
【人生で自慢できることを考えてみた】-日々の実務の断片
とあるネット企業の元CTOと、年に1〜2回、会食する機会がある。
当社グループの創業時に大変お世話になり、今でも親交が続いている。
ある晩、当社グループ創業者、私、元CTOのN氏の3人で会食していた。
歓談している中で、N氏がふと口にした。
「これまでの人生で、何か自慢できることある?。」
突然の問いだった。
創業者と私は「何だろう」と頭をひねっていた。
N氏は少しだけ間を置いてから言った。
「ビル・ゲイツと孫正義と、3人で会食したことかな。」
創業者と私は「おぉ~」と驚きながら、遠い世界の話として聞いていた。
順番が回ってきて、私は何となく 「当社をIPOさせたことですかね」 と答えた。
その場はそれで終わったが、帰り道、 胸の奥に小さな違和感が残った。
自分は、人生を振り返ったことがほとんどない。
そう気づいた瞬間だった。
実は、その気づきが、noteを始めたきっかけでもある。
実務の世界では、成果より“課題”が先に見える
日々の仕事では、 出来ていないこと、改善すべきこと、次の課題ばかりが目につく。
よい思い出もいろいろあるが、「まだ足りない」「もっと詰めないと」 そんな思考が頭を占めていることが多い気がする。
だから、自慢できることを考える習慣がない。
胸を張って言えるようなことは、あまり思い浮かばなかった。
ただ思い起こすと
人生で一番ストイックにやったこと
と言えるものがあった。
税理士試験という“もう一つの実務”
新卒で入った信用金庫を2年1か月で退職し、 専門学校に通った。
税理士試験は会計科目2科目、税法科目3科目、合計5科目の合格が必要だ。
税法科目は「理論」と「計算」がある。
理論は大量の暗記とアウトプット、計算は正確さとスピードが必要。
まるで一つのスポーツのようだった。
受験勉強開始当初、数分の理論ミニテストで、私は3行しか書けなかった。
周囲を見ると、20〜30行書いている。
その光景を見た瞬間、 胸の奥がすっと冷えた。
「とんでもない世界に足を踏み入れてしまった」
そう思った。
24〜25歳で2科目、28歳で1科目。そこから長い停滞へ
受験に専念した24〜25歳の1年半で2科目合格。
その後、社会人をしながら28歳で1科目合格。
しかしそこから、なかなか合格科目が出ず、半ばあきらめ、勉強から遠ざかってしまった。
実務の世界でも、努力がすぐ成果につながらないことがある。
税理士試験の停滞は、どこかその感覚と似ていた。
36歳、大学院へ。IPO準備と修士論文作成が同時進行した日々
24歳で税理士試験の勉強を始めて干支が1周してしまった。
それでも、応援してくれた家族や関係者のためにも何とか形にしたくて、36歳から大学院に通った。
平日は深夜までIPO準備。
土日は大学院で授業と修士論文作成。
多忙という言葉では片付けられない日々だった。
3科目合格していれば、修士論文を国税局に提出し、審査を受けると残り科目が免除される制度がある。
その制度を使い、税理士となることができた。
2011年3月、東日本大震災で大学院の卒業式は中止になったが、10月に上場。
忘れられない一年になった。
IPOは自慢できることだった。でも、もう一つある
振り返ると、IPOは確かに自慢できることだった。
ただ、その裏で続けていた
修士論文作成、国税庁提出、税理士資格取得
これもまた、自分の人生で静かに誇れることなのかもしれない。
実務の世界では、成果は数字や株価で測られることが多い。
しかし人生では、
折れそうになりながら続けた時間
が、静かに自分を形づくっていく。
自慢できることは、派手な瞬間ではなく、静かに続けた日々の中にあった。
みなさんの自慢できることも聞いてみたい。