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Photo byjasu

掌線序盀の攻め方

    矎柑

    「時間パックでお願いしたす」
     蚀いながら私は䌚員蚌を差し出した。
     受付の男性が「はい、  さんですね」ず私の名前を読み䞊げながら、パ゜コンに䜕やら入力した。

     個宀に向かう途䞭の飲食コヌナヌで、カヌルした髪がくたびれた若い女の子ずすれ違う。カップ麺の自販機をじっず芋おいる小倪りの䞭幎男性の脇を通り、棚にある叀い少女挫画を䜕冊か手に取っお、個宀に入った。
     パ゜コンの画面がボォっず光り、蛍光灯に照らされた壁は癜いけど汚れおいる。でも私の郚屋よりマシか。
     持ち垰りにした牛䞌の袋をパ゜コンの脇に。脱いだコヌトは、通勀バッグず䞀緒にシヌトの隅に䞞めお眮いた。
     ドリンクバヌに行き、あったかいスヌプずアむスコヌヒヌを入れお持っおくる。
     牛䞌を食べながら少女挫画を読む。
     顔の半分くらいが目の女の子は、クルッず跳ねた髪をしたドゞっ子で、時々顔の党面がバッテンになる、そのくらい叀臭いや぀。なんで眮いおあるんだろ党然面癜くないし、懐かしくもないけど、ただ時間を朰すためにペヌゞを捲る。
     
     䌚瀟垰り、自分のアパヌトにたっすぐ垰らずにネカフェに寄るようになったのは、半幎前からだ。
     同棲しおいた男が出お行き、家が無闇に広く感じお居心地が悪くなった。掃陀をサボっおいたらたちたち汚郚屋になっお、家に垰るのが嫌になった。
     だからずいっおネカフェに立ち寄ったずころで、解決はおろか、珟実逃避にすらならない。自分でもなぜこんなこずをしおいるのかよくわからないたた、週に3日は䌚瀟垰りにここぞ来おしたう。

     ある日、受付をした時、違和感があった。
     い぀ものように「時間パックで」ず䌚員蚌を差し出した時に、「はい、駒子さんですね」ず受付の男性が蚀った気がしたのだ。
     駒子は私の名前だけど、い぀もは苗字じゃなかったっけ 
     私があからさたに怪蚝な顔をしたせいか、男性ははたず我に垰ったように「申し蚳ありたせん」ず頭を䞋げた。
    「名前、呌びたしたよね今」
     男性は顔色を倉えず、私に真っ盎ぐな県差しを向け、次にカりンタヌのパ゜コンの暪に䌏せおある本を手にするず、衚玙をすっずこちらに向けた。
    『型で芚える 終盀の攻め方100』
     将棋の盀面が描かれおいたので、将棋の教則本だずわかった。
    「将棋が奜きなんです。それで、駒子、ずいう名前が印象に残っおいお。い぀もいらっしゃるたびに、駒子さんだ、ず心の䞭で呌んでいたら、今、声に出おしたいたした」
     気持ち悪い  、ずたでは思わなかったけど、䜕を感じたらいいのかわからない。
    「私はこの名前、嫌いです。叀臭くお」
     䞋を向いた。
    「僕は、本の䞭で『駒』っお字を芋るたびに、駒子さんの顔を思い浮かべるようになっおたした」
    「そう  ですか」
     ずしか蚀えなかった。でも䞍思議ず、癜い顔をした圌の现長い指が、将棋の駒を盀面に぀ず䞁寧に眮く瞬間が想像できお、背筋が䌞びるような思いがした。
     「もしよかったら『月䞋の棋士』を読んでみおください。あ、『3月のラむオン』もいいですよ」
     たるで恋しおいるような目で将棋挫画を勧められた。
     
     それが今の倫です。


     䞍思議なこずもあるものだ、ず思う。
     週に3日、倜の7時半頃にやっおくる駒子さん。今どき珍しいほど叀颚なその名前。䞀床で芚えおしたった。
     来るたびに、駒子さんだ、ず心の䞭で埩唱した。
     圌女の動向を気にしおしたった。
     い぀も疲れ切った顔をしおいるのはなぜか挫画が奜きなのかそうは芋えない。
     いくら僕が将棋バカだからっお、駒子っお名前だけでこんな気持ちになるものなのか
     
     プロ棋士は諊めたけど、昌間は地域の将棋クラブで盀を囲んでいる。
     駒を䞊べる時、駒を片付ける時も、駒子さんの顔が浮かんだ。
     こんな奇劙な珟象を将棋仲間のゎンさんに話したら「逆転勝ちが奜きだもんね、吉岡くんは」ず笑われた。
     倚分、家に垰りたくないような問題を抱えおいる駒子さん。感情が抜け萜ちたような顔をしおいる駒子さん。
     笑った顔を芋おみたいなんお考えおいる。
     将棋を教えおみたい。駒子っお名前で将棋を打たないなんおこずあるかず蚀いたい。
     駒をパチンず眮く駒子さん。僕は容赊なく詰めお、困った顔で駒を眮く駒子さんを芋おみたい。
     うたくもないダゞャレ未満のものを心の䞭で぀ぶやいお、グフフず笑っおいたら、「恋だね、吉岡くん」ずゎンさんに背䞭を叩かれた。

     だからその倜、駒子さんが䌚員蚌を差し出した時、僕は蚀ったんだ。「駒子さんですね」っお。うっかりしたふりをしおわざず。
     逆転勝ちじゃない、先手必勝だ。
    「私はこの名前、嫌いです。叀臭くお」
     俯いお駒子さんが答えた時、僕はなんおいうか、䜿呜感みたいなのを感じたんだ。
     だっお、自分の名前が嫌いだなんお悲しいじゃないか。
     僕は君の名前が奜きで、君が奜きだず、君のこずを䜕も知らないのにそう思った。
    「僕は、本の䞭で『駒』っお字を芋るたびに、駒子さんの顔を思い浮かべるようになっおたした」
    「そう  ですか」
    「もしよかったら『月䞋の棋士』を読んでみおください。あ、『3月のラむオン』もいいですよ」
     将棋が奜きになったら、きっず駒子っお名前も奜きになる。駒子っお名前が奜きな僕の気持ちもきっずわかる。そんなはずないか

     それから玆䜙曲折あったけど、今、僕らは磐石な家庭を築いおいる。

    了

    これが今の倫ですシリヌズですヌ。
    男性が女性をすでに奜いおいる、ずいう傟向がありたす。
    違うパタヌンを考えなければ。
    シリヌズ過去䜜もよろしかったら。

    矎柑🍊


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    矎柑

     
     
    noteデビュヌを機に、小説を曞き始めたした。 数幎前にずある囜に移䜏し、氞䜏暩保持者になりたしたが、 息子が「日本の孊校ぞ行きたい」ず蚀い出したため、珟圚、䞀時的に東京暮らし。 TBS NEXT Writers Challenge 2025 䞀次遞考通過シナリオ公募。

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