
【小説】第二章|セカイの世界|〜リブとの出会い〜1/3
あらすじ
死希総合センター、通称死希科は総合病院の4.4階に位置する。ここへの行き方は“死”を望む者のみ知る事が出来る。
セカイはセンター長で仲間と共に運営している。仕事は文字通り“死”を“希望”する者を受け付け、死希科に来た者を“ノゾム様”と呼ぶ。
仲間の一人“リブ”は明るく心の優しい唯一の幽霊だが人間からはその姿は見えない。そもそもなぜ彼がここに来たのかと言う所から物語は始まる。
霊界と繋がっていたこの総合病院に降りてきたリブは非常階段で二人の人間を見つける。彼等は世間に死希科の存在を暴露しようと悪巧みしていたのだ。彼等の後を追いかけそこで出会ったのがセカイだった。
リブはここで初めてセカイが生きている“世界”を目撃するのだった…
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第一話:天空
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「それではノゾム様、いってらっしゃいませ。」
今日も一人黄泉の国へ門を開けて来た。死希科は毎日順調だ。
毎回、門を作っている訳ではない。
全てはより純度の濃い“魂”の為にしているのだ。
「よっ!セカイ!」
セカイ「天空!久々!」
3ヵ月振りに死希科に帰って来たのは、ここを一緒に立ち上げた暗麻 天空。幼馴染だ。
死希科は私、闇内セカイと双子で姉の闇内 夢、そして天空とで立ち上げた。
今では仲間も増えて、太陽 想、アポロ、そして氷雨 命も加わった。
天空「ってか命の事仲間外れにしたんだって?」
セカイ「え?してないって」
想「ノゾム様が見えんかったから紹介せーへんかったんよね?」
セカイ「まぁ見えてないのに紹介した方が怖いかなって…」
天空「相変わらず優しいよなー。で、命は?」
命「いてるのよ、さっきから」
天空「嘘だって!ごめんごめん!笑」
アポロ「これだから透明人間は…」
命「黙れ、コッペパン!笑」
アポロ「やめろっつーの」
夢「天空にも見せてあげたかったなぁ〜アポロの可愛い“子犬”姿…」
天空「え、アポロ子犬になれんの?大型犬しか無理じゃない?」
アポロ「黙れーやれば出来んだよ」
:
セカイ「そう言えばあれからパンちゃんに会ったんでしょ?」
アポロ「そう!良い犬なんだよなー。“あの時”もすんなり聞いてくれたし。でもただ一言、
『このまま連れていかないでね』
って。すんごい優しくしてくれてるんだって。で、先週だったか散歩してるパンちゃん見かけて話しかけに行ったんだよ」
命「コッペパンで?(笑)」
アポロ「そりゃそうでしょうよ!カラスが話しかけて来たら追い払われるでしょうよ!」
セカイ「確かに」
アポロ「で、挨拶したのよ。そしたら
『約束守ってくれてありがとう』

って。朝未様が決めた事ぐらいパンちゃんも分かってるだろうに。賢い犬だわ。ちょっと惚れたもんな。朝未様も薬が合ったのか体調も良くなったんだって。」
:
“パンちゃん”と言うのは以前の死望者様が飼っていた犬の事だ。その飼い主である朝未様は死希科に来たノゾム様だった。
朝未様が最後に来た日、アポロはパンちゃんに変わって死希科まで案内していた。
セカイ「そっか。やっぱりあの方は死ぬべき人じゃなかったね。命の部屋は間違いないわ」
想「命の部屋?あの相談室の事?」
セカイ「うん。あれ、命が“見えてる景色”を実際に見えるようにしたんだよ。」
想「そうなんや!命って何か特別な能力とかあんの?」
命「ない!」
想「えっ!?」
セカイ「彷徨い続けた結果なんだよね。(笑)」
命「そう。色んな時代で色んな人を見て来たただの経験値。」
想「すご!私リブの部屋見た事ないわ。ただの相談室と思っとったし。」
夢「そう思うでしょ?私今回初めて入って見たら本当にびっくり!」
セカイ「朝未様のはかなりレアだったよ。俺も驚いたもん。」
命「俺、第一印象で決まるんだよね。昔は漠然と良い人か悪い人みたいな感じだったんだけど、その人の考えとかが“透けて”見えるようになって来て。朝未様の場合は草原だったんだけど穏やかな空間でずっと旦那さんとパンちゃんが近くで見守っていたんだよね。」
想「草原って言うのは朝未様が行った事あるからとか?」
「いや、違うんだけど何か朝未様は病気が原因だったでしょ?もし病気じゃなければきっと死ぬ事は考えてなかったしきっと旦那さんとゆったりした生活を送ってたと思うんだよね、それで多分草原だと思う。なんとなくの感覚なんだけど」
セカイ「死神でもリブみたいに景色とかまでは見えないからね。」
命「ここに来る方達はやっぱり色んな人がいるね。」
セカイ「俺はリブが見えてる景色が見たくてわざわざ相談室に入ってるみたいな所もある。」
天空「で、それを俺が作った。」
想「え!?」
天空「だいたい命に関わるものは俺が加工してるかなぁ?」
想「私最初の頃知らんし何で命がここに来たか知りたいかも!」
天空「俺が相談室作った話はどこ行った?」
夢「私も命の話聞きた〜い!」
天空「夢は知ってるだろうよ」
命「メアちゃんとメモたんに言われたら喜んでお話ししますっ!」
天空「誰も俺の話聞いてないのかよ」
「じゃあ、天空くん?」
「はいはい、じゃあ………天空星雲」
ーー辺り一面真っ黒な雲が出て来て映画館のように大きなスクリーンを作り出した。これは天空の能力の一つだ。
記憶や頭の中の光景を映像として第三者が見る事が出来る。
命「じゃあ話すとしますか!」
✴︎
リブ「あれは丁度、病院を彷徨っていた頃の事。ここの死希科を見つけたんだ。」
メモリ「え、ちょっと待って。リブは病院で亡く…なったん?話しにくかったらスルーしてな?」
「あ、全然大丈夫!病院とは全く関係なくて事故みたいなもんだったんだけど、霊界から降りてきた所がここの病院で」
メモリ「そうやったんやぁ」
「そうそう。」
メモリ「でもさ、人間やったら成仏して生まれ変わるとかやん?彷徨い続けるもんなん?」
「あーそうだね話、端折り過ぎたね、ごめんごめん。死んでからなんやかんやあって霊界に行ったんだけど、それはそれは面白くもない所で…」
メモリ「そりゃあ(笑)」
「何か向こうに行ったらとりあえず階段登って、これからどうなるか面接みたいなの受けるんだよ。まぁ天国行きか地獄かを決められるんだと思うんだけど、それまでが長くて…」
メモリ「面接行くまでがって事?」
「そう。霊界に来る人ってかなりいるんだよ。そもそも一人一人生きて来た年数も違うから面接も長くて。一人ずつだしそう考えるとだんだん幽霊で溢れるでしょ?」
セカイ「あー裁ける人数と死んでくる人数が違い過ぎて?」
「そうなのよ。面接待ちで溢れかえるのよ。死んでくる方が圧倒的に多いから。俺もあっち着いてから周り見ても明らかに一日二日じゃないんだよね。で、近くにいた幽霊に聞いたんだよ、「どれぐらい待ってるんですかぁ?」って。じゃあ「ここは面接の番号札を貰う場所でまだその奥があるらしいですよ」って。面接までの番号札を貰う為にも混んでて貰ってからもまだ先があるって言うんだよ。」
メモリ「で番号札いつ貰えたん?」
「3年後」
メモリ「え!?そんなに!?」
テンリ「霊界は混んでるって聞いてたけど凄いねー」
「3年は同じ場所でずっと待ってるだけ。ただ立ち止まってるんじゃなくて一歩ずつ前には進んでるんだけど、先が見えない感じで。長い列になってるんだけど、列の先にはお城みたいなのがあって、そこで番号札を貰ったのね?でその番号札を渡してる人に「あとどれぐらいですか?」って聞いたのよ。そしたら…」
案内人「このお城を出て頂くとどこで待ってて貰っても構いませんよ。番号順にお呼びしますので。呼ばれたら大きなお城に入って下さいね?まぁ今からですとだいたい50年程でしょうか……」
メモリ「50年!?」
「そうなるでしょ?案内人も毎日そのリアクション見ててもう慣れてるんだろうね。」
メモリ「でも死んで成仏して…って生まれ変わりみたいな話よぉあるけど…」
「多分この世界と向こうって時間の進み方が違うのかもしれないね。そもそも“時間”って感覚がないのかも」
セカイ「確かに。よくノゾム様にルート渡す時『普通の時計と違う』って言われるけど俺等時間を気にしてないからよく分からないんだよね。」
テンリ「人間はよく“時間”を気にしてるからそれに似たルートを作ったんだよ。」
メモリ「あーそう言う事。」
リブ「時間は寿命にも関係してくるし一日は24時間でしょ?年も取るし衰えてもくる、人間には“限り”があるんだよ」
セカイ「限りがあるって分かってるのに人間は自分から死にたいとか思うんだね。」
メア「やっぱよく分かんないねっ」
リブ「昔はそもそも寿命が短かったんだ。でも今は100年生きる人もかなり増えた。生きていく環境もかなり複雑になってしまったのかな。簡単に死を意識する人は多いのかもしれない。まぁ霊界で言われた50年はもっと長いように感じるけどね(笑)」
メモリ「皆ちゃんと待ってんの?」
「いや、番号札を貰えばどこに行っても良い。ずっと同じ所で待ってると考える事って自分が死んだ時の事とかになってくるんだよ。それでよく幽霊として戻って彷徨ってたりするみたい。そりゃあ恨んでやる!とか呪ってやる!みたいな人多くなるよ。やる事ないもん。待ってるだけだし」
メモリ「まぁそうやね。」
「俺もある程度その場にいてたけど、周りは俯いてる人とか怒りやとにかく負のオーラが凄くて。とりあえずどっか行こうと思って。霊界と繋がってるのがここの病院だったんだよね。と言うか色々トンネルみたいにこの世と繋がるらしいんだけどその時はちょうどここだったのよ。この病院昔はもっと汚くて建て替え前だったんだよね。そりゃ病院だしもっと暗い幽霊まみれで。」
メモリ「まぁ病院やしね」
「医療も今程進んでないしとにかく医療ミスも多かったみたいで。何かだんだんこっちまでしんどくなってくるのよ。幽霊にも色んな感情はあるし生きてる人間ももちろん俺は見えてるし。それでここも居心地悪いなって思ってやっぱ戻る事にしたんだ」
セカイ「霊界に?」
「うん。あっちはあっちで暗くてどんよりしてるし面白くないしどうせ成仏するなら楽しくしたいなって思ってコンテスト開いたの」
メア「え?」
リブ「私はこうして死にましたコンテスト」
テンリ「…(笑)」
「そこら辺にいる幽霊に聞こえるようにマイクで呼びかけて『どうせこのまま待ってるなら自分の気持ち吐き出しませんかぁー!?』って。じゃあ案内人達が舞台作ってくれて」
メモリ「誰が一位決めるん?」
「一位も最下位もなし。人に順位なんて必要ないから終わらない。今でも霊界行ったらやってると思うよ?コンテストと言うより発表会だね(笑)」
セカイ「今度見に行ってみようかな」
「まぁ俺が言い始めたから俺から喋って、じゃあ次から次へと皆話し始めてくれて。何か恨めし恨めしって言ってた幽霊も顔上げてね。話終わったらスッキリする幽霊もいればやっぱり許せん!とか言って地上に行く人とかね!変わった死に方とかした人はちょっとした有名にもなるし皆すんごく明るくなって歌ったり踊ったり泣いたり笑ったりパーティ会場みたいになったんだよね!」
テンリ「絶対行ってみよー」
「本当に楽しいし色んな話聞けるから今後おいでよ!」
メモリ「じゃあずっとそこにおる感じやったん?」
「あぁそれがねぇ気持ちを吐き出した事で皆が明るくなって裁きの時間もかなり短縮するようになったらしく急に案内人に呼ばれて。霊界で貢献したから成仏せずにここで働いてほしいって言われたんだよね。で働く事になったから成仏してないの」
メモリ「そんな事あるんやね!」
「初めて来た幽霊に霊界案内したり面接の前に個人的に話聞いたりしてて、何年経ったのかしばらくしたら俺の両親が来たんだわ」
メモリ「ご両親より先に亡くなってたんやね、リブ」
「うん。で再会して案内人に説明して両親も霊界に留まる事になったんだよ」
メモリ「また家族と一緒に過ごせるようになって良かったやん」
「まぁそれは良かったけど、うちの両親ちょっと特殊で『お前はここにいるんじゃなくて生きてる世界で彷徨っている幽霊を助けてあげなさい。』って言われて。まぁ死んでからどうしたら良いか分からない人もいっぱいいるし霊界に案内するのも必要だからって事でこっちに来る事にしたんだぁ」
テンリ「まぁ人間世界にも幽霊いっぱいいるもんねー」
リブ「で彷徨ってたらここを見つけたって訳」
テンリ「丁度設立したぐらいだったっけ?」
セカイ「そうだね。ほらあの二人組が来た時」
テンリ「あー。あの時か。」
リブ「セカイちゃんとテンくんと初めて会った時……今でも覚えてるよ。本当にこんなイケメンいるんだって思ったもんね!」
メア「いやいやそれは褒め過ぎ(笑)」
リブ「でも初めて“死神”と“悪魔”を見たんだよ?もっと恐ろしい見た目かと思ってたから感動すらしたなぁ…」
メモリ「確かにそれは思った!人間と変わらんやんって。想像とは違った。でもそんな明るい幽霊もおらんやろうしリブもリブちゃう?」
リブ「人の事言えないか(笑)」
忘れもしない、あの日から始まったんだ……

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