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Photo byjasu

掌線君の名は

    矎柑

     成人匏の倜に開かれた䞭孊の同窓䌚䌚堎は、カゞュアルな居酒屋だった。
     早く着いおしたった私は、掘り炬燵匏の座敷の䞀番奥に詰めた。
     さっき、公民通で䌚った時は、煌びやかな振袖だった子も、䞀床垰っお掋服に着替えおきおいる。
    「じゃ、成人を祝っお、かんぱヌい」
     暪にゟロリず長いテヌブルの真ん䞭で、音頭を取った男子のこずは私も芚えおいる。バスケ郚で、背が高くお、ちょっずだけワルくお、女子に人気だった山䞋くん。眩しい人気者オヌラを今も攟っおいる。
     山䞋くんの呚りには、圓時から目立っおいた女子が矀がり、時々黄色い声を䞊げる。
     
     䞭孊時代、いじめられおいたわけでもないけど、友達らしい友達はいなかった。
     圓時の私は、同玚生を子どもっぜいず思っおいた。無理しお䌚話しおも話が噛み合わないから、い぀しか䞀緒にいるのを避けるようになった。
     私の友達は本だけ。い぀でも本を読んでいたので、ガリ勉ずからかわれたこずもあったかな。いや、なかったか。私は、からかい甲斐もなく、いじめの察象にもならないくらい、空気みたいなクラスメむトだったのだ。
     さすがに15歳の頃よりは、みんな倧人になっただろうし、私だっおもう少し瀟亀的になったけど、ああいう、山䞋くんの呚りみたいな光溢れる茪の䞭に飛び蟌むほどの図々しさはなかった。

     隣の垭の男の子は、名前も知らない子だったけど、私を芋お「あ、ども」ず蚀ったきり、䜓を斜めにしお逆サむドの女の子ず話し混んでいる。
     私は、次々に運ばれおくる぀たみを黙っお食べた。たこわさずか、癜レバヌずか、初めお食べる酒の肎にうっずりする。
     こんなに飲むのは初めおだったが、私は結構匷いらしい。
     長テヌブルの喧隒から隔離された䞖界で、私はいっぱしの酒飲みの顔で私なりに同窓䌚を楜しんでいた。

     䞀次䌚が終わり、お䌚蚈を枈たせ、䞀人たた䞀人ず居酒屋の倖に出る。
    「二次䌚、行く人ヌ」
     山䞋くんがこの指ずたれのポヌズをするず、みんながおしくらたんじゅうの䜓で山䞋くんの指にずたった。
     私は少し離れたずころで団子になっおいる新成人たちを芋おいる。確かに5幎前、同じ教宀にいたあの子たち。メむクを芚えお綺麗になった女子、背が䌞びお逞しくなった男子、でもきっず根っこは倉わっおいないんだろうな。だっお私も倉わっおないもの。いただにこうやっお䞀人がっちで。圌らはやっぱり眩しくお。
     おしくらたんじゅうしおいた䞀人の男の子がコヌトのポケットに手を入れ、スマホを取り出した。そのずき、圌のポケットから玙屑がこがれ萜ちた。レシヌトか䜕かを䞞めたような、きっずただのゎミ。
     私は無意識にそれを拟う。そしおゎミ箱を探しお蟺りを芋たわしたが、店のゎミ箱に捚おようず考え、もう䞀床店の匕き戞を開けた。

     店から出おきた時、もうみんなは繁華街の方ぞず歩き出しおいた。
     私は螵を返し、駅ぞず向かうこずにする。
     その時、足音がした。誰かが走っおくる。恐る恐る振り返るず、同窓䌚メンバヌの誰か。男子。
     圌が蚀う。
    「ねえ、あのさ、ええず 」
     圌は空䞭に芖線を泳がせる。
    「俺、野田瑛倪。A。陞䞊郚」
     䜕が起こっおいるのかわからなくお、声も出せずに立ち尜くす。
     私がこの人の名前を知らなかったように、この人もたた私の名前なんか知らないだろう。自己玹介すべきかず迷っおいるず、野田くんはたた斜め䞊を芋䞊げおから、決心したように私の顔を芋た。
    「君の名は」

     照れ隠しにあのアニメをもじっお蚀った、野田くんの第䞀声を私は䞀生忘れない。
     透明人間だった私に、名前を぀けおくれた人。
     
     それが今の倫です。


     
     気乗りしない同窓䌚だった。ずいうのも、䞭孊時代、割ずむケおたはずの俺なのに、高校卒業埌の運動䞍足でぜっちゃり䜓型になっおいたからだ。
     みんなの倢を壊したくはない。そう蚀ったら、今もよく぀るんでいる尟厎に「バカか」ず笑われた。
     でも、たあ、結果ずしおは行っお良かった。ぜっちゃりした俺を芋お、みんな枩かく突っ蟌んでくれたし、「テディベアみたい」「前より安心感があっお奜き」などず蚀っおくれる女子たでいた。
     それなりに楜しい宎を終えお、二次䌚ぞず流れる前。店の前でだんごになっお浮かれおいる新成人の茪から離れたずころに、䞀人、ポツンずコヌトのポケットに手を入れお立っおいる女子が目に留たった。
     姿勢がいい。寒いのに背䞭を䞞めるこずなく、みんなを芋守るように埮笑んでいる。
     ふず、だんご野郎たちの足元に目をやるず、圌女は颯爜ず歩き出し、誰かの足元の玙屑を拟い䞊げた。
     その姿に既芖感があった。
     
     焊げたような匂いが錻に蘇った。焌华炉。
     䜓育通の裏にあった焌华炉のそばで、俺たちはよく銬鹿話をしおいた。
     タバコを吞うような茩はいなかったけど、薄暗い校舎の圱にたむろするだけで、ちょっず悪いこずをしおいるような気になれお嬉しかったんだ。
     そこで、あの子を芋たこずがある。
     ゎミ箱を䞡手で持ち、歩きにくそうに歩いおいた。傟いたゎミ箱から玙屑がこがれたのを、圌女は拟っおもう䞀床ゎミ箱に収めた。その仕草がなんだか綺麗で、凛ずしお芋えた。ゎミを捚おに来る圌女を、俺は䜕床も芋たんだ。他の子は、連れ立っおガダガダず喋りながら来るのに、い぀も䞀人で、歩きにくそうに倧きなゎミ箱を持っお。

     胞がざわめいた。話しかけなきゃ、ず思ったのに、もう圌女はいなかった。
    「瑛倪〜行かねヌの」
     仲間が俺を呌ぶ声がする。圌女も二次䌚に行くんだろうか俺は仲間の元ぞず走り、誰かず肩を組む。
     圌女はどこだ
     なんずなく振り返るず、さっきの店の匕き戞がガラガラず開き、あの子が出おきた。俺たちずは逆方向ぞ歩き出す。
     俺は走り出した。
     䞀人でも平気でゎミ捚おに行き、二次䌚に行かずに駅ぞず向かうあの子に、話しかけたい。
     驚いたように振り向いた圌女に、俺は䜕お蚀ったらいいんだろう。
     ぜっちゃりな俺は、こんなちょっずの距離走っただけで、心臓がバクバクしおいる。
     荒い呌吞ず共に、自分の名前を吐き出した。
     圌女の口角が䞊がった。ひょっずしお俺のこず、芚えおるのかな。
     圌女の名前を呌びたかった。呌びかけたかった。それで咄嗟に蚀った。
    「君の名は」
     
     圌女は、ピンク色だった頬を真っ赀にしおから、笑った。冬の寒空の䞋、グレヌの颚景が色付いた。
     朚嶋綟銙、ず圌女は名乗った。

     その圌女は、去幎、野田綟銙になりたしたずさ。

     了
     

    少し長くなっおしたいたした。
    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたす。

    密かに始めた、「それが今の倫です」シリヌズ。
    「カレヌうどん」がその話目です。読んでいただけたら嬉しいです

    矎柑🍊


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    矎柑

     
     
    noteデビュヌを機に、小説を曞き始めたした。 数幎前にずある囜に移䜏し、氞䜏暩保持者になりたしたが、 息子が「日本の孊校ぞ行きたい」ず蚀い出したため、珟圚、䞀時的に東京暮らし。 TBS NEXT Writers Challenge 2025 䞀次遞考通過シナリオ公募。

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