
めっけもん|第ニ章 純情編(14)
夏も近づいたある日、いつものように出前に行った。
今里新地にあるA検の中でも有名な「喜楽」という店だ。
出前はいつも、店の裏口から持って上がるのが決まりだった。
いつもは店の人が出てくるのだが、この日は違った。
女学生が出てきて、出前を笑顔で受け取ってくれた。
「おおきに」
そう言って、彼女は私の目をじっと見つめていた。
私も彼女から目をそらすことができなかった。
(なんと可愛い人がいるもんだ……)
一目惚れだった。
店に帰ってからも、また会いたい、もう一度会えないものかと彼女のことばかり考え、仕事も手につかなかった。
翌日、また喜楽から出前の注文が入った。
「喜楽さん、Bランチ三つ入ったよ!」
「い、行きます! 行ってきます!」
頼まれる前から喜んで出前に出かけ、彼女に会えないかと裏口にまわり、いつもより大きな声を出した。
「毎度! 天翔グリルです!」
しばらくすると、奥から人が出てくる気配がした。
ドキドキしながら待っていると、彼女が出前を受け取りに来てくれた。
「おおきに」
意を決して、彼女に話しかけることにした。
「お嬢さん、なんていう名前ですか? 学生さんですか?」
「マリ子と申します。高校三年生です」
「ご兄弟はいてはるんですか?」
「はい。下に妹が二人……おにいさんは?」
「はい! わしゃ、イヤ私は五人兄弟です」
彼女は愛らしくクスクスと笑った。
それ以上、会話を続けることができなかった。
もっと彼女と話をしたかった。
何か聞きたいのだが、何を聞けばよいのか分からない。
それに、早く店に帰らなければという気持ちもあり、代金をもらうとすぐに喜楽を後にした。
しかし、また会えただけで嬉しくてたまらなかった。
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