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#104.【英語史クイズ】のまねをしてみた

    今トレンドの英語史クイズに乗ってみようと思いましたが、ネタがやはりインドよりになり、ほとんどインド史クイズです。スミマセン。ちゃんとした英語史クイズはこちらから👇

    では問題。
    問.次の単語は植民地時代にインドから英語に借用された語彙です。このなかで仲間外れのものはどれでしょう。

     ① teapoy
     ② charpoy
     ③ sepoy
     ④ pyjamas


    それぞれの語源を解説します。

    ① teapoy
    ティーポイは茶卓としても知られる家具なので、お茶のteaと関係あると思いきや、語源的にはお茶とまったく関係ありません。ヒンディー語の ティパーイー तिपाई (tipāī) から来ています。ति (ti) は3という意味で、英語の tri-, three と同語源。पा (pā) は脚という意味です。ラテン語の「pes, pedis」に由来する pedal と同語源。スペイン語で pie は「足」を意味することからも「p」と脚の関係が分かる通り、印欧祖語では *pṓds と再建されています。ゲルマン語派ではグリムの法則で p→f およびd→tとなるため、foot とも同語源です。 ई (ī) は形容詞語尾で、「3つ脚のついた」という意味を添えています。 तिपाई (tipāī) をサンスクリット風に言うと त्रिपाद (tripāda) ですが、英語の「三脚」“tripod” とそっくりですね。もとは装飾の施された箱に、装飾性の高い3本脚がある家具のことでしたが、"ti" が "tea" であるとの連想と、英国茶の文化と共に世界に広まり、今では3本脚でないものもすべて茶卓はteapoyというようになっています。

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    研究社 英語語源辞典“teapoy”

    ② charpoy
    チャーポイは、ティーがチャイになったもの...ではありません。-poyの部分の意味は上の teapoy と同じ「脚」です。ヒンディー語の चार cār やサンスクリット चतुर् (chatur) を見て、ロシア語を知っている人なら четыре (chýtyre) と同じと気付くかもしれません。サテム語で /tʃa/ と来れば、ケントゥム語では /k/ のことが多い、ということは quatre (仏), quattro(伊), cuatro (西) や 英語の quarterと同じということで、4という意味です。charpoy はヒンディー語の チャールパーイー चारपाई (cārpāī) から来ていて「4つ脚のついた」という意味で、英語風に言うなら“quadruped”。ベッド床板が板ではない、編みベッドのことです。西洋式ベッドより軽いので、夏などには戸外や屋上に置いて寝ることもあり、気持ちがいいです。

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    研究社 英語語源辞典“charpoy”

    ③ sepoy
    ひと昔前、世界史で「セポイの乱」と呼ばれた事件は今では「インド大反乱」となっています。イギリス東インド会社の傭兵が反抗したことを皮切りに抵抗運動が全国に広まった事件です。sepoy という語はポルトガル語などを経由して入って来ましたが、ヒンディー語のスィパーヒー सिपाही (sipāhī) はペルシャ語からの借用語です。意味は「兵士」を意味します。(詳しい語源解説は次回)

    ④ pyjamas
    パジャマは、ヒンディー語の पैजामा / पाजामा (paijāmā / pājāmā) から来ています。スィパーヒーと同様、ペルシャ語からヒンディー語への借用語です。ムガル帝国時代の北インドには中央アジアやペルシャの文化がたくさん入って来ました。パジャマもその中の一つです。 पै (pai /pæ/) あるいは पा (pā) は前述の teapoy, charpoy の -poy と同じです。意味は پا (pā 脚) + جامه (jāma 衣服) ですので、本来パジャマは下に履く方だけを指しています。インドの伝統的な衣装では、下半身は男性ならドーティやルンギー、女性ならサリーと言った1枚の布を巻くスタイルでした。

    ということで、4つのうち3つは「脚」に関係する語彙で、そうではない sepoy が仲間外れです。

    ① teapoy 三脚「茶卓」
    ② charpoy 四脚「編みベッド」
    ③ sepoy セポイ「兵」
    ④ pyjamas 脚服「ゆったりとしたズボン」

    ここで、英語に借用された初出年を見てみましょう。初出時代順に並べると、

    sepoy (1718)
    pyjamas (1801)
    teapoy (1828)
    charpoy (1844)

    となっています。英語への借用語は、古くからインド哲学の用語や、食材に関する語彙が、ラテン語・ポルトガル語・フランス語を通してみられていました。イギリス東インド会社が設立されて自国の船で直接現地へ航海するようになると、借用語は他の言語を経由してではなく直接入って来るようになります。そしてインド大反乱の後、イギリス政府は東インド会社を解散し、ムガル帝国をも解体し、イギリス国王がインド皇帝を兼任する、直接統治へと路線を変更します。その頃から借用語彙も、支配・統治に関係する語彙が増え、ヴィクトリア期には借用語彙数が最も多くなります。それまではインドは特産品の仕入先でしたが、この事件以降、駐屯させるイギリス人兵をさらに増強したり、財を貯めて現地で使用人に囲まれて生活する富豪もさらに増え、現地の生活に密着した語彙が増えたようです。例えば、

    shampoo (1762) シャンプー:もとは「マッサージしろ」という意味のヒンディー語(チャーンポー)。香油を使った頭部の「マッサージ」から「洗髪」を意味するようになり、その後「洗髪剤」を指す意味に変わった。

    bangalow (1851) バンガロー:もとは「ベンガル風の」という意味の言葉。イギリス統治は初めベンガル地方から始まった。バンガローはベランダのある平屋様式の宿泊施設のこと。最初は避暑地の白人用簡易住居として建てられ、後に大英帝国の影響下にある他の諸国に広まった。インドでは「郊外の豪邸・金持ちの家」というニュアンスがある。

    逆に、インドで「अंग्रेजों के ज़माने से from the era of the British」という表現はどんな意味かと言うと、その時代から続く「老舗の・由緒ある」というニュアンスになり(歴史のある学校などについて語られる文脈では特に)誇りをもったイメージで使われます。しかし、インド・パキスタン独立後は、インド言語から英語への借用語数は減り、イギリスや世界へ移民した人たちが広めた食文化の語彙へと重心が変わるような傾向がみられるようになります。

     
     
     
    மொழி குறிப்பு ~もじくりっぷ~ 英語・ヒンディー語を中心に、語源・音韻変化・歴史・地名・城郭など、言葉や風土の比較から見る文化のつながりを探っています。 体系的な解説ではなく、気付いたことや考えたことを記録する大人の自由研究です。思いつきや仮説も多分に含まれます。

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