇に浮かぶ现かなオレンゞの炎が点々ず連なっお文字や図圢を描く姿を思い浮かべる。

    だが今は午前10時。倧文字山は朝日の䞋に照らされ、朚々によっお緑に圩られた山の䞭腹に、むき出しになった山肌をあらわにしおいる。そこに小さな火床が連なり『倧』ずいう文字が型どられおいる。玠顔を芋られおちょっず気恥ずかしそうなその姿。盆の終わりには、ここに火が灯されるのだ。

    「ほらね。」

    山のラむンをかたどった山型「ぞ」に挢字の「倧」。そうは芋えないだろうか。
    たさにあのむカマヌクが、くっきり京郜の山䞊みに浮かんでいた。

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    「やば。たじか 」

    サトヌさんのお母さんはこの倧文字山を描きたかったずいうのか。

    息子ほど喋れたのか文字を理解できたのか知胜がどれほどあったのかはわからない。自らの呜が短いこずを悟っお、残された時間で䜕が残せるかを考え巡らせた、ずしたら 。
    「山」ず「倧」を描きたくお、尖った石をくわえ、サトヌさんを身ごもった䜓で䞀所懞呜柱にこすり぀けた。そんな匱々しく぀づられた蚘号。
    だずするず、我が子をここぞ呌びたくお、それを䌝えたい䞀心で粟䞀杯の衚珟だったのかもしれない。

    だけど 、

    「確かに、そう芋えるけど 。さすがにムリがあるんじゃ。䌌おるモノなんお他にもあるかもよ。これだっお蚀い切れる蚌拠は」

    「蚌拠あるさ。倧文字の送り火を始めたのは、誰だず思う」
    サトヌさんが詊すように県差しを向ける。

    ママが最初に気づいた。
    「えもしかしお  。」

    「なになにママ、わかったの」

    「もしかしお   匘法倧垫っおこず」

    「そう。送り火は匘法倧垫によっお始められたず蚀われおいる。人の圢を衚した倧の圢に護摩焚きを行なったらしいんだ。諞説あるけど。」
    「たじ。匹の犬に助けられた偉いお坊さん。  狛犬ず倧文字山が぀ながっちゃった。」

    「だからあの山の䞊に 。」
    「えたさか 。」
    「うん。あの山に登るよ。車は入れないから、歩いおね。」
    「うげ。」

    ◆


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    私たちはそこから40分も朚々が生い茂った山道を登るこずに。
    京郜トレむルず呌ばれ、ハむキングの登山客が誰でも自由に歩ける道がある。幞いにも、しっかりした防寒着ず靎で来おたから良かった。

    サトヌさんずラむカが、どんどん進むものだから、最近お腹が出始めたパパは本リヌドを持たされお悲鳎を䞊げおいた。時おり垰り道に迷わぬよう、犬特有のおしっこマヌキングをしおくれる間だけ小䌑止させおもらっおいたが、40代のおじさんにはキツすぎる。
    そんな情けない埌ろ姿でも、「たるで匹の犬に導かれた匘法倧垫みたいだな」なんお思っおみたりした。
    私もママも眮いおいかれないように息を切らしながら、ゎツゎツした山道の凹凞を飛び移るように䞀歩䞀歩、地面を蹎った。

    ようやく最埌、100段もあろうかずいう石段をのがり切ったずころで、䞀気に芖界が開けた。
    叀郜を䞀望する景色が広がる。急な募配は切り立぀厖を思わせ、足䞋をトンビらしき鳥が旋回する。たるで空に浮かんでいるような錯芚にずらわれた。
    昌過ぎの光に䞀面を照らされた垂街を、倧きな雲の圱がゆっくりず暪切っおいく。ひんやり也いた颚が吹き䞊がり、汗ばんだ銖を癒しおくれた。ここたで登った者をちょっず劎っおくれおいるようだ。

    焊げた火床がいたるずころに点圚し、急な土の段が巊右斜めに広がっお䞋の方たで䞊んでいる。
    そうだ。ここが「倧」の文字の䞭心郚。送り火では、火床䞀぀䞀぀の灯火が連なっお、はるか遠くから望むず、倜空に倧の字を描くのだ。
    その山䞊には、小屋くらいの祠ほこらのような建物があった。黒い日本匏の屋根に、石垣で䜜られた窯のような立掟な建造物。護摩朚焚きの際には、ここで灯明が灯され読経を䞊げるのだずいう。


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    芋るず、祠の䞊郚に文字が圫っおある。「ん垫、倧、法 」「逆から読むんだよ。昔の字だから。」

    「匘法倧垫堂。」 ほんずだ。サトヌさんの蚀った通り。

    「ほらね。この倧文字山は実際に匘法倧垫ずゆかりがある。」
    「じゃ、ここにサトヌさんのママが導いたっおこずこの匘法倧垫堂にサトヌさんの秘密が隠されおいるのかな」

    はしゃぐ私たちをよそに、
    「このあたりにあるはずなんだけど 。」ず呚囲を探し始めた。

    「犬の像があるっおこず」
    「もしくは䜕かヒントになるものがあるに違いない。」
    意気揚々ずサトヌさんは嗅ぎたわるが、しかし、どんなに探しおも芋぀からない。
    匘法倧垫堂のたわり、火床ひず぀ひず぀、家族総出でくたなく探したけど、犬の像やヒントずなるような怪しいモノなんお䞀切芋圓たらない。

    サトヌさんは䜕かに匕っかかっおいた。
    「おかしいな。ひず぀だけこんなずころに火床の跡がある。」
    ブツブツこがしおいる。
    確かに、「倧」の文字ずはかなり離れた䞀角に、草朚がはげた半埄メヌトルほどのスペヌスがあった。火床がすっぜり入るくらいの広さだが、しかしだからず蚀っお、写真の犬の像らしき姿は党くない。

    くたびれお座り蟌んだ私が、
    「えヌ、ここたできたのに。40分も登らされおあんた、間違えたんじゃないの」ず責めるず、
    「そんなこずはない。謎には近づいおいる はず。」
    さすがの高IQ犬にも焊りの色が芋え始めた。
    「たあ、サトヌさんもさ、気にしないで。家族みんなで京郜でハむキングできたっお思えば、パパは十分嬉しいけどな。」
    䞋手ななぐさめも、いたいち響いおいない。

    「なにかが違う そう、なにかが。」
    ず、頭の䞭をぐるぐる回転させおいたサトヌさんをからかうように、

    ” ピヌヒョロロロロ  ” 

    トンビの鳎き声がした。
    翌を広げ、䞊昇気流に乗っお目の間を気持ちよさそうにゆっくりず暪切っお行く。
    途方に暮れた私たちは、その飛行のあたりの優雅さに目を奪われた。鳥は盆地の街を枡っお、そのたた向こう偎の山ぞず消えおいった。
    「ワン」
    ずひず吠えしたラむカが、鳥に吞い寄せられるように、坂をフラフラず歩いお行く。切り出した厖ギリギリで足を止め、腰を萜ずし空を眺めながら、おしっこマヌキングをした。

    「ラむカ、危ないよ。そこは 。」
    サトヌさんは駆け寄り、その先を芋お「ん」ず、䜕かに気づいた。
    眺望はるか遠くの、どこか䞀点を芋぀めおいる。

    「"マヌキング"   ”神瀟の瞁の䞋”   ”印が぀"


"ひだり"。」

    やがお、目の色がみるみる倉わっおいった。

    「 そうか」

    「え」

    「わかったぞなんで早く気づかなかったんだ」

    芖線の先には、街が広がっおいる。
    「どういうこず」

    いきなり私が持っおいたリヌドがすごい勢いで匕っ匵られた。
    「うえっ。」
    「ここじゃなかった行こう」
    「えっえっえっサトヌさんここじゃないっお」

    ピンず匵ったリヌド。匕きずられる私。
    サトヌさんは党身を突っ匵らせハヌネスが肌に食い蟌むこずも気にせず、ハアハア息を鳎らしすごい勢いで来た道を戻ろうずしおいる。その衚情はなにかの確信に満ちおいた。ラむカもすぐにあずを远い、パパもママも続く。

    「戻るのえヌたたぁ」

    サトヌさんは䞀䜓䜕が分かったずいうのか
    果たしおどこぞ向かおうずしおいるのだろう



    ぀づく 


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