
【小説】第二章|セカイの世界|〜リブとの出会い〜2/3
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第二話:稲妻
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あの日、初めて見たんだ……
“死神”を……
霊界とこの世が繋がっていたのは今いるこの病院だった。
この世とあの世を繋ぐトンネルのようなものは定期的に場所を変えるらしい。
自分の事は周りからは見えない。現に前を通ったのは幽霊。
そう断言出来る理由は2つ。
生きている人間より少し“透けている”と言う事。
なぜかは分からない。お互いすれ違ってもぶつかる事はなくすり抜けてしまう。
後は目を見ると分かるのが“輝き”がない。
大抵俯いているので目まで見る事はないが…
もしこれらに気付いた時、初めて自分は“死んだ”と分かるのかもしれない。
特にここは病院。
他の場所より幽霊は多いし様々な感情を抱えている。本当に居心地が悪い。
生きている人間は見えていなくて本当にラッキーだと思う。
どこか誰もいない場所を探そう…
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他の階へ行っても同じだ…
今思えば病院の外へ行けば良かったが出口には行かなかった。
行けなかったのか出られなかったのか、もしかして死希科との巡り合わせだったのか……
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どんよりした雰囲気から逃げるように非常階段へ行ってみた。
誰もいない……初めて落ち着くことが出来た。
そりゃそうか。幽霊は恨みのある人間を探す。悔いを残すのは人間に対して。誰も非常階段に未練はないからいる事もないのか……
目の前を若い二人の男性が通った。
男A『おい。本当に合ってんのかよ』
男B『ネットに書いてあるんだって。ここで“4秒立ち止まるとドアが現れる”って。』
男A『本当だったらいくらで売れるんだよ、このネタ』
男B『結構稼げるんじゃね?そもそも病院に“死にたい人を受け付ける”って事でさえ世間は騒ぐぞ。週刊誌に売り込んでTVで取材を受けてから動画も提供して…って考えたら結構いけるんじゃね?』
男A『億も夢じゃねーかも!』
男B『あ、ちゃんと“死にたい”って心で唱えてるだろうな?じゃないとドアは現れないらしいぜ』
男A『分かってるって!ずっと死にたい感じ出しとくって』
男B『そうそう。俺はペン型のカメラで撮ってるからお前は…』
男A『音声な!レコーダーも準備出来てる!』
男B『音声から提供してその後に動画も渡せば信憑性高まるし小出しにする方が注目度も上がるだろうぜ』
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当たり前だが男達は自分の存在には全く気付く事もなく目の前で話し続けている。
リブ「ここで全部聞いてるんですけどぉ……」
男達は階段を上がり切る一段手前で目を閉じ“死にたい”と呪文のように繰り返し唱えていた。
すると階段の先にふわっとドアが現れた。
男B『おい!ドア!ドア!出て来た!』
男A『やば!これマジ?』
男B『ここからだぞ!演技忘れんな!』
興奮気味の男達は階段を上がり切りドアの中へと入っていった。
あの人達は一体何を話していたのか…
あのドアの向こうは一体何があるんだ…?
リブ「でも俺ってやっぱり周りからは見えてないのか……」
霊界では自分はちゃんと存在していた。周りにも見えているしなんならあっちではちょっとした有名人なんだぞ……
でも思い知らされている……
自分は死んでいると言う事を
リブ「落ち込む事もない!うん!死んでもこうやって自由に過ごせてる!きっとこっちの世界でも話が出来る人と出会える!そうだ!」
死んでから体は半透明になっている。霊界では何も不自由はなかったが、こっちの世界に来ると何かと不便な事が起こった。
まず物体が触れない。
すり抜けてしまうからだ。触覚がないのか…いや自分の体を触ってみると感覚はある。
リブ「でも…触れないけどすり抜ければ良い!」
男達が入っていったドアに入ってみることにした。
不便だと思っていた自分の体も初めて便利だと思えた。
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白で統一されている部屋だ。
さっき入っていった男達の前には若そうな男性が立っている。
右側にも部屋がありそうだ
ーー部屋の中のソファーに横になってくつろいでいる男性がいる。真っ暗な部屋で他には何も置いていないようだ………ソファーの男性は一瞬こちらを見た様な気がしたが……気のせいだろうーー
自分は誰にも見えないのだから…
元の部屋に戻ると話し声が聞こえる。
セカイ「死希総合センターのセンター長をしております……」
男A『ぼ、僕達……死にたくて……』
男B『ここに来たら死ぬ手続きをしてくれるって…もぅ生きていく意味もなくなってしまって…』
リブ「さっき言ってたのはこれか!人を騙すなんて何が楽しいんだか!こんな事するぐらいならもっと他の事しろ!騙してお金貰って何が楽しいんだ!そんな生き方するな!!」
一人でぶつぶつ文句を言いながら男達の方へ近付いていくと明らかにここのセンター長の男性と目が合っている。
リブ「え…?」
向こうも目を真ん丸にしている。
リブ「まさか(笑)さすがに霊感があっても俺の事を見えるのは……両親ぐらい…あの時は驚いたなー。うちの両親みたいな人間は…もういない。それにしても最近の人は顔が小さくてスラーっとしてなんと男前な事!銅像?いや、彫刻?仏像?いや仏像様じゃないな(笑)系統が違うわ!ははっ(笑)こんなに男前を近くで見られるなんてある意味死んでて良かったー!なーんて」
「ふふっ」
笑った?
男A『聞いてます!?僕達死ねるんですよね?』
セカイ「あ、失礼致しました。もちろん受付させて頂きます。それでは……本当に決めてしまってよろしいですか?」
男B『もちろんです。もぅ生きていく気力がないんです…』
男A『ただ最期に家族に感謝を伝えたいので一週間後にお願い出来ますか?』
セカイ「……かしこまりました。それでは一週間後、お待ちしております。」
男A『ありがとうございます…それではよろしくお願いします』
男達は出て行った。
二人の後を追いかけた。
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ドアを出ると二人は階段の下ではしゃいでいた。
男B『やべー!まじなやつじゃん!すげー!本当にあったぜ!』
男A『中はあいつだけだったな。一人ぐらいならなんとかなりそうだな』
男B『何か弱そうだし。でも何で一週間後とか言ったんだよ』
男A『まず今撮った動画と音声を編集して、週刊誌に売って…いやまずTV局か?とりあえず準備しないとだろ?』
男B『そうか!とりあえず帰って確認しようぜ!』
リブ「あの男前くんに教えなきゃ!」
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もう一度ドアをすり抜けた。
リブ「いや…どうやって伝えたら良いんだ?俺の姿も声もあの人達にはどうすれば……」
先程の男前くんは奥の部屋でくつろいでいた男性と話をしていた。
リブ「物に触る事も出来ない…あんなどうしようもない人間の事を伝える事も出来ない…やっぱり幽霊って無力なんだな…この美しく透き通った姿も見てもらえない…結構優しいしまぁ男前まではいかなくても心はとっても綺麗で…って自分で言うのもなんだけど見えても損しないと思うのに……誰にも相槌してもらえないなんてやっぱり寂しいよなぁ……」
セカイ「あの…全部聞こえてますけど」
リブ「!」
テンリ「こんなよく喋る人初めて見たわ(笑)」
リブ「見えてますか?聞こえてるんですか?本当に?」
テンリ「見えてるし聞こえてるしなんならちょっと黙っててほしいぐらいです(笑)」
リブ「話せてる!!これは夢なの?もしかして半透明じゃなく……半透明のまま!それなのにお話してる!!」
セカイ「あの、入って来た時からずっと見えてます」
テンリ「同じく(笑)」
リブ「そうかぁ……また人間と話せる日が来るなんて……」
テンリ「俺、暗麻 天空。人間じゃなくて“悪魔”だけどね」
セカイ「闇内 セカイです。ちなみに“死神”です。仏像って言われた瞬間吹き出しそうでした(笑)」
目の前にいる二人は死神と悪魔と言う。冗談でも初対面にそんな事言うだろうか……
リブ「あ、俺……氷雨 命。人間……と言うか幽霊で…死んでからだいぶ経つんですが。」
セカイ「珍しい名前ですね?キラキラネームってやつですか?」
リブ「あぁ死んでから戒名を貰ったんだけど何かしっくり来ないなぁと思って、命は大切だなって思って自分で考えたんだぁ。死んでるけどlive生きてるみたいな?これ霊界で話したら結構ウケるんで気に入ってんだよね!」
テンリ「自分で決め直すってのもなかなかいないね(笑)」
リブ「いやいや!そんな事より!君たちに伝えたい事があるんだ!」
そう言い自分の見た事、聞いた事を全て話した。あの二人は君たちを騙そうとしていると……
セカイ「そうですか」
リブ「ごめんなさい、いきなり…でも本当なんだ!信じてって言っても信じてもらえないかもしれないけど……俺の“見えてる世界”も伝われば良いんだけど……」
セカイ「見えてる世界?」
リブ「俺、相手を見るとその人が透けて見えるんだぁ。負の感情だけなんだけど。何かこう頭の上に…あ、テレビみたいに映し出されるんだ!それが君たちにも見えたら良いんだけど…」
セカイ「あぁ…じゃあテンリの“あれ”いけるかな?」
テンリ「あー!」
リブ「あれ?」
テンリ「普段人間との取り引きの時に使うやつでね。幽霊にはやった事ないからなぁ。あっ、でも元は人間か、やってみるか!」
…………天空星雲
辺り一面にもくもくと黒い雲が現れた。今にも雷が起きそうだ。
テンリ「いつもはこれを使って幻想を見せてるんだけど、相手の考えてる事を映した事ないんだよなぁ。ここからどうしたもんか…」
自分は触れるはずもないが真っ黒な雲に手を伸ばしてみた。
バチッ!
指先からピカっと光が飛び出した。
それと同時に真っ黒な雲がだんだん灰色から白、透明へと変わり非常階段にいた二人の男の姿が現れた。
セカイ・テンリ「え!?」
リブ「わ〜!」
テンリ「静電気か!これで繋がったのか!使えるかも!」
セカイ「でも幽霊から静電気って出るの?」
リブ「きっと俺、“電気持ち”なんだと思う」
自分では何となく分かった。死んだ時の影響だろう。
セカイ「リブが見たのはこれの事?」
そこには自分が見た光景が大スクリーンのように映し出されていた。
リブ「そう!これ!」
セカイ「あいつ等の頭の上にも映像みたいなのがあるけどそれも?」
リブ「そう!実際目で見たのは大きな映像の方で、頭の上の小さい映像は彼等の頭の中を俺が透かして見ている映像。」
テンリ「考えてる事も見えてるって訳か!」
セカイ「じゃあその二人の周りを囲ってる黒い渦巻きみたいなやつは?」
リブ「あれは俺が見てるその人の印象みたいなものかな?声が聞こえなかったとしてもあの渦巻きで判断出来るんだよね。」
セカイ「なるほどぉ」
テンリ「すげー!」
“渦巻き”と言うのは人が放つオーラと言う物らしい。自分に悪影響のある場合のみ見える。
その人の背中に現れたりその人自体を覆うような感じだったりと渦巻きと言っても様々な形だ。色も人によって変わる。
リブ「まぁそんなこんなであいつ等は君たちを利用しようとしてるんだ!」
セカイ「なるほど。でも俺たちにはその渦巻きとかは見えないの?」
リブ「え?」
テンリ「あ、確かに!俺達、死神と悪魔だぜ?」
リブ「一応聞くけど……それ…本当?」
テンリ「疑ってたのかよ、自分も幽霊なのに(笑)」
リブ「だって何か初めて見たし」
セカイ「俺達も初めて明るい幽霊に会ったよ?」
テンリ「どっちもどっち!(笑)」
リブ「……それもそうだね!でも………そう言われたら不思議だね」
セカイ「いやいや、どちらかと言うと魂奪う側だから悪じゃないの?」
リブ「ん〜………。でも……死神と悪魔なんでしょ?そう言う役目みたいなもんだよね?あ、でも人間を死に追いやるのか。いやでも全人間にはやらないのか…でも魂奪われると言う事は…俺も狙われるのかな?ん?でも2人からは特に何も見えないと言う事は…良い人なのかな?」
セカイ「狙わないよ(笑)」
テンリ「奪う魂ないじゃんか(笑)」
リブ「はっ!そっか!じゃあやっぱり……俺の見えてる世界に間違いない。まぁそう言う事なんだ!そうだよ、このままでは君たちは利用されてしまうよ!」
セカイ「だいたいは分かった。でもここがどこかって言うのは分かってる?」
リブ「何か死にたい人を受付するって………ん?ここって……」
セカイ「俺達は死にたいと言う人間を受け付けて希望を叶える。そして奪った魂は闇の世界へ送る。」
リブ「死神ってそう言う仕事なの?」
セカイ「いやこんな事してるの俺等だけだと思うよ。」
リブ「何か死神って急に現れて命奪うみたいなイメージだったなぁ」
セカイ「確かにそれやってる方が多いよ。」
テンリ「でもさぁ、理由は色々あると思うけど死にたいとか迷惑かけるとかそんな人間多いじゃん。じゃあ人間から来て貰った方が早いのかなって」
セカイ「ただ単に魂取ってた時もあったけどあんまり長持ちしなかったんだよね。生きたい気持ちがある人間の魂は闇の世界では明るすぎる。だからある程度“選別”出来るようにここを作ったんだ。」
リブ「色々考えてるんだなぁ」
テンリ「俺は悪魔だから人間の前に直接現れる事も多いけど、本当に人間か?って言うの増えてきたよね。悪魔より悪魔だわ。まぁ後々その人達の魂も取るけど。」
セカイ「ちゃんと選別した魂は闇の世界でずっと使えるから“はーちゃん”も喜ぶんだよね」
リブ「はーちゃん?」
テンリ「闇の世界の王みたいなもんかなぁ」
セカイ「王じゃなくてメガミな」
リブ「メガミ?」
セカイ「冥界の神で冥神。死神とか悪魔とかまだ色々いるんだけど、その世界の一番偉い人みたいな感じかな。で、得た魂はまず“しいたまさん”に納めに行くんだ。そこから平等に分けていく…みたいな感じで…今度会わせてあげるね」
例え幽霊でも闇の世界の話を聞く者はいないであろう話を、初めて会った幽霊に細かく話す二人に呆気に取られた。
リブ「そんな大事な話をさ、ふらっと来た幽霊にしても大丈夫なの?」
セカイ「ダメだね。」
テンリ「ダメだな。」
リブ「えー」
セカイ「まぁ色々教えてくれたし」
リブ「信じてくれるの!?」
テンリ「信じると言うか、リブの映像によるとここを出たあいつらは非常階段の前で話していたと。」
リブ「そう!だから俺も後をつけた。」
テンリ「本来ならここを出た人は非常階段には戻らないんだ」
リブ「え?でも普通は入口と出口は同じだよ?」
セカイ「俺の“世界”に閉じ込めたから」
テンリ「なっ?」
リブ「ど、どう言う事?」
セカイ「帰す訳ないでしょ。まぁそれとリブの独り言が気になり過ぎたのもある。」
リブ「でも帰ったよ?一週間もしないうちにあいつ等はセカイくん達の事を世間にバラすんだよ?」
セカイ「そうだね」
リブ「ここの場所もバレちゃうよ?」
セカイ「そうなるね」
リブ「何とも思わないの?」
セカイ「……そうだね(笑)」
テンリ「まぁ………見たら分かるよ!」
セカイくんはお腹の辺りで右の手のひらを下に向け、何かを掴むようにくるっと丸めて目の前でゆっくり開いた。
手の中には小さい人形のような二つの“塊”が存在していた。
真っ黒で人間の形と言う事しか分からないが二つの黒い塊は小刻みに動いたりしている。
リブ「それ…何?」
セカイ「可愛いでしょ?分身みたいなもんかな。さぁ来てもらうか」
リブ「来てもらう?」
そう言うと人間の形をした物体に人差し指でトントンと合図をした。
それと同時に死希科の扉が開いた。
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