めっけもん|第ニ章 純情編(21)
「新入りを三人も入れたところだ。すまないが、今回は諦めてくれないか」
期待が大きかっただけに、返事もできず、うなだれてしまった。
目の前が真っ暗になるとは、こういうことなのだろう。
「夕べのうちに竹田に伝えなかった私も悪かったが、困ったことになったな。悪いが、ちょっと待っててくれるか」
そう言いながら、川辺総料理長は奥へ消えていった。
しばらくすると、再び戻ってきた。
「中村くん、申し訳ないが、ここでは雇うことができない……」
「はい……」
「そこでだ。私の兄弟子が心斎橋の銀座屋に勤めている。先ほど電話で話をしたところ、あちらでよければ雇ってもいいそうだ」
「はぁ……えぇっ!」
これには驚いた。
銀座屋といえば、森山レストランと並ぶか、それ以上とも思えるほどの大きなレストランだった。
洋菓子の銀座屋としても有名で、オーバーオールを着た口元がチャームポイントの愛らしいキャラクターをテレビのコマーシャルなどでよく目にしていた。
「心斎橋店の総料理長で、井筒朝次郎という人を訪ねなさい。私の兄弟子だ。今すぐなら会えるそうだ」
川辺総料理長に紹介状を書いてもらうと、お礼もそこそこに、すぐさま銀座屋へ向かった。
銀座屋は、ここ森山レストランから歩いて五分ほどの心斎橋にあった。
夕方四時過ぎというのに、店の前も中も客でいっぱいだった。
三階の宴会場に案内されると、真っ白な背の高いコック帽をかぶった人が現れた。
一目見ただけで、その人が総料理長だと分かった。
紹介状を渡すと、さっと目を通し、今度は私の方をじろじろと見始めた。
「裸になれ」
いきなり裸になれと言われ、戸惑ったが、言われるまま服を脱ごうとした。
「下は脱がんでもええ! 上だけや。しかし、お前は今でもふんどしを締めてるのか」

「はい。さるまたは、どうも落ち着かんので」
「ふふっ、そうか」
井筒総料理長は品定めをするかのように、私の胸や背中をパシッ、パシッと叩き、最後に肩をポンと叩いた。
「良い体をしてるな。これなら続くだろう」
「採用なんですか?」
「そうだ。いつから来るんだ。今は働いてるのか」
「はい。いや、大丈夫です。店には話をつけていますから」
「よし。できるだけ早く来いよ、ふんどし」
銀座屋のレストランに採用された!
「わしが銀座屋で働ける?」
たまらなく嬉しく、大声で叫びたいほどだった。
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